第69回”社会を明るくする運動”作文コンテスト  中日ドラゴンズ賞
”社会を明るくする運動” 愛知県推進委員会
 
笑顔の輪をひろげるためには
大磯小学校 6年 大木啓聖
「いくぞ〜!」
 ぼくの大きなかけ声で踊りが始まります。毎年八月の最終末に名古屋の栄を中心とした各会場で開さいされる「にっぽんど真ん中祭り」は、日本全国だけでなく、サイパン、台湾などの海外から約二百チーム、二万三千人が参加するとても大きなお祭りです。
 ぼくはお母さんとお兄ちゃんと一緒に、三歳の時に地元にあるよさこいのファミリーチームに入り、「ど祭り」にずっと出ています。幼稚園から六十代の人までが一緒に踊るチームで、色んな仕事をしている人や他の学校の子、発達障害の子もいます。
 三車線もある広い栄の道路を通行止めにして、両側で見ているたくさんのお客さんの前で踊るので、初めて出た時はすごくきんちょうして、見ているお客さんのことが怖いなあと思いました。でもがんばって踊っていたら
「あんなに小さい子が踊っているねぇ、かわいいねぇ。」
という声が聞こえてきたり、拍手をいっぱいもらったりしました。知らない人がぼくを見てニコニコしながら拍手をしてくれることがとてもうれしくて、お客さんが怖くなくなり、よさこいも大好きになりました。
 よさこいは「ど祭り」の他にも一年中、地域のお祭りや老人ホームなど、色々な所に行って踊ります。秋にはぼくの小学校の学区でやっている「敬老会」で、トワイライトの友達と一緒に舞台の上で踊ります。ある日、今まで全然知らなかった他の町内のおじいちゃんと学校の帰り道で会った時に、
「あっ、この前舞台で踊っとった子だね。上手だったぞ。」
と声をかけてくれたことがありました。最初は少しびっくりしたけど、踊ったこともぼくのことを覚えてくれたこともとてもうれしかったです。そしてトワイライトで一緒に踊った友達も同じ体験をしたようで、その子はそのあと、お母さんやお姉ちゃんと一緒にぼくのよさこいチームに入ってきました。
 ぼくのチームには小学校の時に不登校だったお姉さんがいるとお母さんから聞いたことがあります。でもそのお姉さんはとっても踊りが上手で、ぼくにもいっぱい教えてくれます。
「学校に行きたくなかった時も、踊りの練習には毎回来ていたんだよ。ここには居場所があり、気の合う友達がいたんだね。」
お母さんは言います。ぼくも今、チームの中で学校も学年も違うけど話の合う友達がいるし、他のチームにも同年代の子や大学生や学校の先生をしているよさこい仲間がたくさんいて、一緒にバーベキューをしたりします。
「学校の友達も大好きだけど、よさこいで知り合った仲間も大切だなあ」と思います。
 お母さんや学校の先生にほめられることはうれしいです。でも知らない人にほくががんばっているのを認めてもらって、ほめてもらうのは、なんだか少し特別な感じがします。
 老人ホームに行って踊る時は、初めて会うおじいちゃんやおばあちゃんと手をつないで踊るのですが、最初はちょっと怖い顔で見ていた人も、ぼくが近くに行って手をつなぐとどんどん笑顔になっていって、手をギューっと強くにぎってくれたり、
 「ありがとね、ありがとね。」
と涙を流しながら何度も言ってくれたりする人もいます。そんな時は本当によさこいをやっていて良かったと思うし、必要とされている気持ちでいっぱいになります。
 また成人式に招待されて踊った時は、金ぱつの怖そうなお兄さんが一番前でにらんでいるように見えて、近くに行くのは怖くて絶対に嫌だと思っていました。でもぼくのお母さんと一緒に近くに行って、
「一緒に踊りませんか?」
と誘うと、ちょっと恥ずかしそうにしながらも踊ってってくれました。
「上手だね。」
とお母さんがそのお兄さんに言うと、ニコッと笑って
「ありがとうございます。」
と言ってくれました。それを見て、怖そうなお兄さんでも、ほめられたらやっぱりうれしいのはぼくと同じなんだなと思いました。
 ぼくはテレビのニュースでよく見る犯罪を起こす人は、寂しかったりあまりほめられたことがなくて、自分に自信のなかったりする人なのかなあと思います。でも踊るだけでもほめられたり、拍手をもらえるなら、みんながよさこいを始めたら、世の中が笑顔でいっぱいになって、犯罪を起こす気持ちがなくなると思います。
 「よさこいは踊ってる人も、見ている人もみんな笑顔になるので、みんなで一緒に踊って世界中に笑顔の輪が広がればいいなぁ」と思います。