健康教育における地域連携のあり方についての一考察=お母さん先生と創る「いのちの学習

1 主題設定の理由
 子どもたちの生きる力をどのように育てていくのかが模索されている中,「開かれた学校づくり」「地域との連携」という視点が重要視されている。また,「総合的な学習」では,「健康・福祉」の領域が大きな柱のひとつとして掲げられており,学校教育における健康教育の需要性が再認識されている。かつては子どもたちの社会的な能力は,家族や友達,地域との交流の中で自然にはぐくまれてきた。しかし,社会状況が変化した今日では,子どもたちがそうした能力を養うために必要な生活体験の機会は少なくなっていると考えられる。その一方で、現代の社会状況が子どもたちの心やからだに及ぼす影響はより複雑になってきている。
 
本校の子どもたちは,落ち着いた家庭の中でのびのびと育ち,やさしい気持ちと素直な心をもっている。反面,主体性に欠け,生活経験の乏しさが感じられる。それでも,教師の支援を素直に受け止め,自分の力でがんばってみようとする姿がみられる。子どもたちの,自ら育とうとする力を伸ばすためには,家庭や地域と連携し,より具体的な健康教育を進めていくことが必要である。本校の健康教育の大きなねらいは,心とからだの主人公づくり(子どもたちが,「自分の心とからだの責任者」としての心構えを持ち,そのための具体的なスキルを身につけること)である。この研究では,母親グループ「すこやか会議」との連携による子どもたちへの働きかけに焦点を当て,健康教育における家庭や地域との連携のあり方を探ってみた。
2 研究のねらい
 健康教育に保護者としての立場から,系統的にかかわる「すこやか会議」を組織し,健康指導の授業の企画や実践そのものに参加することで,子どもたちの実生活に即した健康教育を推進する。こうした活動を通して家庭と学校の連携を強め,本校のテーマである「心とからだの主人公づくり」を具現化する。
3 研究の仮説
  •  保護者の視点での授業の企画・授業参加により,子どもたちの生活に即した具体的な健康教育が実践できないか。
  •  学校が取り組む健康課題に対して,保護者とともに学ぶ場を持つことにより,学校と家庭が同一歩調で健康教育に取り組むことができないか。
以上の視点から,以下の仮説を立てた。
仮説
すこやか会議」を中心とした活動の積み重ねにより,子ども自身が「心とからだの主人公」としての意識を高めることができる。同時に,健康課題に対する家庭の意識の変革を図ることができる。
4 研究の計画
 すこやか会議が発足した平成9年度は,本校における保健活動や健康教育の基本的な考えや取り組みの理解に活動の重点をおいた。中でも,いのちの学習においては,将来的にすこやか会議(お母さん先生)とのTTの授業の実現を見こんでいたこともあって,活動の中心をここにおき,活動を進めることにした。
 1年目は,「いのちの学習」の授業を,すこやか会議委員が参観し,授業後に意見交換会を行う。2年目は,授業参観・意見交換に加えて,委員がお母さん先生として授業への参加を試みた。3年目からは,授業の企画の段階から実践まで,より主体的な関わりをもつ。その一方で,健康問題を共有化する場としての学校保健委員会をさまざまな形式で実施し,家庭との連携を図る。


 研究の実際とその考察
(1) お母さん先生とのTT授業づくり
 一昨年度,お母さん先生の授業参加は教師側でお膳立てした「お手伝い」の形であった。しかし,「すこやか会議」の話し合いの中で,「企画の段階から授業づくりに参加したい。資料や教材づくりにも主体的に参加したい。」との意見がお母さん先生からあがった。こうした意欲に支えられ,授業の企画の段階から,どんな内容を取り上げるか,授業をどう流すのか,効果的なお母さん先生とのTTの方法を検討した。こうした検討会の中で,お母さん先生から「授業の中に寸劇を入れたら,子どもたちに教えたい内容を具体的に示す事ができるのではないか。」「先生のように物事の説明はできないけれど,寸劇と言う形で子どもたちに具体的に示すことはできる。」という意見があがった。昨年度より,この画期的なアイディアを生かした,新しい形の授業づくりに取り組んでいる。授業
(2)授業実践その1
 ここ数年,学区内で変質者の出没が多発しており,子どもたちの中には,声をかけられたり,あるいは,いたずら電話等の被害にあったりした者もある。そこで,とっさの対応ができるよう基本的な知識を教えていくことの必要性を,すこやか会議で話し合った。子どもたちが,自分の体と頭を使って参加できる授業方法として「寸劇」を取り入れた。何度か会議を持ち,授業についての打ち合わせや台本づくりを行った。寸劇部分の台本と劇に使用する大道具は,お母さん先生が作成し、授業当日までに数回のリハーサルを行った。
 
2年生の授業を9月に実施し,授業の反省会で出された問題点や改善点をもとに3年生の授業内容を検討した。

2年生では,特に下校中や下校後の戸外での誘拐などから身を守る方法を,寸劇を取り入れて指導した。知らない人と話すときの距離のとり方・危険を感じた時の声の出し方・犯人の特徴を見るポイントなどを寸劇で示し,子どもたちの理解を助けた。子どもたちは,実際に助けを求めるときの声の大きさを騒音計で測定したり,ロールプレイの中で声をかけられた時,どう対応するかの体験をした。

 子どもたちは,とても意欲的に取り組むことができた。「犯人は,どんな服着ていましたか?」「どんな車に乗っていた?」などのお母さん先生の質問に,子どもたちは,「青い服だったよ。」「ひげがはえていた。」「帽子をかぶっていたよ。」「黄色い車でナンバーには,数字の7がたくさんついていた。」など,活発に意見を出し合った。また,授業後の感想には,「いつもお母さんが,お話していることを劇で見て,よくわかりました。」「家に帰ったら,弟に教えてあげようと思います。」などの内容のものが見られた。
 こうした形の授業は,この実践がはじめての取り組みであり,反省する点も多くあった。しかし,地域の警察署からもこの実践について問い合わせもあり,地域との連携を深めることにも一役買ったように思う。
 3年生では,子どもだけで留守番して いる時の「電話での応対」について取り上げた。授業では,実際の電話応対の体験を通して電話に潜在する危険性と対応の仕方について指導した。
寸劇1 戸外での危険や危険回避の方法については,学級ですでに指導されていたので復習を兼ねて寸劇で指導した。
実習1  ひとりで留守番している時かかってきた電話に出てみよう。
 実際の事件を例にあげ,危険は戸外だけではないことを押さえ,一人で留守番している時に,電話がかかってきた。という状況で,電話の応対を体験させた。○ 事前の予備知識を与えず,子どもた ちの判断で,対応させる。
○ 電話の相手の姿は見えないように,ついたてで隠す。

場面@ 家の様子や個人の情報を聞かれる。
場面A アンケート調査と偽って友達の電話番号を聞かれる。
場面B 宅配便を装った人から「配達物を取りに来てほしい」と依頼される。
○ この時点では,子どもの対応についてコメントをせず,子どもたちの判断に任せる。
 子どもたちは,電話をかけてきた相手の巧みな話術にのせられ,電話を切ったり断ったりするタイミングがつかめず,「一人で留守番をしている。」と答えてしまったり,友人の電話番号を教えてしまったりしていた。
実習2 注意事項に気を付けながら,電話に出てみよう。
 2回目の体験場面では,これまでの対応についての問題点を子どもたちと考え,ポイントとして次の点を示し,再度電話の応対を実習した。
○ 子どもだけで留守番していることを教えない。
○ 相手がはっきりしない時は,個人的なことや友達の電話番号などは教えない。
○ 電話での呼び出しには応じない。
○ 相手に失礼のない態度で,「後でこちらから電話します。名前と電話番号を教えてください。」と応対する。
○ 電話のあったことは必ず,家の人に報告をする。
 ここでは,タイミングをつかんで「後でこちらから電話します。名前と電話番号を教えて下さい。」のコメントを告げることを目標とした。子どもたちは,友だちが応対しているのを聞いている時は「そんなこと言っちゃだめだよ。」「早く!上手に切らなきゃ。」と言っているのだが,実際に自分が体験すると,相手のペースにのせられることが多かった。子どもたちからの感想とすこやか会議における事後の話し合いは,以下のとおりである。

  3年生女子の感想
 私は電話の勉強をしました。「名前と電話番号を聞く」というのを,いつ言えばいいのかわかりませんでした。でも,「名前を聞かれた時に言えばいいね。」と教えてもらえたので,家ではそうしようと思います。
 3年生男子の感想
 今日,保健の授業をしました。M君がすごく上手でした。みんなのを見ていると簡単そうだったが,ほんとにやると難しいです。

 事後の話し合い
 授業後の「すこやか会議」では,「子どもたちの反応をじかに感じることができてよかった。」「母親としての立場からの意見が十分生かされ,企画,準備・実践というすべての段階に関わることができてよかった。」「地域でも話題にしたい。」「今後も親としてかかわる授業の持ち方を検討したい。」などの意見が出された。子どもたちは,お母さん先生の話や寸劇,説明などをたいへん興味をもって聞いていた。体験場面やお母さん先生の言葉は,授業の内容を身近な問題として感じ取るよい機会になった。
(3)
授業実践その2
 この授業は,岐阜大学・近藤先生の原案を参考にした。この授業では,子どもたちに,自分自身の存在のすばらしさを感じ取ってほしいという願いを込めた。(セルフエスティームの維持スキルにかかわる内容)
  この授業を行うにあたって,すこやか会議では「原本のシナリオを本校の子どもたちの実態に合わせてどう変えていけばよいのか。」「教え込むのではなく,子どもたちが主体的に活動できるための働きかけをどのようにしていくのか。」を中心に検討した。話し合いでは,授業における留意点を次のようにまとめた。
@ 抽象的な事柄についての思考が苦手な学年であるので,寸劇を取り入れ課題を具体化する。
A 子どもたちが自分の意見を持ち,発表する場面づくりをする。
 当日の授業では,お母さん先生は子どもに扮し,保健の授業を受けているという設定とした。教師役は養護教諭。「寸劇」と「実際の子どもたち(以下,「フロアの子ども」と表記)を対象にした活動」を並行して進めた。担任は,フロアの子どもたちへの支援を行った。
 以下に授業の概要をまとめた。
 課題1   へその尾はどちらから伸びたか?
   意見A:母親から   意見B:胎児から
 劇の中の子どもたちが課題について,なぜそう思うのかの意見を出し合う場面を見せながら,フロアの子どもたちにも,自分の意見を持たせた。 その後,AとBそれぞれの意見ごとに分かれ,各グループにお母さん先生が入り,フロアの子どもたちの意見を聞き出した。

 課題2  みなさんは,いつからお母さんの卵巣に存在していたのだろう?


 この課題についても,課題1と同様に,劇の中でのやり取りを参考に,自分の意見に近いグループに分かれた。こうした方法により,普段は意思表示することををしり込みする子どもたちも,自分の意見を,グループへの移動という形で表現できた。
また,教師とは立場が違うお母さん先生との意見交換では,子どもたちがより活発に活動する姿が見られた。
 授業の最後に,お母さん先生の一人が,排卵障害や不妊・流産・受精のタイミングの奇跡についてのお話を通して,この世に生を受けることのすばらしさを,こう語った。「まさに奇跡と奇跡の出会いによってあなたが生まれました。 友だちも同じ。奇跡と奇跡が隣に座っているのです。」フロアの子どもたちは,寸劇と自分たちの活動がひとつになった感覚で,前向きに授業に取り組むことができた。お母さん先生のことばは,教師とは違ったものとして子どもたちの心に染み入ったようだ。


 子どもたちからは,「胎児の時,あれほどがんばってきた命。
みんな,がんばって生まれてきたのだ。強く優しく生きたい。」などの感想が出された。
 この授業(平成11年度第2回学校保健委員会公開授業として行った)を参観した職員からは,「お母さん先生が,たいへん上手に子どもたちの意見を引き出していた。」「お母さん先生のお話に涙が出た。 」などの反応であった。また,保護者からも,「自分や友だちの存在を大切にする心を育てるという意味ですばらしい授業だと思った。子どもたちは,家で話をするのとは別の感じ方をしたのではないかと思う。」などの意見がだされた。
 
(4) 授業実践その3 
 1学期に実施したアンケートでは,日常生活の中での子供たちの人間関係が浮き彫りになった。この中で,「自分の思いを上手に相手に伝えられない子どもの姿」「意思の伝達がきちんとできる子に育てたいという親の願い」が浮き彫りになった。そこで,ライフスキルのひとつである「抵抗スキル」(不健康なまたは危険な行動を助長する誘惑に対して批判的に思考する力・健康や大切にしていることを守るために上手に断る力)を育てる一つの手立てとして,この授業に取り組んだ。 
 これに先立って実施した学校保健委員会では,「セルフディフェンストレーニング」の講師を招き,保護者と教師を対象に,学習会を実施した。(自分のからだと心を自分で守るための講義と実技)この会は,大人がそれぞれの立場で子供たちに伝えていくための有意義な学習会となった。会終了後のアンケートでは,回答した教師・保護者全員が,「この内容を授業で取り上げるべきである。」と答えた。
 すこやか会議では,このアンケート結果をもとに,授業の企画を行った。 この授業では学校保健委員会で学んだ内容を取り入れて,できるだけ子どもたちの生活に近い題材を,ロールプレイにより,自分の問題として考えていけるよう工夫した。授業の中心を「自分が持っている3つの権利(安心・自信・自由)を取られそうになった時には,「NO!」と言ってもよいのだ,ということを伝え,ロールプレイによる体験を通して,子どもたちの意識を高めたいと考えた。
授業の内容   
 場面@ 3つの権利の説明
 場面A お母さん先生による寸劇
 寸劇では,身近な生活の中で,3つの権利が取られそうな場面を寸劇で示し,子どもたちに,劇の中の子ども達の行動や気持ちについて意見を聞いた。子どもたちからは,「仲間に入れてもらえなくて,かわいそうだった。」「相手が怖くて,断れなかったのだと思う。」「仲間はずれがいやだから言うことをきいたと思う。」「断ると自分がやられると思った。」などの感想や意見が出された。
 場面B 断る時のポイントの説明
  ここでは,断ることの大切さと断る時のポイントについて説明した。
○ 堂々とした態度で断る。
○ 相手の顔や目を見て断る。
○ 何度でもことわる。
○ 危険を感じたら,大声をあげてにげてもいい。
○ 1人で悩まずに,友達に助けを求めたり,大人に相談する。
 場面C ロールプレイをする。

 前時に学習した内容をもとに,実際の場面の中で,ロールプレイをした。無理な要求をする役は,お母さん先生が行った。その場その場で,お母さん先生が内容を変えて,断る役の子どもたちに対応した。このロールプレイの中で,子どもたちは,「断る」という体験をした。6,7組行った辺りからややゲーム化してきたため,二人一組でのロールプレイに切り替えた。
 場面D 学習のまとめをする。

 何でも断るのがよいのではなく,自分の3つの権利が奪われそうになった時には堂々と断るのだ,ということを確認した。
 この授業の後,それぞれの学級で,実態に応じての話し合いが行われた

(5) 健康課題共有化のための実践 
 本校では,学校保健委員会を,「健康に関わる課題を家庭と学校が共有化する場」と考え,さまざまな内容を取り入れて開催してきた。平成9年度からの学校保健員会の内容を表Aにまとめた。
 学校保健員会の参加者は,全職員・各校医・薬剤師・PTA役員およびすこやか会議委員・保護者の参加希望者と,従来の枠を拡大したものになっている。テーマの選択にあたっては,「保護者が今求めているものは何か」をアンケートやすこやか会議での意見から検討した。また,学級担任や保健主事との意見交換・保健室での子どもの様子や子どもたちの実態から,家庭と共通理解しておきたいことなどを念頭において計画した。
学校保健委員会への関心は年々高まり参加希望者も多くなってきた。本年度取り上げた「セルフディフェンストレーニング」は,大変好評であった。子どもたちや保護者から寄せられた人間関係などのさまざまな問題点に対し,具体的な対処の方法を学ぶ機会となった。

6 研究のまとめと今後の課題
  各授業におけるお母さん先生とのTT授業の考察は,各実践の項で述べたので,ここでは,それらの総括的なまとめをしてみたい。 授業の企画については,学級での実態や保護者と子どもたちへのアンケートをもとに,すこやか会議で検討した。話し合いでは,「授業の内容を子どもたちに自分の問題としてとらえさせたい。」「知識としてだけではなく,実際の場面で役に立つような授業のあり方を考えていこう。」という思いをもとに,企画や授業内容について,意見を出し合った。授業の内容は,寸劇を取り入れることによってより具体的で,理解しやすいものとなった。
 また,ロールプレイやお母さん先生との意見交換では,実際に「やってみる」ことにより理解を深め,進んで挙手して発言できない子どもたちも,自分の意思表示をすることができ,より主体的に授業に参加することができた。この結果,子どもたちは授業の内容を身近な問題としてとらえることができ,「自分だったら,どうしようかな。」というところまで考えながら,授業に取り組むことができた。子どもたちは,授業で具体的な対応の方法によって,自分の心とからだは自分自身で守ることができることを理解することができた。
 寸劇を取り入れた授業については,これまでの
TTの方法に比べ,子どもたちの体験場面を授業に効率的に組み入れることができたといえる。こうした授業のありかたはこれからの総合的学習とのかかわりも視野に入れると,有効な点が多いと考える。
  次に連携という視点から検証してみた。授業後は,保健だよりで全家庭にその内容を知らせた。また学年や学級通信でも内容を取り上げ,家庭への啓発を行った。学級担任からの適切なフォローもあり,授業が単発的なものとして終ることなく,生活の中につながりを持たせることができた。
  11年度の末に,「図書館の者です。」と名乗る人物から,学区内の多くの家庭に電話があり,子どもたちの個人データを収集するという事件が起こった。この際,実際に授業を受けた当時3年生の学年の子どもたちは,個人情報をもらすことなく,電話に対応している。他学年では,友人宅の電話番号を教えてしまった子もあった。そこで,3年生の授業で行ったポイントを,生徒指導部と協力し,もう一度子ども向けに資料としてまとめ配布し,各学級で家庭でも話し合いをするよう呼びかけてもらった。ひとつの授業実践をもとにこうした形でスムーズに連携を作っていくということが,校内の諸部会や学級担任の前向きな協力によってた事例である。   学校保健委員会は,本校において「健康課題の共有化の場」としての形が定着しつつある。保護者の意見をさまざまな形式で吸い上げ意見交換できる場として,成果をあげることができた。
  最後に問題点について触れる。すこやか会議の活動が活発になり,話し合う内容やリハーサルの回数も多くなってきた。話し合いは,午前中に行っているがその間の保健室での子どもたちへの対応もあり,やりくりに苦慮しなければならないことがあった。また,学級担任とお母さん先生との打ち合わせの時間の調整が難しいことなどが課題となっている。
おわりに
 現時点で,総括的に一つ一つの実践を振り返ってみると,学級の実態や今,家庭が求めているものとがうまく絡み合ってきたと思う。こうした背景には,本校が,長年に渡り健康教育を学校経営の大きな柱として大切にしてきたことや、学区の方々が,「地域の学校」として,山名小学校を見守ってきてくださったことにあると思う。そして,さまざまな意見交換や実践の中で感じることは,「教師以外の視点が入ることの価値の大きさ」である。教師としての長年の経験には,時には「かたくなな思い込み」をもたらす恐れがあり,立場の違う視点が入ることで新しいものが見えてくるのである。すこやか会議での話し合いや「いのちの学習」の授業実践は,子どもたちのライフスキルを高めるための,大きな力となることを信じている。