メディア情報と子どもたちの健康観・生命観・性意識について

H156.7 名古屋市民大学 メディアリテラシー講座

一般的な健康観

・健康を扱った番組は多く,放送翌日にはスーパーに,テレビで紹介された食品やグッズが売れている。流行を意識するような感じで,健康に関する安易な感覚が商売になっていることに危機感を感じる。そもそも,健康とは,日々の生活の積み重ねがあって作られていくものなのに,「これさえあれば」的な短絡的な感覚を視聴者に持たせてしまう。

 本来は,家庭の中で子どもたちにもしつけのひとつとして生活習慣の形成という親の大切な義務があったのだが,それを軽く考えて,手軽に健康を手に入れようとする傾向がある。

・アイドルタレントやトレンディ俳優など,青少年の心をつかんでいる人たちがタバコを吸っている場面がある。これによって,「タバコがかっこいい」と感じて喫煙をはじめる若者も多いといわれる。

 

美容・ファッションと健康の混同,大人と子どものボーダレス化

・健康とファッションが混同されているように感じる。ダイエットやサプリメントなど,食生活を含めて心配になる。

 

・ダイエットに関する番組が多く取り上げられ,ダイエット=やせることという意識を子どもたちが持っていることは危険。ダイエットということばが小学生でも一種の流行語になっている。健康であるかどうかという視点よりどれだけ足が細いか,どれだけ体重の数値が少ないかということで考えてしまう。

 

・テレビのタレントやモデルの体型は,医学的には「やせ」の部類。しかし,子どもたちには,「タレントのようになりたい」「タレントやモデルのようでなければ,きれいだといってもらえない。」など,自己を否定的にとらえてしまう。テレビの中で,太った人が面白おかしく扱われたり否定したりする内容が,ますます子どもたちにダイエット・やせ志向を蔓延させている。

 

・大人と子どもがボーダレスになってきている。それが,いいことかのような表現がTVの中で多く見受けられる。茶髪や子どもの化粧など,健康面から考えて,決してプラスではいこともあおるように番組で紹介している。子どもの健康のことを考えている大人なら,子どもの頭を茶髪にすることはしない。しかし,そういうことをさせることが,物分りのよい親だと勘違いするようなニュアンスが含まれたものがテレビの中で目立つ。

・テレビの影響ばかりではないと思うが,子どもたちがテレビに出てくる同じ世代の人たちが,化粧をし,ピアスをし,髪の毛を染めているのを見て同じような行動をまねる。このような傾向がどんどん低年齢化しているように思う。子ども時代がみじかくなってしまったように思う。

 

・プチ整形,援助交際,プチ家出など悪いことをだめだといわずにとっつきやすいことばにかえて裏道のようなものを教えている。子どもたちにとっては,イメージとして「悪いことではない」だけでなく「流行」とさえとらえている。

 

・「生命は,自他共に平等で昔からずっと続いていて,次へ渡すという責任がある。」という大切な意識が薄れてきている。「今自分が楽しければいい」という考えになっている。視聴率だけを考えた娯楽番組はそれを助長している。

 

・日常会話の中に「死ね」とか「殺す」ということばを安易に使っている。その一方で,ドラマやアニメの中で,生き返ったり,簡単に死なない場面をみているため,ふざけから,いじめ・暴力の境がわからない。そういうケガが保健室にも持ち込まれる。事情を聞くと「そんな風になるなんて思わなかった」ということばが聞かれる。(というか,非常に多い)こうした感覚は,特定の番組によって作られるというよりは,無意識に長期にわたって植えつけられる。実体験のない事柄も子どもたちは,テレビを見ることで「体験した」と勘違いしてしまいがち。

 

生命観

・小学校高学年になっても「ドラマ」とドキュメントの違いがわからない。自宅で身内の死に出会ったことがない子どもたちにとって,生命の存在というものや「死」というものを理解する機会が少ない。そんな子どもたちが「死」を仮想体験するのがテレビなどのメディアなのかもしれない。そう考えるとテレビでの「死」の扱いにはやはり注意が必要。

 

・バラエティ番組で,人をばかにしたり,暴力や危険な行動が罰ゲームと称して番組の中で行われる。子どもたちには,それが「危険なこと」ではなく「楽しいこと」と受け取られいる。番組の中で,みんなが盛り上がっていたから同じようにこの場も盛り上がるだろうという感覚があるのではないか?こうした番組だけの原因とはいえないかもしれないが,無意識のうちに作用しているということはあると思う。生命に対する尊厳とか他人の存在を大切にするという気持ちが鈍化していくように感じている。

 

性意識

・ドラマでもドキュメンタリーでも取材でも,中学生はここまでOK,高校生はここまではあたりまえ,など子どもたちの興味をそそるような扱い方をして特殊な例を誰もがやっているような錯覚を起こすようで怖い。「今は,これくらい普通だよ」というが,普通というベルが下がっている。

 

・恋愛に関するドラマやバラエティは,若年層の恋愛観にとても大きな影響を与える。テレビでの恋愛の取り上げ方が,子どもたちのこれからの恋愛の基準になってしまったり行き過ぎた表現により自分たちもそれがゆるされると思い込んでしまう。

 

・性について隠す必要はないが,人前で大声で言うことでもない。というエチケットの部分は対大切にしてほしい。

 

・夜10時以降の番組で語られる若い人のオープンな性の話などをきいていると,安易な性交渉やそのことへの危機感のなさに愕然とする。中学生など性について興味が出てくる世代の子どもたちにとっては,正しい知識は持っていても,実際には,メディアからの興味半分な情報のほうが,興味があり,間違った性意識を持ってしまう危険性がある。

 

・メディアからの情報によって,性行為に対する安易な考え方が,子どもたちに蔓延しつつある。ローティーン雑誌や番組・アダルトビデオでは,性行為にともなう望まない妊娠,性病はほとんど出てこない。子どもは,性行為をロマンチック・快楽的なものという一面的な捉えかたをしている。みんながしていること,早く体験しないとみんなからおくれてしまうという思い込んでしまう子が多い。責任が伴うということについて,メディアが青少年にきちんと示していない。

 

・中学生や高校生が,大人の男性の「性のターゲット」と化している。見知らぬおじさんから声をかけられて「高校生の女の子のはみんなお金ほしくてセックスしているんだろう。おじさんもお金あげるから一緒においで」と声をかけられたりしている。

 

・援助交際や売春など,多くの人がやっていると思わせるような表現が一部の雑誌等で表現されている。

 

・赤ちゃんの置き去りやネグレクト,子どもへの虐待など,母親が批判されることが多い。なぜ,うませた男性への批判はないのか。女性だけでは子どもは産めない。「産ませる性」としての男性の責任があまり語られない。

 

価値観

・バラエティや視聴者参加番組などで取り上げられる極端な若者像に,子どもたちが同化しようとする危険性。本当に地道にがんばる子どもたちの姿より,一種独特のイメージを持った若者が,クローズアップされている。番組の中で決してそれを肯定した取り上げ方をしているわけではないが,それでも子どもたちは,「今の流行は,あのような姿なのだ」と,ひとつのパターンとしてインプットしている。

 

・簡単に人をたたいたり、蹴ったりする。特に、その力の限度を知らない。それから、ある一定のタレントさんなどに対して、集中砲火を浴びせるようにからかってみたり、いたずらしたりしているシーンを見ていて、「おかしい」と思う感覚が、日々放送されると、鈍っているような気がする。

・バラエティ番組で,危険な罰ゲームや暴力や下品な下ネタで笑いを取るような場面を繰り返し見ることで,「痛み」とか「危険」に対する感覚が麻痺していく。保健室にもちこまれるケガの中にも,事情を聞くと「そんな風になるなんて思わなかった」ということばが聞かれる。(というか,非常に多い)。どこまでやるとどれだけ痛いのかという実体験はないのに,テレビの中のバラエティなどで繰り返し見ていると,仮想体験をしたかのような感覚でやってしまう。相手がどれだけ痛いのかとか,どうなるのかを考えることができない。なぜなら,バラエティでは,それが楽しいこととして表現されているから。