■ 着物を揃える 初めて買う着物 どこで買うか 紋はどうする 寸法のとりかた 手入れ 季節をそろえる 足袋 小物 * 足袋 足袋にも夏物、冬物があります。お茶人さんは白足袋をはくのが決まりです。色 ものをはいているのは見たことがありません。女も男も足袋は白です。何年か前か ら伸びる足袋というのが出回っていますが、これは頂けません。どうにもしまりが ない。昔からの福助の足袋がいいようです。値段は2800円ぐらいですかね、今 は。洗濯は自分でお風呂にはいった時に自分でやりましょう。その日、1日はいた らすぐに洗ってパンパンとたたいて、干します。訳ないことですよ、クリ−ニング に出してもいいですが、自分でやっても大差ないように思います。 少し張り込むのなら、デパ−トに大江戸物産展とかが来たら行って見てください。 足袋をその場で作っているのがみえます。その場で足の寸法をとってもらい、注文 で作るわけです。1−2ヵ月はかかるかと思いますが。そんなにべらぼうに高いわ けでありません。確か足型を木で最初作らないといけないので、3足ぐらい頼んで、 2万円弱ぐらいでなかったかと思います。ともかく足袋を注文で作ってくれるとこ ろは少ないです。しかし左右の足のサイズは微妙に異なっています。年をとると足 の指なんかが少し変形してくる場合があります。そうすると既成品では合わなくな ります。そんな時オ−ダメイドはありがたいです。小生の母はそれで作ってちょう ほうしています。 * 小物 男物の小物というのはあまりないですね。女性は着物にあうバッグというのはあ りますが。男にはバッグもないですね。かといって、ビジネス用のかばんというわ けにもまいりませんし。男は着物を着たときは、なるべく何も持たない、これが粋 というものです。どうしてもという場合は風呂敷にします。風呂敷もいろいろあり ますよ。歌舞伎役者の絵のものなんかいいかも知れませんね。ちょっとこれではは で過ぎますか。そういえば、小生は家に前からある紫のものを必要な時は使ってま すね。ごくたまにですが。 ともかく別にかばんを持たなくても、着物は袂が深いので、タバコや財布ぐらい 十分入ります。困るのは少しあらたまった茶会にいくとき、替えの足袋をもってい くことです。裸のまま足袋を懐に入れるわけにもいかず。多分そのような茶会に行 く場合は、他に何人かご婦人方も同伴するでしょう。素直にお預けしましょう。も し一人でいくような場合は、足袋には足袋用の袋があります。小生はもっていませ んが。参考に。 * 手入れと洗い張り 着物は洋服のように、毎回クリ−ニングしたりするものではありません。まして や家で洗濯機で洗うものでもありません。小生の元に習いにきた50前後の女性を 一度外のお茶会に連れていったところ、すぐにクリ−ニングに出すというではあり ませんか。母が着物はそんな風に扱うものではないと話しをしたのですが、結局出 してしまったようです。いや−驚きました。現代ではそんなことまで一から教えな いとけいないのか。それよりも、人の意見に耳をかさない現代人の気質をみたよう に思いました。 さてではどうするか。着物は昔から洗い張りということをします。小生が20才 の時、先生に連れられて初めて作った着物があります。袷の紬の紺でした。それを 最近ようやっと洗い張りに出しました。裏地は新しく替えることにしました。そし たら、なんと作った時と同じような新品になりました。少しはテカテカしたりして、 何となく古くなったなという感じになるかなと思っていましたが。いや−、これに は驚きました。 洗い張りは、着物をほどいて、水洗いして、板に張り付けて乾かし、また裁縫す るという手間のかかる作業です。小生は染物屋さん、ただしその店は限りなく呉服 屋さんに近いのですが、頼んでやってもらいました。なんぼでしたかね−。3〜4 万円だったでしょうか。その店は、名古屋の有松絞りの鳴海近くで、その手の昔か らやっている職人が多いところです。そのため仕事もいいし、安くあがったのかも 知れません。 そうそう洗い張りのいいとことろをもう一つ。着物を長く着ていると、裾なんか が擦り切れて、先に痛んできます。洗い張りで縫い合わせる時に、きれを上下反対 にしたり、他に持っていったりして、痛んだ部分をうまくカバ−するのです。これ は縫い子さんが見て長年の経験でやるものなのですが。よく着物は一生ものといい ますが、本当にそうだと思いました。いいものなら軽く二代は着れますね。 * 初めての着物 先ずは寸法をとりあえずとるぐらいの気持ちでウ−ルの袷と羽織を作りましょう。 なんだったらセミオ−ダでもいいかもしれません。これなら4万円前後で買えます。 袷というのは主に冬場に着る裏地がついた着物のことです。よくアンサンブルとも いいますね。最初、アンサンブルとは一体なんのこっちゃと思ったものです。羽織 は外を歩く時、やはり着た方がよろしいかと思います。茶室に入る時はぬぎますが。 この他、帯や草履、足袋もそろえる必要があります。これらを購入する時は、よく 知った人、例えば先生や自分の母親といっしょに店にいき、採寸してもらい、自分 でも分からないなりに色々みてみましょう。 帯は呉服屋さんで同時に着物に合わせて選びます。しかし合わせるといっても多 くの選択肢があるわけではありません。どこの呉服屋さんでもよくあって4〜5本 でしょうか。まあ無難なところで博多帯ですね。帯はできればいいものを選びたい ものです。4千円ぐらいでもありますが、ちょっといかにも安っぽい。あなたが学 生さんで大学の茶道部で着るというなら別ですが、15000円ぐらい出して、正 絹の帯を求めましょう。一つ忠告。帯の結び目が最初からついたのがあります。こ れはダメです。貝の口にしたものしかないようなので、表千家では使えないのでい いのですが。せんべいみたいな結び目で、いかにもインスタントといった風情です。 女性にも一つ注文をつけておきましょう。二部式の着物、セパレ−ト着物ともい いませすが、これは止めて下さい。幸いなことに男子では着物を上下にわけるとい ったことができないので、男子用にはありませんが。女子の場合、帯のところが幅 があり、おはしょりといって着物を帯の辺りで折り返すので、二部式の着物が可能 なわけです。しかしこんなもの着るぐらいなら、洋服を着てください。茶道は手間 も暇もかかるところに、一種趣があるのです。手抜きは禁物です。 * 男子の着物 男子が茶道できる着物は、紬か御召しぐらいの選択しかないようです。小生が最 初に作った着物は無地の紺の紬でした。ここでいう紬は、大島紬とは少し違います。 値段もそんなに高いものではありません。しかし紬はどうかという意見も昔からあ るようですが、特に問題があるようには思えません。御召しは風合がさらっとして いてなかなかいいものです。値は少し張ってきます。小生は次に御召しで紋を入れ て作ってみました。もちろん紬より御召しの方がはるかに各は上になります。紋は 着尺に5つ紋、羽織に3つ紋としました。最近作ったのは、羽二重の黒紋付きです。 まあ、男の場合はこんな感じで揃えていくのでしょうか。 他、袴を表千家の短期講習会にいく際に急遽、化繊でつくりました。今見ると何 ともひよひよしたものです。黒紋付きを作ったのだから、ついでに正絹の袴も作ろ うかなと今思っているところです。上に挙げた着物はすべて袷です。単はそういえ ば1枚もないです。というのは単は着られる時期が限られているのです。炉から風 炉に変わる5、6月頃しか着られません。夏そして盛夏には呂?や紗の薄ものを着 ることになるのですが、これも実際はほとんど着ないです。一応呂の着物、化繊を 作りましたが数回しか手を通していません。夏にこうした着物を着ると、白の長じ ゅばんと着物をすぐ洗わなければなりません。化繊ですからクリ−ニングでいいの ですが、いちいち大変です。 帯のことです。表千家の場合、男子の角帯の結び方は、町人結びです。時代劇で 浪人が袴をつけずに、着物だけで刀をさして歩いている姿がよく出ます。その場面 での結びです。かい(海にいるかい、漢字変換できん)の口という方が、きりっと してはいるのですが、表では町人結びですね−。袴をつける時も同じです。これも 袴下という結び方が一般的にはあるのですが。これらのことは、茶道の本には書い てありません。表千家なら "茶道雑誌" の写真を見たり、実際に茶会にいって先人 達の様子を見て知ることです。自分の先生が男性なら一番いいのですが、なかなか そういうわけにも行きません、 袴は二種類ありません。行灯袴と馬乗り袴です。正式には馬乗り袴です。この袴 は、文字通り馬に乗れるように、股が分かれています。このため足捌きもしやすく なります。しかし付ける時に、着物をよく左右にさばいておく必要があります。そ れに着物の裾を少し上げるため、女子の着付けのようにおはしょりをとる場合もあ ります。少々着るのが手間ということでしょうか。その点、行灯袴の方はずんどう で、スカ−トみたいなもので、付けるのは至って簡単です。小生は気なしに行灯袴 を前作ったのですが、できたら着物の丈より袴の丈の方が少し長かったせいか、特 におはしょりとかせずにそのまま着ていました。 着付けについても少し書いておきましょう。先ずはなんべんも着てみて、慣れる ことです。せったでも最初からさっさとは歩けません。男子の着物は女子のように ひもやら小道具やら使って、がちがちに着付けするわけでありません。小生は腰紐 と帯だけです。慣れればものの数分で着られます。注意しておきますが、帯結びは 最初から、後ろで結ぶようにしましょう。へたに前で結んで、後ろに回すような癖 をつけると一生そんなことになってしまいます。後、やせた人はタオル1枚パンツ にかましこんで腹に厚みを付けてやります。小生は最初はタオルにしていましたが、 ここんとこはシャツを折って使っています。これだと着替える時に、ぬくといです。 * 紋はどうする 先ずは自分の家の紋を知らなければなりません。親やおじいさんの着物があって、 家紋がついていれば、それでいいですが。そのような着物がなければ、祖先の墓石 に刻まれているので墓参りにいって確認しましょう。ちなみに小生の家の紋は隅切 りの橘といいますが、何とかの何何と言うように表わします。呉服屋さんは紋帳と いうのを持っていて、たいがいの紋はそれに載っています。実に様々、いろいろな 紋があります。家紋入りの和服を作るというのは、気分が全然違います。言ってみ れば元服したような気分とでも申しましょうか。今日では一般の人が紋付きの着物 を着るのは結婚式の時ぐらいですかね。あれはでもまやかしです。オールマイティ の紋のままだったりするのです。 紋の入れ方は、基本的に五つ紋、三つ紋、一つ紋です。五つ紋が一番、格が高い です。従って日本人の正装としての羽二重の黒紋付きが五つ紋になるわけです。夏 場の正装に絽の黒紋付きも五つ紋ということになるかと思います。それ以外のお着 物に三つ紋、一つ紋ということになります。その場合、特にどういう着物に紋を幾 つというのはあってないようで。バランスとして着尺より羽織りに多く紋を入れる というのはないと思います。それに紬やお召で羽織りに五つ紋というのは、ちょっ と重たい感じがして、そのまま外出するのはちょっと勇気がいるというか。女性の 和服の場合は、入れてもたいがい一つ紋でしょうか。 紋を入れる大きさも何かあるようです。関西は大き目、関東は小さ目、尾張はそ の中間という話しも聞きました。あまりでかいのも頂けませんなー。それに男子と 女子では、女子の方が小さ目というのもあります。もう一つ、女子の和服には、紋 の外枠はいれないことになっています。その他、縫い紋、陰紋、比翼紋などいろい ろあるんですねー。面白いです。羽二重の黒紋付きの場合は染め抜き紋です。比翼 紋というのは現在では入れることはないです。昔、相思相愛のカップルがお互いの 家紋を少し重なるように入れた紋なんです。クレジットのマスターカードを思い浮 かべれば近いです。粋ですねー。田舎に行くと道祖神なんかにこの紋が刻まれてい ることがあります。案外近間でもあるかも知れませんよ。 * 着物のきかたしまい方 着物をきる前日には出して、専用のハンガ−にかけておきます。これで着物のた たみ目を伸ばしたり、しょうのうの匂いをとっておきます。その晩は、頭も洗って 首の襟筋なんかもきれいにしておきます。手足の爪も切っておきましょう。足の爪 が伸びていると、足袋をはいたときに違和感がでます。そういえば茶会でご婦人方 がびっしりになって来ると、しょうのうの匂いがたちこめてきますね。ひどい時は 隣の着物からプンプン匂ったりして、あれはいけません。いけませんよ。 さて一日着て家に帰ったら、すぐにぬいでハンガ−にかけ、次の日一日ぐらい風 通しをします。もしその日雨だったりしたら日をおいて、風通しをして下さい。と もかく汗や着物の湿り気をとってからしまうことが肝心です。そうそう梅雨どきな かは、日のいい日に一度陰干をしましょう。着物のたたみ方は、着物、長襦袢、羽 織と少しずつ違っています。慣れればそう難しいことはありません。母親に習うな り、着物の本をみても覚えることができます。めんどうなのは袴のたたみ方ですが ね。これは小生も本を見てその都度やってます。 * 決まり事 茶道できる着物には、幾つかの約束事があります。季節があること、格というこ とがあることが主になります。季節の方はあとで説明するとして、格について話し ましょう。着物の各は茶道に限ったことでなく、着物一般にあることです。大島紬 は非常に高価なものだということは知っているかと思います。しかし、どんなに高 価な大島でも格式のある場では着ないことになっています。いわば遊び着なのです。 もちろん茶席では着ることはできません。女子の着物は種類が非常にたくさんある ので小生も詳しいことはよく分かりませんが、相当格については色々あるようであ ります。帯と着物の組み合わせ、草履やバッグなどとも格を合わせなければなりま せん。これらのことは余程着物を知った人に教えて頂かないと分からないことも多 々あるようです。 もうだいぶ前、稽古のたびにお着物で来られる二人連れの御婦人がいました。着 物はかなりたくさん持っておられるようで、毎回違ったのを召されていました。泥 染めの大島を着て来られたこともありました。ここは固いこと言わずに、稽古です からよしとしましょう。小生としては別にいいのでないかなーと思いました。要は 茶席ではちゃらちゃらした格好をしないことが肝心だと思います。でも粋過ぎては 困りものなんですが。御園座に新春大歌舞伎を見に言ったところ、1人大島を見事 に着こなしている年配の女性がいました。粋だな−と思いましたが、スパーとし過 ぎていて、ちょっと茶席ではしんどいかなとその時感じた次第でした。なかなか難 しいものですね。 * どこで買うか ちゃんとしたきものを買う、まあかうというよりもつくる といった方が正しいです。さいすんしてもらって、オ−ダ メイドで作ることになるからです。 これは結構問題です。そうおやすくないからです。 ちゃんとした着物はウ−ルなんかではダメです。 絹があたり前です。長じゅばんも帯も勿論絹です。 長じゅばんがウ−ルやかせんだと、あしにまとわり ついて、すそさばきがしにくく、非常に歩きにくく なるものです。