プ ロ グ ラ ム

    PM3:30〜  夏点心と薄茶
    
    PM5:30〜  筝座CD演奏

    PM6:30〜  すいか割り 

                    線香花火 ・・・ お開き


                    ところ:徳林寺・本堂  
                    日にち:94年8月12日

筝 座 の こ と

  こんなに筝と尺八の可能性を引き出した音楽が今までにあっただろうか。筝の音
色にとりつかれて8年。僕はこんな透明感あふれる演奏は知らない。「筝座」彼女
らと出会ったのは全くの偶然だった。                    

  職場の旅行で松本城に立ち寄った時のことだ。昨年の9月20日、信州博がちょ
うどやっていた時だ。筝のグループ「筝座」の演奏が2時からあると、案内板に書
いてあった。行ってみるとお城の東側に設定された野外ステージで、男女2人ずつ
のグループがチューニングをしている最中だった。すでに観客が百人ぐらいいただ
ろうか。何かの手違いで本番は4時からになっていた。惜しいことに会社の旅行な
ので、本番は聴くことができなかった。しかしリハーサルで断片的に聴いた演奏だ
けでも、あーこれだなと思わせるのに十分なものがあった。一度も聴いたことがな
いメロディー。オリジナルなのだろうか。彼女らの演奏には夢がある。心ときめか
せるものがあった。                            

  紹介しよう。女性2人は十七弦、むかって左手の女性は高音を、右手の女性はど
ちらかというと低音を担当。男性の1人は尺八と篠笛を、もう1人はシンセサイザ
ーとドラムという構成だった。リハーサル風景を見たのは初めてだった。あのテレ
ビ局にあるボタンやレバーの一杯ついたミキシング装置?が、舞台後ろにあって”
もう少し筝に音を下さい”と呼びかけていたのが印象に残っている。彼女らのスタ
イルや演奏には、筝や尺八といった響きからくる古典的なイメージは、全く感じら
れない。楽器としての性質を最大限引き出し、シンセサイザーやキーボードなどの
楽器と見事にマッチしたサウンドを創り出していた。             

  過去、邦楽器を洋楽器と組み合わせた演奏を何度も聴いた。コンピュータ・ミュ
ージックと筝を何十も使ったのもあった。しかし、全て実験的な試みの領域を出て
いなかった。ふーん、すごいね。それなりに面白いね。なんかその場限りの試みで
しかないような気がしてならなかった。筝、尺八は無限の可能性を秘めている。も
っともっと、魅力を引き出せるのでないか。まだまだこんなもんじゃない。そうい
う思いがずっとしていたのだ。「筝座」はそんな僕のフラストレーションに見事に
応えてくれた。                              

  松本から帰り、また聴きたいなー、あれだけの演奏ならばCDになってもちっと
もおかしくない。と思いつつ忘れかけていた。確か正月明けだったか、アピタでう
ろうろしていると懐かしい曲が流れてきた。あっ、これは松本で聴いたメロディに
違いないと思った。それに2ヶ月ぐらい前だったか、テレビのサスペンスドラマの
エンディングに流れていたような。もう間違いない、CDになっている。レコード
屋でぶ厚いCDリストをめくった、無い。純日本音楽の棚には”春の海”などの古
典が並んでいるだけだ。ひょっとすると環境音楽の棚か。あったあったついに見つ
けた。                                  

  2月の終わりに発売になっていた。家でほこりをかぶっていたCDプレイヤーを
取り出しセットした。懐かしいメロディーが部屋を一杯にした。仕事でも恋愛でも
うまく行かず落ち込んでいた。救われたような気がした。こんな素晴らしい音色を
一人じめにするのは神様に申し訳ない。皆に邦楽を愛する人達に教えてあげたい。
それに今年はやけに暑い、どこにも行きたくない程暑い。だらだらしていても仕方
ない。皆で夏の日の想い出をつくろう。そんな企画を立ててみました。     

  「筝座」のサウンドが無限の可能性を秘めて一涼の風となり、あなたの体を透き
通って行くことと思います。