『 徳林寺・花まつり茶会と"茶の湯クラブ"のご案内 』 平成五年、三月、二+三日 桜の開花予想が、そろそろ言われる時季になって来ました。と、桜の枝を見ますれば まだつぼみすら有るのやら無いのやら。これで本当に、ぱーと咲くのかなと思わずには いられません。四月一日のエイプリル・フールとはよく言ったもので、桜の開花はまさ に、嘘の様、奇跡のごとくと言った趣があります。 そして毎年この時期になると、今度の"花まつり"の茶会はどうやって切り抜けようか と頭を悩ますのです。平素の稽古には外人さんをはじめ、多くの様々な人が来ては去り しますが、当日あてに出来る人はほんの数人しかいません。元々、一回でもいいから茶 席に座ってみたい、そうした人のために門戸を開けたのですから、当然なのではありま すが。人間とは欲なもので、奇跡でも起きて晴れ着姿の若い女性が、茶会に華を添えて くれはしないものだろうか。そんな夢を想い巡らしたりするのです。 徳林寺の和尚さんと縁を得て、釜を懸けるようになってから七年の歳月が経ちました。 順風満帆と事が運んだ訳では有りませんでした。炭の火を起こし、待つことしきり、独 り茶を喫し、お寺を後にすることもしばしばでした。そんなことが数度続くと、殆ど挫 折しそうになりました。ちょうどそんな時、先程の奇跡ではありませんが、誰それから 聞いてやって来たと、新しい方が加わって下さるのでした。本当に感謝の気持ちでいっ ぱいになります。 今、ずっと続けて来て下さっている方は、どちらかと言うと年輩の女性の方ばかりで す。できれば老若男女が集う"茶の湯"にしたいという願いはあります。しかし若い方の 賛同を得、今日まで続いている例はありません。何故なのか、何がいけないのか自問自 答するのです。自分には何かが足りないのかも知れない。多分、人として少々優しさに 欠けているのでないか考えるのです。茶道の稽古はかくあるべし、一生懸命やって何が 悪い、人生には妥協しない、何でも分かったかの様な顔をする。人には口にこそ出して 言わないまでも、自分の心の中に、こうした"我"が巣喰ってしまっていたのでないか。 年輩の方はそれを分かっていながら、私を許して下さっていたのではないか。そんな風 に最近思い、反省するのです。茶道を勉強しているつもりが、いつの間にか全く反対の 方向に進んでいたのです。茶の湯は人あっての茶の湯であります。自他共に許し合う思 いやりや、優しさが大切であると言うことを忘れかけていました。 これからは自分をもっとさらけ出し、人に甘えるところは甘え、少し人間臭く生きる よう、努めてみようかと思います。私もそろそろ年齢的にも、人生の分岐点に差し掛か って来ました。茶道や、会社のコンピュータにばかりかまけていずに、人としてやるこ とはやる。結婚もして子供も育ててみる。とりあえず、それが人としても、茶道を続け て行く上でも、先ず第一歩になると思うのです。未だ人生の何たるかを、全っく分かっ ていない若輩者です。どうか諸先輩方の暖かい御助言と、厳しい御忠告を賜わるようお 願い申し上げます。 また月一回の"茶の湯クラブ"の方は、禅寺の侘び茶道などと言うのは三十年後にして、 若い人達も集う明るく楽しいクラブにして行きたいと思います。どうか近くまでお寄り の際は、気軽に声をかけてやって下さい。稽古日は今までの通り、最終日曜日の昼一時 からです。 最後になりましたが、今年の花まつりの茶会は四月三、四日の両日です。場所は例年 通り徳林寺・方丈内で、本堂上がって右奥の部屋です。ネパールのおみやげのバザーや 踊りなど、色々企画もあるようで楽しい花まつりになると思います。春先きは寒かった り、暖かかったりの風邪をひき易い季節です。どうか風邪などお召しにならず、春の一 日を遊山されますよう御案内申し上げます。          徳林寺・茶道指南  かとう いっけん