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バッテリーに充電されない 〜トラブルシューティング〜 |
オートバイの故障で、度々見舞われることがある電気系トラブルのうち「バッテリーが充電されず上がってしまう」というケースの故障診断方法を考えてみます。
バッテリーは正常な場合充電/放電共に充分な電流を流すことが出来ますが、不良品は電流を取り出すことも吸い込むこともできなくなります。
また、消耗品でもありますので寿命は通常1〜2年ほどです。その後は徐々に、出し入れ出来る電流が少なくなってきます。
バッテリーには、電解液(希硫酸)を使っている鉛蓄電池と、少数派ですかNi-Cdタイプがあります。
どのバッテリーも完全に放電させてしまうと著しく寿命が短くなりますので、不具合発生時は基本的にバッテリー交換となると考えておいて下さい。
(下の説明の中の数値は、一般的な12V仕様車での値です。車種によって異なりますから
修理するバイクのサービスマニュアルなどで回路および規定の数値を確認して下さい)
(1) バッテリー単体の、性能チェック
バッテリーを車体から取り外し、充電器に掛けて充電を行います。
もし、バッテリーが正常な場合は充電電流がしっかり流れますので、ある程度の充電時間が掛かります。
充電器は「充電電流が流れなくなった」状態をもって充電完了と判断しますので、不良品のバッテリーの場合比較的短い時間で完了となってしまいます。(完全に寿命が尽きた場合、充電電流が流れない状態となります。)
→ バッテリー交換または充電で回復した場合、バッテリー自体の寿命・自然放電と考えられます。
(2) 普段乗っていて、バッテリーが度々上がってしまう場合
★充電電圧のチェック
充電系は、一般的に発電コイルよりの交流電力をレギュレータで一定の直流電圧に変換してバッテリーに送ります。
発電コイル → レギュレータ → (電流ヒューズ) → バッテリー
バッテリーは端子間の電圧を常に一定にしようとする働きがありますので、送られてきた電圧が高ければ電流を吸い込みます。
これが、充電の作用です。
エンジン始動時など、充電回路から電力が送られてこないまたは低い場合、バッテリーは内部より電力を放出してバッテリー端子間の電圧を一定に保とうとします。
これが、放電の作用です。
発電コイルはエンジンの回転に比例して発生電圧が変化しますから、バイクの運転状態によって常に電圧は上下します。
→ 大体の目安は、アイドリングで約AC25v(3つの各相の間で)以上です。
アイドリング回転数が1000rpm/最高出力回転数が12000rpmのエンジンがあるとすると、発電コイルの発生電圧も10倍程度上下すると考えられます。
ほとんどのバイクの設計は、アイドリング+αの回転数で十分な電力が出せるよう少し余分に発電しておいて、エンジン回転が高くなった時にはレギュレータで余分な電力を熱として捨てるような考え方で行われています。
また、高級な発電回路を持った車種では、発電機の磁界を永久磁石ではなく電磁石(励磁コイル)にて行い、磁界の強さを直接レギュレータで制御して発生電圧自体をコントロールするようなものもあります。
充放電の作用は、電流の出入りを測定すると確認できます。
しかし、電流の測定はバッテリー+ラインの途中にテスターを割り込ませて行いますからなかなか簡単には行きません。
よって判断の目安としてバッテリー端子間の電圧(充電電圧)をチェックする方法が一般的になっております。
事前に、バッテリー充電ラインのヒューズ(メインヒューズ)が切れていないかの確認をして下さい。
(後述しますが、充電系の深刻なトラブル発生時には充電電流にてのチェックが望ましいです。)
バッテリー端子間の電圧は、しっかり充電されていて無負荷状態に於いて、約12.5v位あります。(12v仕様の場合)
→ 充電しても電圧が低い場合、バッテリーの性能が低下していると考えられます。
充電電圧の測定は、サービスマニュアル等に記載されていますのでそれに従って行います。
おおむね、エンジン回転を2000〜3000rpmにした状態での電圧をテスターで測ります。
約13.5〜14.8vの範囲であることを確認します。(12v仕様の場合)
→ 充電電圧が16vを超えている場合、過充電(オーバーチャージ)のトラブルの可能性があります。
過充電は著しくバッテリー寿命を損ない、最悪の場合破裂することもある重大なトラブルです。
たいていの原因として、レギュレータの故障により電圧制御が出来なくなっているケースが多いです。
この場合、レギュレータ/バッテリーの他、点火装置(イグナイタ)などまで故障していることもありますのでより厳重なチェックが必要です。
★充電電流のチェック
充電系のチェックは、本来バッテリーに出入りしている電流の方向と大きさにて行います。
車体ハーネス電源ライン>>>バッテリー の場合、充電作用が働いています。
車体ハーネス電源ライン<<<バッテリー の場合、放電していて充電は行われていません。
灯火類(ヘッドライトなど)を付けた時、エンジン回転を上げたり下げたりした時の充電の具合が電流を測定すると分かります。
(車種によって、バッテリー電力にて点火システムを作動させているものがあります。この場合エンジン回転が高いと消費電力が増えます。)
(ヘッドライトの電力が、別の発電コイルから供給されるタイプもあります。この場合、灯火類の作動にバッテリー充電系は影響されません。)
●テスターでの測定方法
テスターを壊さないよう、大きな電気的負荷を加える場合測定レンジなどに充分注意して下さい。
セルモーター:約10〜30A ヘッドライト:3〜5A ブレーキランプ:約2A
また、大きな電流が流れるラインなので接触部や線が発熱することがあります。(電圧は低いので感電することはありません)
テスターのリードを接続する時には、しっかり接続して車体アースとのショート防止のためビニールテープなどにて絶縁を厳重に行って下さい。
さらにテスター内部ヒューズに大きな電流が流れて切れてしまう可能性も考えられますから、予備のヒューズを用意しておいてください。
セルモーター始動のバイクや、キーonでヘッドライトが点灯してしまうバイクについては、エンジンが始動するまでテスターをバイパスさせておくことをお勧めします。
また、基本的に充電作用が働いている場合は下の図の通りの極性で充電電流が測定できますが、放電気味の場合はテスターの指針が反対側に振り切ってしまいます。
この場合にも、一旦テスターをバイパスさせてから極性をつなぎ替えれば放電電流の測定も可能です。
大きな電流をバイパスさせて流すので、使用する線は太いものが必要です。
大きな電流が流れる場合、テスターの極性をつなぎかえる場合はバイパスしましょう!
正常な場合、灯火類offで0.5〜2A程度の充電電流があります。(バッテリー容量による)
また、ヘッドライトを点灯させた場合にはエンジン回転を少し上げた状態(大体2000rpm)で充電電流があればokと思われます。
車種によっては、充電系が正常でもエンジン回転を上下させると充電電流がなくなってしまうようなものもあります。
交流成分にテスターが追従できない場合や振動の影響を受けている場合にも正しい測定値が得られません。
電装系アクセサリーを取り付けた場合、バイクの充電が足りているかどうかのチェックも充電電流の測定をすれば可能です。
(3) 乗っていない状態で、比較的早くバッテリーが上がってしまう場合
★リーク電流のチェック
メインキースイッチがon/offの状態に関わらず、常にバッテリーは充電回路(レギュレータ出力端子)につながっています。
ただしレギュレータ回路は電気的に逆方向からの電流を流しませんのでバッテリーを消耗することはありません。
しかし、レギュレータ内部回路の故障や配線などのトラブルによって、キーがoffでも電流を流して消費してしまうトラブルがあります。
また、バッテリーが劣化してくると何も負荷を繋いでいない状態で自然に放電してしまうケースもあります。
長期間(一ヶ月)バイクに乗らない場合、バッテリーを車体から外しておいて定期的(一ヶ月ごと)に充電を行うとバッテリー寿命が伸びます。
車体にバッテリーを載せたまま追加充電が行える製品がバイクメーカー純正アクセサリーなどに用意されていますので、たまにしかバイクに乗れない方は購入を検討されてみてはいかがでしょうか?
●リーク電流測定方法
事前に、バッテリーをしっかり充電しておきます。キーoffでも作動している時計などのアクセサリーはとりあえず外します。
それと、バイクの外装部品などを取り外してレギュレータその他の電装部品が容易に脱着できる状態にします。
メインキースイッチはoffの状態でリーク電流を測定しますので、不用意にキーonとならないようキーは抜いておいたほうが良いでしょう。
次にバッテリー(+)端子→車体ハーネス(+)ラインの方向の電流を測定できるよう、テスターを割り込ませます。
この場合、車体アースとのショート防止のための絶縁と、テスターリードの接続を確実に行います。
電流測定レンジは最初、テスターの最大にしておいて針が振れなければ小さいレンジへ切り替えていきます。
→ リーク電流が10mA以下ならば、リークの心配はありません。バッテリーの自然放電と考えられます。
●リーク電流があった場合
漏電している箇所の特定を行います。リーク電流を測定している状態で、(+)ラインに接続されている電気部品を一つずつ取り外して行ってリーク電流の変化する部品を探します。
まず第一は、レギュレターのコネクタを外します。その次はメインキースイッチ。
年数の経ったバイクで、コネクター・接点部分が腐食して、それが接触だけでなく絶縁不良を発生しているケースがままあります。
後はバイクの配線図を見ながら(+)ラインを追いかけていきます。
事故やレース使用などで激しい衝撃・振動が加わったバイクには途中の車体ハーネスの被服が破れて絶縁不良を起こしているケースも見られますので、ハーネス部分も手で揺すってみて下さい。
さらに、電装系部品を改造などで手を加えた場合にも同様のケースが多く見られますので、改造車の場合はまず変更した箇所から疑っていくのが良いでしょう。
→ レギュレータ不良の場合、大抵は充電に関係する機能も不具合がでている場合が多いです。
(4) オマケ/コイル・レギュレータの良否判定
サービスマニュアルに記載されている電気部品の良否判定方法は、指定されたテスターを用いて各端子間の抵抗値を測定するようになっています。
しかし、テスターの内部に使われている部品はメーカーによってさまざまです。(下図を参照)
テスターの抵抗計は、内部の電池より測定対象物に電流を流して、その電流の大きさによってメーターの針が振れます。
もちろん、メーターにもわずかながら電気抵抗がありますし、電池の数もさまざまです。
抵抗値測定に関しては、テスターの内部電池電圧・メーター部の内部抵抗がまちまちですので、測定に使われる電流値も異なってしまうのです。
さらに・・・レギュレータなどに使われている「半導体」は、電流が流れる大きさや向きによってさまざまに抵抗値が変化する性質を持っていますので、手持ちのテスターによっては例え部品が良品であってもマニュアル通りの抵抗値とならない場合があります。
さらに、半導体には温度によって特性が変化する性質もありますので、「冷えている時」と「温かい時」それぞれの条件によって症状が出たりなど難しい故障になっている場合もあります。
コイルに付いては、原理的に電線をグルグル巻いてあるだけなので、直流抵抗はかなり低いです。
よってテスターで抵抗値を測定するとショート(0Ω)しているのかの区別が付きにくい場合があります。(断線していないかのチェックは可能です。)
なお、コイルの線の絶縁が悪くなってしまって巻き線の途中でショート(レアショート状態)になっていると、コイルの特性としてはかなり変わってしまいますが、直流抵抗だけを見ている限りこのような故障については判断が困難です。
厳密な良否判定は、使用状態にて通電し、その部品の働きを電気信号を見なければならないでしょう。
発電コイルの場合には発生電圧を、イグニッションコイルの場合には火花試験装置使用、レギュレターの場合には出力電圧&電流をチェックするのが確実です。
しかし、修理の現場ではそのような検査設備を用意する訳には現実問題として無理なので、あくまで簡易的な目安として行うようになっていると思われます。
近くに同型車があれば、良品部品と替えてみるのが良い方法ですが、実際はなかなかそのように都合良く同じ部品があると言う訳には行きません。
電気部品の修理に於いては、可能な限り故障箇所を特定(又は限定)して行っても最後には部品を試しに交換してみるという手法はある程度仕方ないのかもしれません。
しかし、テスターも使わず今までの事例やヤマカンだけで交換部品を決め、どんどん注文・交換して行く方法を安易にとるのは経済的な負担や修理後の信頼性の点でナンセンスであると思います。
(電気回路は広範囲につながっているので、複数の部品が一度に不具合を起こすこともありますから、ケースバイケースです)
まず、配線図とテスターを持ってきて調べ、部品を交換した後どのように変わったのかを再確認する位の慎重さを持って修理して頂きたいものであります。
さらに、電気部品は一般的に高価な物が多いです。よって、バイク店に依頼すると高額修理となるケースが数多くみられます。
でも、故障診断をしている間の時間的コストに付いてバイク店で行う場合にはしっかり作業工賃に反映していることはほとんど無いと思われます。
(作業工賃の工数計算は、「部品交換に掛かる時間」が基準で決まってしまいます。)
せめて、交換した部品だけではなく故障の詳しい内容の説明を頂いて、ユーザーが気分良く修理代金を支払えるようにしたいものであります。
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