セルモーターが回らない 〜トラブルシューティング〜

 

オートバイの故障で、度々見舞われることがある電気系トラブルのうち「セルモーターが回らない」ケースの故障診断方法を考えてみます。
この場合、セルモーターだけが回らず他の電装品は動作するという状態を仮定して話を進めます。


(1) 安全機構が働いていないかのチェック

まず、キルスイッチ・飛び出し防止機構(ニュートラルスイッチ・サイドスタンドスイッチ・クラッチスイッチなど)が働いていないかのチェック。
また、スクーターの場合ブレーキを握っていないとセルが回らないようになっていることが多いのでストップランプスイッチも関連します。
この場合、ブレーキを握ってストップランプが点灯すればokと考えられます。

(2) バッテリーが上がっていないかのチェック

外部からの電源をつないでみて回復する場合は、充電系のトラブルが発生していると思われる。
セルモーターは大きな電力を消費するため、バッテリーが弱っていると、ニュートラルランプやウィンカーなどは作動してもモーターを回せる電力が取り出せない場合も多いです。
この場合、スターターリレーが「ジジジジ・・・・・」という音が鳴っていることが多いです。

バッテリーを充電して接続してみるのも良いが、完全に上がってしまったバッテリーは充電できないのでご注意を。
充電には時間が掛かるので、とりあえず信頼できる電源(四輪など)から給電して調べるのがお勧めです。
度々バッテリーが上がる場合→バッテリー充電系関連の故障

(3) 接触不良などのチェック

飛び出し防止(安全)機構が付いている場合、特にサイドスタンドスイッチは地面に近い所に取り付けられており、接触不良トラブルを発生する可能性は少なからずあります。
また、社外品への交換などでそのスイッチを取り外されている場合には安全機構のキャンセル処置が必要となっていることがあります。
(純正スイッチの取り付けを外して物理的にスイッチの接点位置を固定する、もしくはカプラーにジャンパーするアダプタを取り付ける等電気的に安全機構をキャンセルする)

メインキースイッチ/キルスイッチ/スタータースイッチの接点が、接触不良を起こしている場合もあります。
初期の接触不良の場合、スイッチのon⇔offを繰り返していると接触が回復することがあります。(もちろん、再発する可能性が高いのでしっかり修理しなければなりません。)
まずスタータースイッチの押しボタンをぐりぐりと色々な方向から力を加えてみても良いと思います。
スイッチ接点不良→分解して接点を掃除、接点が焼けてひどい場合はスイッチ部分の交換
(接点復活剤は、ほとんどの場合応急処置レベルの効果しかありません。接点を磨いてから塗るのはok)

(4) スターターリレー接点の接触・セルモーター自体の不良

スターターボタンを押した時バイクのどこかで「カチ・カチ」と音が鳴っていない場合には、上記のスターター制御系のトラブルである場合が多いと思われます。
スターターリレーの「カチ・カチ」という作動音がしている場合、セルモーターの駆動系部分の不具合が考えられます。

ただし、シリンダー燃焼室の中にオーバーフローした液体のままのガソリンが入っていたりすると、液体は圧縮できませんからクランクシャフトが物理的に回らない場合もあります。
ここまでのチェックが済んだ時点で、すべてのプラグを取り外し圧縮をしない状態でセル始動テストを行うと良いでしょう。
(万一、オーバーフローしたガソリンが一杯入っていた場合、セルを回した瞬間勢い良くプラグ穴からガソリンが噴出しますのであらかじめウェスなどで飛散防止策を講じて下さい。当然ながら、火気厳禁です。)

スターターリレーは、一般的な大電流用接点を持った直流(DC12V)リレーです。
(バイクによっては接点が二系統ありセルモーター作動時にヘッドライトなどを消灯させる機能をもった物もあります。)
セルモーターの配線は太くなっているので、追いかけて行けばスターターリレーを見つけることが可能です。


セルモーター駆動回路部分
途中にはヒューズなどは付いていないことが多いです。
リレー接点の不良判定はテスターで導通を測定するのも良いですが、微妙な接触不良の場合接点に電気抵抗(接触抵抗)が発生し、負荷(セルモーター)が加わった時のみ電圧降下を起こす場合もあります。ですから確実な判定は、「接点の間をバイパスさせてみる」方法だと思います。
上の回路図を見て分かると思いますが、セルモーター駆動回路はメインキースイッチなどは関連しておりません。

大電流が加わる回路ですので、バイパスに使う線はある程度太いものでないと発熱してしまいます。
また車体アースとショートしてしまうと完全にバッテリー+-端子間の短絡となりますから、くれぐれもこの点に注意して行って下さい。
スターターリレーの取り付け位置の加減で接点間のパイパスが困難な場合は無理をせず、セルモーターの+端子とバッテリー+端子を直接バイパスする方法を取るなどの工夫をして、短絡事故防止に努めて下さい。
(バッテリー+−間のショートは、最悪の場合爆発の危険性があります)


スターターリレー接点をバイパスさせても、セルモーターの回転が弱い/回らない場合は、セルモーター自体の不良と思われます。
(本来プラグが付いていて圧縮が掛かっている状態で、勢い良く回らなければならない)
この場合、セルモーターを車体より取り外して単体で電気を入れてのチェックとなりますが、大抵のバイクは取り外すとエンジン内部が露出してしまうので、長期間そのままの状態にする場合フタをするなど何らかの手立てを講じておいて下さい。
セルモーターがオイルレベルより下に付いている場合、取り外しの前にオイルを抜かなければならない場合もあります。

セルモーターはブラシを持ったタイプの一般的な直流モーターですが、ブラシ磨耗・軸受け不良の他にコイルの焼損などのトラブルがあります。
ブラシなど消耗品が純正補修部品として供給されている車種と、丸ごと交換が前提の車種があります。
分解は難しくありませんが、組み立てで苦労することも多いので部分補修する場合は事前によく検討しての対処をお願いします。

セルモーター単体の状態で、手で出力軸を回してみての判断は、磁界の作用で少し抵抗がありますがスムーズに回ることを確認します。
また、軸をこじってみてガタが出ていないことを確認してください。(ガタのある物は、軸受けなどがかなり損傷していると思われます。)
部分補修の内容:
ブラシが磨耗して減っていれば、交換する。回転部分(ローター)との接点(コミニュテーター)とブラシが良く密着するようにブラシの先端形状をある程度整えておく。(使っているとすぐに馴染むので、やりすぎない事)
ローターの支持ベアリングは、ガタなどがなくスムーズに回ることを確認して不具合があれば交換。汚れが多い場合掃除してグリスアップを行う。
コミニュテーターは偏磨耗している場合、平らになるよう修正。修正の際に絶縁部分にバリが出たら取り除いておく。
表面が焼けただれている場合は紙やすりなどで一皮向いておく。
(この部分は回すと火花が出るので、脱脂するほどではないが油などを付けないこと。焼けてしまってむしろ接触が悪くなります。)

部分補修をしても、モーターのトルクが回復しない場合があります。
また中古部品を使用する場合にも年数相応の劣化が出てしまう部品なので、結局の所寿命が短いケースもあります。
セルモーターについては、なるべくなら新品部品が供給されている場合、新品丸ごとの交換をお勧めします。


スターターリレーの不良の場合

リレー丸ごとの交換となります。
分解が可能な場合、接点を磨いて組み付けをすれば良いのですがほとんどの場合、接点が焼損して磨耗が激しい状態なので手直ししても回復しないことが多いです。
(リレー内部の部品は供給されていません。旧車・外車などの場合、接点の電流容量など電気的定格が満足する他車種の流用は可能です。)





 

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