ぎふの産業遺産 No.5
高須輪中の排水機
高橋伊佐夫
岐阜県南端の町、海津郡海津町萱野に「海津町歴史民俗資料館」がある。その
中庭に復元された「堀田」(水がつかないように土を堀り上げた田んぼ)と堀田
の埋め立て作業で、土砂の運搬に使われたというディゼル機関車、その脇に長年
高須輪中で活躍してきた排水機が展示されている。
この排水機は、高須輪中の南端、海津町油島の「福江排水機場」に1927(昭和
2)年に設置されたものである。 高須輪中は、揖斐川と長良川の堤防にはさまれた海抜ゼロメートル地帯で、か
つて農業排水や生活排水は、大江川や福江川などに集められて、輪中南端部の排
水樋門(水門)によって揖斐川に排水されていた。しかし、大雨などで揖斐川の
水位が高くなると水門は幾日も開かず、田畑は冠水し稲作に被害が生じた。この
被害を少なくしようと設置されたのが排水機場である。
>高須輪中には、現在9ヶ所ほどの排水機場があるが、最初に設置されたのは「
中江排水機場」(1903年)で、次に「西江排水機場」(1904年)、三番目に「福
江排水機場」(1910年)が設置された。 この福江排水機場は、当初25HPの蒸気機関で、直径55pの横軸両吸込型渦巻ポ
ンプ2台(大阪の中岡鉄工所製)を回転させ排水していたが、1927年に80HPの電
動機と直径70pの横軸両吸込型渦巻ポンプ2台(東京の荏原製作所製)に取り替
えられた。なお排水機は揖斐川の水位の高低に応じて、並列または直列に運転を
切り換えられるものであった。1981(昭和56)年に再び新しい排水機に取り替え
られたので、1927年に設置された排水機は不要となり、その一部(電動機と渦巻
ポンプ1台)が治水事業の遺産として保存展示されたものである。展示された排
水機と機関車、堀田及び「高須城」を復元したといわれる三階建の立派な歴史民
俗資料館は、治水の歴史が学べる絶好の場所である。
(たかはし いさお・岐阜県立岐阜工業高等学校)
あし:近鉄養老線「駒野」駅下車、車で10分のところ。
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