
【愛が微笑む時】
| この作品は、あまり評判にならなかったので、大して期待もしていなかったのですが、快作「トレマーズ」をつくったアンダーウッド監督の作品ということで観てみたんです。そしたら、そしたら、その出来の良さにビックリ。幽霊たちと人間の交流を描いた人情ものであり、往年のキャプラの作品を彷彿させる内容で、ハリウッドのいいところが表に出た作品です。アンダーウッド監督の職人的手腕の確かさを再び痛感しました。それと、主役のロバート・ダウニー・Jrの器用さがなければ、この作品は成り立たなかったというのも重要なことですね。 |
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まず、脚本が良くできている。良い作品というのは、作品の「テーマ」と「設定・図式」が見事にマッチしていると思うのだが、この作品も例外ではない。
主人公に取り憑く4人の幽霊は、主人公から離れることが出来ない。この設定は、「自己=他者の集合体」という図式を導きだし、自分の中には、様々な人間が存在しており、自分のために生きることは、その人間たちのために生きることに他ならないというテーマを提示する。一見、他人のために生きているようで、(自己犠牲のように見えても)実は自分のために生きている。つまりは、自分のために生きるには、自分を理解し、自分の中にいる他者(先祖・家族・友人・恋人・・・)のために生きるということなのだろう。また、その他者たちが子どもの頃は見えていたが、大人になると見えなくなるという設定は、大人になると忙しさなどから自己を捉えることがおざなりになり、自分の中の他者たちを意識することが難しいということを言いたかったのだろう。
生きている人間が死者たちの悔いを晴らす手伝いをするという設定も、「生きているうちに、悔いのない人生を送ること」というテーマを導き出すのに有効だったと思う。人生これからという人間に、死期がさし迫った人間(実際は死んでしまった幽霊なのだが)の人生の悔いを晴らさせるのだ。否が応でも、主人公は、生の中でも死を意識し、悔いのない人生を歩もうとするだろう。極めつけは、死者を迎えに来るバスの運転手が最後に主人公に放ったセリフ。「今度は君を迎えに来る。50年か60年後にな」これは、まさしく、「死を意識して、生きるんだぞ」ってことだろう。やはり、生というのは、死という制約があるからこそ輝くことができるのだと痛感させられました。
4人の幽霊たちの「悔い」の内容も見事な設定でした。彼らの悔いを晴らすことで、主人公(=観客)は、人生において大事なものを得ることが出来るようになっているのだ。それは、「誠実」「勇気」「愛」「自己解放」の4つ。この作品を観れば、生きる自信を得ることが出来という訳だ(ちょっとオーバーかな)。
テーマとあまり関わりのない設定だけど、天国のバスが死者を一人ずつ連れ去るという、タイムリミット付きの設定は、ストーリーに緊張感を与えると共に、別れの場面を感傷的になり過ぎないようにしていて良かったと思います。
ただ、この作品の難点は、キャラクター紹介などを見せるのに、作品の前半の半分を費やしているということ。監督の手際が良く、かなりテンポよく裁いているが、前置きが長い作品というのは辛い。最近でいうと、「ディープ・インパクト」みたいなもんですね。
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