冬の公園を犬の散歩で通ったらおもしろい形の木の実が落ちていました。見上げると高い木の枝にいくつもの実
がついています。後からわかったのですが落葉高木、ムクロジ科のムクロジでした。手にとった実を振るとカラ
カラと音がします。殻を割ると中には真っ黒い種がひとつありました。
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この種はお正月の遊びであった羽根つきの羽の錘に使われているものです。硬くて羽子板でつくとカチン、カチ
ンとよく響きます。昔の人は自然の素材をうまく生かしたものだと感心します。そして、この羽根つきにはつぎ
のような意味があると言われています。この羽が空を飛ぶ様は昆虫のトンボをイメージしたもので、蚊を食べる
トンボを飛ばすことによってあのいやな蚊を駆除してもらう願いがあるのだそうです。お正月に子どもたちが元
気に羽根つきをしてトンボに今年の夏は蚊を撲滅してねと願ったのかと思います。さて、このムクロジですが漢
字では無患子と書きます。患う子どもが無いのですから縁起がよいことになります。これも羽根つきにつながる
のでしょうか。ムクロジは生薬名を延命皮と書きます。なぜ延命皮なのかは不明なようですが果実の外皮は水に
つけて揉むと泡を生じます。ムクロジサポニンと言う成分が含まれていてこれが泡を生じ洗剤の働きをするので
す。純植物性のわが国の洗剤で、100年前までは使われていたのだそうです。これでシャボン玉遊びもできる
そうです。
ところで落下しているムクロジの実を拾ったのですが、この時期には中の種子は黒くて硬くなり外皮から離れて
カラカラと音を立てます。しかし、まだ樹上にある頃の実の生育期には外皮と種子の間には粘りのある成分で満
たされてまだ熟していない種子を小鳥などに食べられないようにしているのだそうです。
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