『ムーンライダーズの夜』ムーン・ライダーズ
ちょっと待ってくれ、

このアルバム(『ムーンライダーズの夜』)について何を語れというのか?

ムーンライダーズは日本の音楽の中で、絶えず微妙なズレをみせ続けている。半歩前に出ては嘲笑したり、背を向けて肩越しに信号を送ったり。

無菌状態のバリアを張り巡らす事で、時制感覚を麻痺させていた。諧謔な斬新さ。全ての曲をシャッフルして聴かせようか?と笑いかけるように。

4年後にこのアルバム(『〜の夜』)を、聴いている自分をうまく想像出来ない。それはあまりにも、時代(95年)が埋まり込んでいるからだ。

この突き刺さった95年が『ムーンライダーズの夜』なのだ。

ムーンライダーズ'95。

「'96年版」が出る予定だった「HAPPY/BLUE'95」。発売日には熱狂的な混乱が待ちかまえていたはずだ。

『〜の夜』の中で、一番ムーンライダーズらしい曲を探すとしたら、「ぼくはタンポポを愛す」だと思う。アルバムには収録されなかったが。

トロンプ・ルイユ(だまし絵)のように、幾層もの風景を描きだす「〜タンポポを愛す」。折り重なった暗喩には、殺伐としながらも愛の隠った物語(ストーリー)が見え隠れする。「くたばれ!」と自らを歌った裏返しが、この曲の中に押し込められているような気がする。

「ぼくたちは********を愛す」

考え過ぎかもしれない、でも、それは君達も同じなんじゃないのか?


96/05/25  *久田頼


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