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『青空百景』ムーン・ライダーズ | |
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僕にとってこの『青空百景』は、ずっと苦手なアルバムだった。 それぞれの曲を考えると、「くれない埠頭」「青空のマリー」「物は壊れる、人は死ぬ 三つ数えて、眼をつぶれ」なんて、大好きな曲がいっぱい入ってるんだけど。 サウンド面では、新作の『最後の晩餐』と共通するアプローチが見られる。常套的になりそうな寸前に、ぎゅっとペダルを離したようなメロディ。ポップの資産をふんだんに盛り込んだアレンジ。演奏中に笑顔で目配せしているような屈託のなさ(と言っても、すべて<ライダース流の>って括弧がつくんだけどね)。 かなり巧妙に仕組まれた引用を探してみるのも、このアルバムの楽しさかもしれない。3年位だまっていて、みんなが散々忘れた頃に「実はあれ俺がやったんだ」ってイタズラをばらすのがこれまでのライダーズとしたら、「早くめっけてくれよ」と茂みから頭をぴょこんと出しているのがこの『青空百景』。 ライダーズ唯一のライブ・ビデオ『WORST VISUALIZER』のイメージが強いせいもあるけど(「僕はスーパーフライ」「トンピクレンッ子」「くれない埠頭」収録)、聞いていてライブ・シーンの想像しやすいアルバムでもある。 ライダーズ結成10周年記念ライブ・ツアー(名古屋公演では、慶一氏は腰を痛めてステージの真ん中に置かれたソファーのような椅子に座りっぱなしのライブ)で、スポットライトを浴びて、今にもステージ・フライトしそうな切ない表情で「くれない埠頭」を唄う鈴木博文。どこからともなく聞こえてきた小声のコーラス。その時、みょうに「あっ、今、ライダーズのライブを観に来てるんだ」って実感がわき起こった。 ムーンライダーズのアルバムの中で、聞いていてめちゃハッピーな気分に、させてくれる一枚。この明るさが、実は眩しすぎるのだろうか。 こんなわがままな思いをさせてくれるのも、ライダーズの魅力かもしれない。 91/04/30 21:26 *久田 頼 |