●議案質疑●
平成18年3月9日 |
私は第11款教育費 第6項 生涯学習費のうち、「父親の家庭教育参加促進事業」について質問いたします。
ここ近年特に、幼稚園・保育所や学校などの教育現場において子どもたちを見ておりますと、家庭の教育力の低下が目立つようになりました。家庭でのしつけがきちんとできていない未熟な子どもたちが集団生活を始めるため、信じられないようなトラブルが続出しています。子どもへの接し方や教育の仕方がわからない、しつけ・子育てに自信がなく幼稚園・保育所や、学校側におしつける等の親の増加、逆に過保護や過干渉、無責任な放任など、子育てをめぐる問題は、放っておけない状況になってきました。 「全ての教育の出発点は家庭にある」といわれますように、子どもの人間形成にとって家庭の果たす役割は極めて大きいものがあります。家庭教育は、本来、親の責任においてなされるべきものであり、父母が共にその役割を担うものであります。 しかしながら、現実に目を向けてみますと、親が親としての自覚を持たず、責任も果たすことなく、育児放棄や子どもを放任するなど家庭の教育力の低下が叫ばれています。これは、少子化の影響により子どもに親が手をかけすぎたり、核家族化等により、家庭の中で親自身に子育てに関する知恵を授けるような適切な相談相手がいないために、子育てについて学ぶ機会は少なくなり、子育てに自信のない親が増えていることが要因として考えられます。 昔は大家族の中で、両親以外に祖父母や叔父・叔母、また近所の人など、子どもに多くの手がかけられ成長していきました。さらに父親・母親の役割がきちんと分かれており、大きな事を決める時には、必ず母親が「お父さんに聞いてから」と父親が一家の大黒柱として君臨していたのです。その頃は、「地震、雷、火事、親父」と父親は最も怖いものと恐れられていました。 ところが、今や父親の威厳はどこへやら、最近発表されたサラリーマン川柳では、「怖いのは、地震、津波にテロと妻」などと歌われ、家庭の中での父親の存在感はどんどん小さくなっています。 今の家庭を見たとき、父親は仕事一筋、ひたすら家族のために汗を流し、子育てに対しての父親の意識や支援が薄く時間もないため、「母親一人の子育て」になっていることも大きな問題であると思います。平成14年度の文部科学省の「今後の家庭教育支援の充実についての懇談会」の報告によれば、母親の7割が育児に対する不安を感じています。母親一人で子育てをしていると、「しっかりと育てなければ」と思えば思うほど精神的な負担が重くなり、育児ノイローゼにつながっていきますし、さらに進めば虐待に走る可能性も出てきます。核家族化で、たった一人で育児も家事も全て任せられている母親が、ゆったりとした育児をするためには、父親の力がどうしても必要です。また、子どもにとって育ちやすい環境は、母親の笑顔が一番なのです。 幼稚園での現場においては、以前に比べればここ最近、父親が行事に参加する家庭が増えてきました。しかし、日常の子育てはほとんどが母親まかせで、参観日や懇談会はよほどの事情がない限り、父親が来ることはめったにありません。 時々、子ども同士のトラブルで母親から連絡があります。「うちの子だけがいじめられている」「うちの子は何もしていないのに、たたかれたと言っている」など感情的に話されるケースが多く、子育てや家庭に対する不満が溜まっている様子が伺えます。全てではありませんが、かなりの割合で母親の一方的な思い込みの場合があり、こちらが何を言っても受け入れてもらえず、平行線のままの時もあります。 また母親同士のトラブルも最近では多くなり、その悩みが園に持ち込まれる時もあります。2月に起こった自分の子どもの友だちの園児を刺し殺したという長浜市の痛ましい事件も、母親が「友だち関係がうまくいっていないのでは?」という思い込みが事件を引き起こした要因の一つと言われています。 母親が不安な時、父親がもっと子育てに関心を持ち、母親と会話し、心に溜まった諸々を吐き出すことが出来れば、ストレスも和らぎ、冷静に自分を見つめ、穏やかな心境になるのでは、と私は思います。 私が最も望ましいと考えるのは、父親は仕事が終わったら早く家に帰り、家庭教育を父親と母親がすることです。1日の出来事をゆっくり話し合えば子ども同士のトラブルも冷静に見つめることができ、お互いの家庭との摩擦も減り、平和な家庭が増えるのではないでしょうか。 以上のことから、子育てにおいては父親も積極的に関わること、父親が母親の良き相談相手となり、夫婦で協力して行うこと、これらが家庭における子どもに対する教育力の向上につながる大切な要素と考えます。 また、家庭外に目を転じてみますと、都市化の進行、価値観の多様化などにより、地域の人々とのつながりが薄れて、地域で子育てを支えていた仕組みが崩れてきており、地域の教育力が低下していることも事実であります。 私が幼い頃は、近所にうるさいおじさん・おばさんがいて、悪いことをすると他人の子どもでも遠慮なく叱って、社会のルールを教えてもらったものです。また、子ども会活動も盛んで、クリスマス会の時など現在のような派手なパーティはしませんでしたが、ゲームをしたり、ささやかなプレゼントをもらったりして、高学年の子どもがちゃんと下の子どもたちの面倒を見て、毎回楽しみにしていました。 ところが今はどうでしょう。他人の子に注意しようと思っても、少しのことでキレル子どもが多くなり、何を言われるのか、何をされるのかわからない、見て見ぬふりをしようと誰も言わなくなりました。塾通いで忙しい子どもが増えたことと、役がまわってくるという親の勝手なエゴで、子ども会をやめてしまう子も多く、私の地元でも子ども会活動が段々縮小され、なくなってしまった地域もあります。 こうしたなか、近年、PTAのOBや現役のPTA役員等で構成される「おやじの会」が、県内各地で発足し、その数は年々増加をして、現在100団体以上あると聞いております。こうしたおやじの会は、子どもたちの学習環境整備・資源回収などの学校支援活動や、学校行事への参加・協力活動を行い、「地域の子は地域で育てよう」と大人や子どもが一緒になり、地域の特色を活かしたイベントを企画して、希薄になったといわれる連帯意識を高める大きな力となってきております。 私は、家庭や地域の教育力を向上させるためには、家庭では父親が家庭教育の一翼を担うことが最も大切であると思いますし、地域においては、各地で活動が活発化してきた「おやじの会」などを中心として、地域全体で子どもたちの成長を支えていってほしいと願っております。 そこでお尋ねいたします。第1点目として、平成18年度の教育委員会の新規事業として「父親の家庭教育参加促進事業」がありますが、その事業内容と期待される効果についてお聞かせください。 第2点目として、「おやじの会」などに参加されている方々は、学校の役員等の経験者が多く、もともと教育熱心で子育てに対しての感心も高いと思います。優秀な人材が豊富な中での事業はスムーズに出来るでしょうし、効果も期待できると思いますが、問題はそれ以外の関心が低い父親たちにどのように広げていくのか、だと思います。残念ながら春日井市でも、まだ「おやじの会」が発足しておらず、盛んな地域とそうでない地域では、かなりの温度差があるようです。そのような地域にどのように働きかけていくのか、また表向きの一時的な事業に終わるのではなく、継続して行うために、という長期的な計画が立てられているかどうかお伺いします。 第3点目としては、父親の家庭教育参加促進といっても、教育委員会単独で達成できるものではないと私は思います。例えば、家庭教育に参加となれば、父親の働き方にも影響し、企業への呼びかけも必要となると、産業労働部にも関連してきますし、子育て支援の一環となると、健康福祉部にも関連してきます。当然、関係する部局の協力が不可欠でありますし、同時に進めていくことによって、より一層の事業促進が計れると思われますが、他の関連部局との連携はどのように進めていくのか、お聞かせください。 以上、「父親の家庭教育参加促進事業費」についての質問を終わります。 |
<教育長答弁> (1) 「父親の家庭教育参加促進事業」についてのご質問をいただきました。まず、この事業内容と期待される効果についてのご質問でありますが、議員ご指摘のとおり、核家族化、価値観の多様化等で家庭や地域の教育力の低下が指摘されているところです。 こうしたことから、「父親の家庭教育参加促進事業」は、家庭の教育力向上に向けた取組としての「父親の家庭教育参加促進モデル事業」と、地域の教育力向上に向けた取組としての「父親を考えるフォーラム」の2つからなる事業として実施するものでございます。 まず、「父親の家庭教育参加促進モデル事業」は、県内の15市町村へ事業を委託するもので、父と子のふれあい活動や父親の家庭教育についての学習会などを実施していただき、父親が家庭における自らの役割を自覚し、父親の家庭教育への参加促進をめざすものでございます。 また、「父親を考えるフォーラム」でございますが、このモデル事業の発表や県内各地の「おやじの会」の活動を紹介するもので、今後、「おやじの会」などの拡充やネットワーク化により、父親を中心とした会が、家庭と地域を結ぶ新たな家庭教育支援の大きな力となっていただくことを、期待しているところであります。 (2) 次に、この事業の「おやじの会」の拡充と事業の継続についてのご質問でございますが、ただ今、申し上げましたフォーラムに県内の各市町村にご参加いただき、その成果を地域で活かしていただくとともに、これら二つの事業の成果を、インターネットや報告書などで、県内に幅広く情報提供してまいりたいと考えております。 事業の継続につきましては、新規事業でもありますので、まずは事業成果を上げることに努力をし、さらに、本事業の成果を踏まえ、こうした会の拡充をめざすとともに、「父親の家庭教育参加」の精神を、家庭教育支援における諸事業に取り組み、反映をさせてまいりたいと考えております。 (3) 次に、関連部局との連携についてでありますが、家庭や地域の教育力低下が指摘されている今日、「子どもは社会の宝」として、それぞれの関係部局が、互いに連携協力いたしていることろでございますが、今回の「父親を考えるフォーラム」に、お示しにもありましたような関係部局の参画をうるなど、より一層緊密な連携をとりつつ、事業の執行に努めてまいりたいと考えております。 |