●一般質問●

平成19年6月

平成19年6月定例県議会一般質問

(神戸議員)

「DV問題について」

通告に従いまして、まず、配偶者からの暴力、いわゆるDVの問題についてお尋ねをいたします。

最近、新聞、テレビのニュースなどを見ておりますと、家庭内における事件が多く、また凶悪な事件も多いように感じています。そんな中、DV問題が関係する事件も目に付くようになっております。

最近の大きな事件ですと、今年の1月に東京都渋谷区の外資系金融会社社員が妻に殺害され切断遺体で見つかった事件がございましたが、これは逮捕された妻が常日頃「馬乗りで殴られた」などの夫から受けたDV被害が引き金となった事件であったと報道されておりました。

また、先月、長久手町において、元妻を人質として、夫が自宅に立てこもり、駆けつけた愛知署長久手交番の巡査部長、長男、次女が拳銃で撃たれ、更には、巡査部長を救出の際、若い警部が撃たれ死亡するといった大事件が発生したが、これも容疑者である夫の妻へのDVの問題がありました。

報道によれば、被害にあった元妻は、平成17年11月に夫からの暴力(DV)があったと警察署を通じて県の配偶者暴力相談支援センターに相談し、一時保護された後、自立に向けて就労しながらシェルターで生活していましたが、夫からの復縁話のこじれが事件につながったようであります。

DV被害者を加害者からの暴力から守るため、シェルターへ保護している最中に起こった事件でありました。これはあくまで結果論ですが、元妻を保護している段階で、別の対応がされていたら、こんな悲惨な事件につながらなかったのでは、と考えると、改めてDV問題の危険さや怖さ、また対応の難しさを知らされた事件でありました。

ご承知のように、DV被害への対策は、平成13年度に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(いわゆる「DV防止法」)が公布され本格的な取り組みが始まりました。

県の配偶者暴力相談支援センターである愛知県女性相談センターが取り扱ったDV被害の相談状況によりますと、DV防止法が全面施行された平成14年度の夫等の暴力による相談件数は1,231件であったのに対し平成18年度は1,394件となっています。また、DVを主な理由として一時保護を行った実人員は平成14年度143人であったものが平成18年度は195人となり、裁判所へ提出した保護命令に係る書面の件数では、平成14年度29件であったものが平成18年度は46件となっているなど統計資料からもDVの増加は明らかになっています。

また、これはセンターで取り扱った状況だけでありまして、他の民間支援団体での相談も相当数あるものと思われます。

 このように、DV被害の問題は年々増加してきており、また、DV被害者にとってはより深刻な状況になりつつあることから、国及び自治体の今後のいっそうの対応が求められるところであります。

特に、平成16年度の改正により、国及び地方公共団体は、DV被害の防止及び適切な被害者保護に関しての責務を有することが規定され、各都道府県がDV防止等基本計画を策定し配偶者からの暴力の防止及び被害者保護のための施策を実施して行くこととされました。

本県におきましても、平成17年12月にDV防止等基本計画が策定され、相談体制の充実、被害者保護の充実及び自立支援の充実など、7つの基本目標を掲げ、各種の施策が行われております。しかし、これらの施策が各市町村に行き渡り、被害者支援がきちんと行われているかどうか、特に今回の事件から、疑問に思うことがありました。

そこでお伺いいたします。

第1点目は、今回の長久手での事件では、DV被害者がシェルターで保護されている中での事件でありますが、DV被害者の安全の確保という面から、今回の事件を踏まえて、今後の対応を検討する必要があると考えますが、県当局のお考えをお聞かせください。

第2点目は、市町村への支援について、を伺います。県のDV防止等基本計画では、市町村や地域での取り組みに対して支援をしていくことが特徴的な取り組みであるとしておりますが、現在までに県は市町村に対して具体的にどのような支援を行っているのか、お聞かせください。

第3点目は、愛知県のDV防止等基本計画は、平成19年度までの計画期間とされており、平成20年度からの計画は新たに策定することとなります。新たな計画は、これまでの取組状況や、今回の事件を踏まえたものとすべきであると考えられます。県は、この計画をどのようなものにしていくお考えなのかお伺いします。

(健康福祉部長)

 DV問題につきまして3点のご質問をいただきました。

まず長久手町での事件を踏まえたDV被害者の安全確保に向けての今後の対応についてでございます。

今回の事件は、女性相談センターがDV被害者をシェルターに保護し、自立に向けた支援を行っていた最中での出来事でございましたが、女性相談センターでは、日頃から保護した被害者が加害者と遭遇しないためにはどのようにすべきかを話し合い、危険が見込まれる場合には、本人に十分注意喚起するなどの対応をしていたところでございます。

そうした中で、今回の事件が発生し、誠に遺憾に存じております。

今後の対応でございますが、被害者本人とシェルター職員、女性相談センター職員が、加害者からの危険性について共通の認識を持つため、被害者の危険度を数段階に区分する「危険度アセスメント表」といったようなものの作成を早急に検討し、外出の際には危険度によって職員等が同行するといった対応を考えてまいります。

また、女性相談センターを中心として、シェルター職員など今回のケースに関わった関係機関にお集まりいただき、それぞれの機関が今回事件の際とった対応について検証を行い、今後のDV被害者の一層の安全確保につなげてまいりたいと考えております。

次に市町村への支援についてのお尋ねでございます。

DV被害者に対する相談・支援体制につきましては、県の女性相談センターだけでなく、最も身近な行政機関であります市町村での取り組みが重要であります。

県といたしましては、市町村におけるDVの相談窓口がどこかを明確にしていただくとともに、配偶者暴力相談支援センターの設置を検討していただくよう働きかけを行っているところでございまして、そうした点を市町村職員の皆さんに十分理解していただくため、昨年度、DV被害者を支援しておりますNPO法人のご協力によりまして、市町村職員への研修を実施いたしました。

この研修では、市町村の担当職員及び役職者130名の方に、県女性相談センターが作成いたしました市町村向けの「事例によるDV相談マニュアル」といったテキストなどを活用したしまして、DVに関する意識の向上、相談業務のノウハウなどについて学んでいただきました。

こうした研修は、今年度も予定しておりまして、今後も市町村におけるDV被害者の相談・支援体制の充実に向けまして一層の支援をしてまいりたいと考えております。

最後に、本県の「DV防止等基本計画」の見直しについてでございます。

DV防止等基本計画は、DV防止法に基づき策定いたしておりますが、DV防止法では、法施行後も新たな問題が生じることが予想されますことから、3年を目途に検討が加えられるべきであると規定されておりまして、今年度にその改正が予定されております。

本県の基本計画につきましても同様の趣旨によりまして平成19年度までが計画期間となっておりますことから、今年度、有識者や民間支援団体などで構成いたします「検討会議」を設置いたしまして、計画の見直しを行い、新たな計画の策定を行う予定といたしております。

 この検討会議におきましては、現行計画に盛り込まれておりますDV対策を検証いたしますとともに、DV防止法の改正案に、新たに市町村に対しDV防止等基本計画の策定や、配偶者暴力相談支援センターの設置が努力義務となるなどのことが盛り込まれておりますことから、市町村での主体的な取り組みについて検討してまいります。また、長久手の今回事件での検証を踏まえた被害者の安全確保対策などにつきましても検討を進めまして、DV被害者の保護と自立支援の充実が一層図られるような計画としてまいりたいと考えております。

(神戸議員)

ただいまそれぞれに答弁をいただきました。是非積極的にいろいろな事業を推進していただきたいと思います

私からは1点だけ要望させていただきます。

今回の長久手の事件はある一組の夫婦のDVから始まって、周囲の人々を巻き込み全国にニュースが流れ、ついには犠牲者を出すという最悪の結果となってしまいました。

警察の対処について意見もさまざまではありましたけど、まず、DVの段階で防ぐことが出来なかったのかと悔やまれてなりません。

さきほども述べましたように、DV等基本計画は17年12月に策定されています。

それはNPOや関連諸団体及び県当局の皆様の努力で策定されました。

この基本計画は全国で第3位という高い評価を愛知県はいただいたとお聞きをしております。せっかく立派な計画がありながら、今回の事件にそれが活かされていたのかどうか、もしそうでなければ、しっかりと反省し次回に活かしていかなければ意味はありません。

特にここ最近妻が夫を殺害する事件が増えています。相手を殺したいほど憎むということは、我々には想像できないほどのDVを受けていると思われます。

例えば、隣の中野議員が私を殴ったとします。これは、即犯罪になります。ところが夫婦だとか恋人だとかそうなると例え殴られても犯罪にならないわけです。ここにすごく問題があると思っています。

手をあげた段階でそれは犯罪だという認識をもっと加害者に気づかせていく、犯罪として扱うなど、加害者に対しての積極的な働きかけをしていかなければ、さらに犠牲者が増えるのではないかと懸念をいたします。

20年度から新たに基本計画が策定されると伺いました。被害者を救うことはもちろんですが、加害者に対するもっと積極的な働きかけができるようさらに踏み込んだ基本計画を策定していただくことを強く要望して終わります。

次に、「あいち・出会いと体験の道場」(中学生の職場体験)について質問をいたします。

教育問題については、ここ数年来、国の教育再生会議をはじめ、さまざまな方面から、学力の向上、いじめや不登校の解消、特別支援教育の充実など色々な課題が取り上げられ、議論がなされております。これらの課題はいずれも重要ではありますが、人づくりの原点という面では、子どもたちの豊かな人間性や社会性をはぐくんでいくことが最も重要なことではないかと思います。

 こうした観点から、今の子どもたちの状況を見てみますと、核家族化や少子化の進行によって、兄弟の面倒を見る経験や、おじいさん、おばあさんと関わりをもつことが少なくなっています。また、地縁的な結びつきが薄くなり、地域社会の中で年齢の違う子と一緒に遊ぶことや、大人とともにいろいろな体験をすることが本当に少なくなっています。規範意識や思いやりの心が弱くなっているなど、子どもたちをめぐる問題には、地域社会でのさまざまな実体験の不足が大きく関わっていると思います。家庭や地域社会における教育機能が弱くなっている状況を考えると、学校・家庭・地域が協働して、子どもたちの豊かな人間性や社会性をはぐくむための取組を積極的に進めていくことが強く求められています。

そうした中、愛知県では、人づくりの重点事業として、中学生が職場体験を行う「あいち・出会いと体験の道場」が平成18年度から実施されています。この事業は、大人へと心身ともに大きく成長する時期にある中学生に、地域の事業所での体験や大人との出会いを通して、働くことの大切さや大変さを実感してもらうとともに、あいさつ、言葉づかい、責任感、協調性など社会の一員としての自覚を身に付けてもらうことを狙いとしたものであり、大変有意義な事業であると思います。平成18年度は、県内の32市町村の151中学校、およそ2万5千人の中学生が参加し、地域のさまざまな事業所で職場体験が行われています。

春日井市の中学生も職場体験で様々な事業所に出かけています。例えば、病院、老人ホーム、環境センター、郵便局、自衛隊、農協、各種スーパーや小売店、レストラン、幼稚園や保育園等々、多くの職場があります。

実は私の幼稚園でも受け入れており、18年度は2つの中学校から10名ずつが参加しました。始めは子どもたちにどうやって接したら良いか、どの中学生もとまどっていますが、園児たちからの働きかけの方が積極的で、すぐに慣れて遊び始めます。1日の活動は自由遊びから始まり、園庭に出て遊具で遊んだり、ドッジボールをしたりして過ごします。その後各クラスに入り、丁度その時期は作品展の準備でしたので、園児たちが廃品を使っていろいろな作品を作る様子を見学しながら、教師の手伝いをしてくれました。給食も一緒に食べます。とても小さなお弁当箱に歓声をあげ、園児たちと喜んで食べていました。あるクラスでは、一人の子どもの体調が悪く吐いてしまい、その嘔吐物を教師が片付けるのを目の前で見て、仕事の大変さを実感した生徒もいたようです。帰りはそれぞれ送迎やバスコースに分かれて、違う年齢の子どもたちが一緒に遊ぶ縦割り保育になり、また園児たちと遊びます。園児が帰ると教室やトイレ、廊下の掃除等を手伝って1日が終わります。期間はわずかでしたが、どの中学生も笑顔で帰っていきました。この体験学習を通じて、中学生が何を感じたのか、少しご紹介したいと思います。

一人目は女子生徒の感想です。

「他人の子どもに接することの難しさ、1日中働くことの大変さ、体力の必要性を身をもって学びました。また小さい子と遊ぶことの楽しさや、子どものことを考えて動くことのおもしろさを学びました。幼稚園の子は思っていたよりも背が小さいので、目線の高さに合わせたほうが良いということを知りました。」

次に男子生徒です。

「幼稚園の職場体験を通して気付いたこと、それはどの仕事でも言えることだと思いますが、仕事をするということはそんなに簡単ではない、甘くないということが身に染みてよくわかりました。けれどとても楽しかったです。小さい子と遊ぶことが少し苦手だった僕が、どんな子でも遊べるようになったのは、この体験学習があったからだと思っています。」

 最後に、もう一人女子生徒の感想を紹介します。

「初めてクラスに入ったときは何をしたらいいのかわからなくて、とても戸惑ったけれど、担任の先生が優しく声をかけてくださったので、ほっとしました。『体験してみてどうだった?』と聞かれて、『楽しかったけど疲れました。』と言ったら、『この仕事は毎日楽しくて飽きないよ。』とおっしゃっていました。だから私も自分にとって楽しいと感じる仕事に就きたいと思いました。」

 全ての中学生の感想文からは、活き活きとした感動が伝わってきます。年齢の違う子どもと遊ぶことに戸惑いを感じながらも、すぐに仲良くなり遊ぶことが出来たこと、仕事の厳しさ、大変さを肌で感じることができたこと、中には、すでに幼稚園の先生になりたいと将来を決めていた中学生もいて、目の前で働く人たちを見ること、体験することで心に大きな変化をもたらしたことがわかります。

実は中学生の中には卒園児もおり、体験学習としてわが園を選んでくれたことが本当にうれしく、10年後もこうして成長を見守ることができ、我々職員も素晴らしい感動をいただいたと同時に、教師の言動・行動が全て子どもたちの心に大きな影響を与えると気付き、改めて教育現場の重要性を認識いたしました。

初めて受け入れる時には、どの事業所もそうだと思いますが、様々な心配がありました。事故や怪我をさせないようにという配慮や、授業の一環であることから、責任をもって学習をさせなければいけないというプレッシャーもあります。

 しかし職場体験が終わった後、一人一人の体験学習の記録を読み、また校長先生から「予想を上回る成果を上げた」とのお手紙をいただき、中学生を受け入れることによって、教育の一環の担い手として、少しでもお手伝いができたことをうれしく思いました。また、子どもたちの豊かな人間性や社会性を育むために、この職場体験は本当に必要なことであると改めて実感したしだいです。

そこでお伺いいたします。知事のマニフェストでは、地域全体で子どもたちを育むための具体の取組みとして、この「あいち・出会いと体験の道場」を平成20年度までにすべての中学校で実施するとの目標が盛り込まれており、私はその実現を大いに期待しています。そのためには、学校、家庭、地域など県民一人ひとりがこの事業の意義や成果を理解し、力を合わせて取り組んでいくことが必要であると思います。

そこでお伺いします。第1点目として、平成18年度からスタートした「あいち・出会いと体験の道場」の成果と課題について、どのように認識しているのか、ご所見をお伺いいたします。

第1点目として、本年度は、実施規模が大きく拡大すると聞いておりますが、中学生を受け入れていただく事業所の確保など、円滑な事業推進に向けて、どのように取り組んでいかれるのか、お伺いいたします。

(県民生活部長答弁)

県としては、活動を実施した各中学校からの報告内容はもとより、現地視察の実施や活動発表会の開催を通じて、現場の生の声をお聞きしています。さらに、校長先生やPTA役員の方、生徒を受け入れていただいた事業所の方、職場体験を研究されている学識者の方に事業評価委員になっていただき、事業評価を行うなど、さまざまな取組によりまして、事業の成果や課題の把握に努めております。

これらの取組を通じて把握いたしました意見によりますと、事業の成果といたしましては、神戸議員からご紹介のありました意見を含めまして、「あいさつや言葉づかいの大切さを教えられた」、「働いて収入を得るのはとても大変だと実感した」といった中学生の率直な意見のほか、「親子の会話が確実に増えた」といった保護者の意見、「仕事の大変さや面白さを中学生にわかってもらえた」といった事業所の意見、さらには「地域の方や事業所の方と話をする機会が多くなった」といった教師の意見などが数多く出されています。中学生の社会性の育成はもとより、学校と地域との連携、家庭での親子のコミュニケーションの促進など、さまざまな面で大きな成果が得られたものと認識しております。

一方、課題といたしましては、「職場体験のための時間の確保が大変である」、「受け入れてもらえる事業所の確保が難しい」などの意見がありました。

本年度は、昨年度に比べて実施規模が大きく拡大し、265中学校、約4万2千人の中学生が職場体験を実施する見込みであります。

 このため、県としては、まず職場体験の時間確保に関する学校現場の取組などについて情報提供を行うため、事業を実施する全中学校、市町村教育委員会を対象とした説明会を本年4月に開催するとともに、昨年度に事業実施した中学校の取組内容をまとめた実践活動事例集を作成し、配布しております。

 また、大きな課題である受入協力事業所の確保を図るため、事業所向け啓発チラシの作成や受入協力事業所に関する市町村別データベースの作成を行っています。

さらには、事業所関係団体など36団体で構成する「あいち・出会いと体験の道場」推進協議会(会長は愛知県知事)を本年6月に開催し、事業の趣旨や県の取組についての説明を行うとともに、中学生の職場体験の受け入れについての協力をお願いしました。

昨年度の成果と課題を十分に踏まえて、より一層効果的な形で事業が推進できるよう積極的に取り組んでまいります。

(知事答弁)

 昨年度は、初年度として順調にこの事業のスタート切ることが出来たと思っている。昨年夏に現場を見る機会があり、1つは建設会社でもう1つは保育園であったが、子どもたちが大人に混じって一生懸命に仕事をしている姿を目にして、やはり、「現場は最高の教室」だと実感したところである。その視察の折に地元のケーブルテレビが取材にきていたが、そのケーブルテレビで取材する仕事を体験していた中学生もいて、いろんな子ども達の姿を見ることができた。多くの皆様方にご協力をいただいたことを改めて御礼を申しあげたい。

 
この事業を一層広げていこうと思いますと、何と言いましても事業所の理解とご支援が必要である。そこで、こうした事業所の社会的貢献を広く県民の皆様方に理解していただくために、県としてこうした事業所を顕彰する、間伐材を利用した認定証を作り、お贈りすることや、また事業所名を名簿にして公表するなど、様々な方策を考えている。

  今後とも、学校や地域の皆様方と力をあわせて、少しでもこの事業が充実するよう努力していきたい。

<神戸議員>

 最後に、森林の整備・保全についてお尋ねします。

 「木々は緑の中、朝もやに包まれ、鳥たちは翼休めて、渡る時の風を待つ」この美しい風景を歌った詩は、2005年に開催された「愛・地球博」のテーマソング、「ココロツタエ」のワンフレーズです。この歌は現代人が忘れてしまった「癒し」をテーマに作られた歌でした。毎日の生活の中で、私たちは自然の森や林から「癒し」も含めて、様々な恩恵を受けております。

私の地元春日井市にも、少し足を伸ばせば東海自然歩道の通じる森林があり、天気の良い日に緑のシャワーを浴びながらの山歩きは、身も心もリフレッシュさせてくれ、明日への活力を養ってくれます。森林にはこうした「癒し」の場を提供する機能の他にも、水源の涵養、自然環境の保全、地球温暖化の防止と言った公益的かつ多面的な機能があります。もちろん、究極のリサイクル素材である木材の生産という経済的な機能も担っております。

こうした森林の県内の状況をみてみると、県土の43%が森林でありますが、そのなかの民有林のうち、木材生産を目的に人の手で造成された人工林の割合は64%と、全国第3位の高い数値となっています。

これらの人工林は、間伐などの手入れが必要なのは言うまでもありません。しかし、木材価格の低迷による採算性の悪化により、これまで森林整備を担ってきた林業活動が停滞しており、その管理が滞っているのが現状です。また、雑木林などが中心の都市や集落に近い里山林では、生活様式の変化から薪や炭などの利用もなくなり、放置されている森林が増加しています。

さて、県においては、林業の振興を通じ、森林整備を推進するため、間伐支援や高性能林業機械の導入による出材コストの縮減などの対策に積極的に取り組んでおられるほか、様々な形での森林整備の方策を検討していただいていることは十分承知しておりますが、森林の整備・保全に当たっては、森林所有者や林業関係者の方々だけでなく、森林の恩恵を受けている私たち一人ひとりが、もっと関心を持ち、積極的に関与していくことが重要ではないでしょうか。

幸い、こうした森林への関心は、県民の方々のニーズの多様化が進んでおり、豊かさ、健康、環境、ゆとり、安心、安全、生き甲斐等の価値観への変化を背景に、近年とみに高まりを見せております。NPOやボランティア団体などによる森林ボランティア活動を中心に、森林の整備・保全に直接参加しようとする動きが活発化しているのもその所以であります。

このような状況の中、愛知県では平成16年度から、NPOなどの非営利団体が森林整備などを行う活動場所として、県有林を提供する「県有林野の利活用」事業を始めており、多くの団体が、森林整備活動や学習活動を実施していると聞いております。

それら団体の一つであります日本山岳会東海支部には、「猿投の森づくりの会」があり、この制度により猿投山をフィールドに森林の整備活動や環境学習活動を展開しております。活動の一部をご紹介したいと思います。

まず、定例作業計画として、毎月第2火曜日と第4土曜日に猿投の森に入り、各地区に分けて、間伐枝打ちや林道の除草及び斜路・流出土の補修を行ったり、協定地区の調査や各水系の水質調査・昆虫動物の調査をしたり、活発に作業を展開されてみえます。

私も実際に猿投の森を歩いてきましたが、整備されている地域とそうでない地域は、一目瞭然その違いが明確にわかります。間伐作業を行っていない地域は、過密に木が生息し、どの木も健全に発育できず、光の入らない林床には草も生えません。ところが過密林を伐採し、枝打ちを進めていくと、太陽の光が林床に届くようになり、落葉広葉樹の芽が出て、若葉の黄緑が鮮やかに輝き、森が蘇っているのです。これらの整備活動によって、今まで生息していなかった、ギフチョウが葉の裏に卵を産み付けるというスズカカンアオイが生え、実際にギフチョウも発見されたと言った成果を上げております。

また、この森づくりの会は管理作業だけでなく、学術調査を兼ねた登山の実績を活かし、調査の記録を残すことにも目標を設定し、森に生息する160種以上の樹木の調査結果を、2006年「猿投の森のあらまし」という冊子にまとめ発行いたしました。

また催事や研修も開催され、19年度には森林力養成講座や一般市民を対象とした自然観察会の計画があり、秋には特別プロジェクトとして森のコンサートを開催し、幼稚園児等の体験活動の受入もあり、森づくりの大切さを積極的に訴えていくとのことです。私の幼稚園でも親子で参加を呼びかけ、森の木を使ってクラフト作りをしたり、森を探検したりして、大自然に触れることにより、環境の大切さを親子一緒に肌で感じてもらう計画を立てています。

このような作業・事業は、多くの時間や人手が必要になり、根気良く継続させていくことが大切です。そのために、私は常々こうしたNPOを始め、様々な主体に森林の整備・保全活動を呼びかけ、また活動に参加しやすい環境を整備することが、行政に求められると考えておりました。

NPOなどが地域と連携して森林の整備・保全活動に取り組むことは、森づくりを社会全体で支えていくという認識を高め、森林整備の重要性や森林からの恩恵について、県民の理解を深めるうえで有効であるとともに、地域の活性化にもつながるものです。また、都市部のNPOなどの参加は、都市と山村の共生・交流といった観点からも重要であると思います。

先般、県が、社会貢献を目指す企業の活動フィールドとして、県有林を提供する「企業の森づくり」事業を新たに始め、参加企業を募集するとの新聞報道に接しました。近年、企業の社会的責任(CSR)に対する関心が高まるにつれ、森林の整備・保全活動を通じて、社会貢献活動を展開したいとする企業の潜在的ニーズには高いものがあると聞いております。NPOなど非営利の団体に加えて、資金や多くの人の手が集まる企業が参加されれば、森林整備主体のすそ野がさらに広がり、森づくりが活性化されるものと考えます。

そこで、以下二点についてお伺いいたします。

まず一点目ですが、県有林は県内に多くの森林を所有していると聞いておりますが、既に県有林内で活動されているNPOなど非営利の団体の増加も十分考えられますし、それに加え、新たに企業が参入される訳ですが、それらの活動範囲をどのような考え方で配分されるのか、お伺いします。

第二点目は、森づくりを最先端で行うのは人であり、森作り=人づくりであります。企業やNPOなどによる森林整備・保全活動を促進していくためには、県有林のような活動フィールドを提供することも大切でありますが、これらの活動に携わる人づくりも重要であります。県としてその人づくりについて、どのように取り組んでいくのか、お伺いします。

(農林基盤担当局長)

 森林の整備・保全についてのお尋ねのうち、県有林におけるNPOや企業の森林整備活動の範囲についてのお尋ねでございます。

  企業やNPOなどが地域と連携して森林の整備・保全活動に取り組んでいただくことは、森林を社会全体で支えていくという機運を醸成し、森林整備の重要性や森林からの様々な恩恵について理解を深めるうえでも大変有意義なことと考えております。

  このため、先駆的な取り組みとして、県内に約6,000ヘクタールあります県有林のうち、公益的機能の発揮を主な目的として保持している県有林約3,000ヘクタールをフィールドとして予定しているところでございます。現在は、そのうち約50ヘクタールで、11のNPO団体の方々により、森の手入れや環境学習活動に取り組んでいただいているところでございます。

  さらに、最近では、間伐などの森林整備を通じた社会貢献活動を展開したいとする企業が多く見られますことから、今回、その活動を受け入れるフィールドとして、県有林を提供することといたしました。

 この「企業の森づくり」活動は、5ヘクタール程の森林整備などを実施していただくもので、今後新たに、こうした活動を希望される企業やNPO団体が増加してまいりましても、十分に対応できるものと考えております。

 県といたしましては、企業やNPOなどの活動方針や活動内容などをお伺いしつつ、その力を十分に発揮していただけるよう、適切なフィールドを提供してまいりたいと考えております。

 次に、森林整備・保全活動に携わる人づくりについてのお尋ねでございます。

 県では、平成12年度から、県民参加の森づくり事業などにより、県民の方を対象に森の手入れや森林体験学習を始めとする指導者研修を実施し、森林への理解促進と人材育成に取り組んできたところでございます。

 また、昨年9月には、森林や里山に関する学習と交流の拠点施設として愛知万博の瀬戸愛知県館を改修いたしました「あいち海上の森センター」をオープンし、指導者を育てるため講習内容の充実と養成人員の拡大に努めているところでございます。

 さらに、今年度から新たな取り組みとして、博覧会の剰余金を活用した、より高度な知識と技術を有し、人と自然が共生する持続可能な社会作りに貢献していただく人材を育成する「あいち海上の森大学」の開講をこの秋に予定をしており、企業やNPOなどの多様な主体から参加を募り、将来にわたり森林整備・保全活動の一翼を担っていただく人材の育成にも取り組んでまいります。