パソコン通信によるネットワークづくりとその利用

私立同朋高等学校 河邊 憲二

1993.11.19 第25回愛知県公・私立高等学校
視聴覚教育研究大会パソコン部会発表

目次
  1. パソコン利用の新しい流れ
  2. パソコン通信とは何か
  3. 教育的利用という側面で考えたパソコン通信
  4. パソコン通信によるネットワークづくり
1.パソコン利用の新しい流れ
 最近新しく発売されるパソコンはほとんど32ビット機が主流となり、その性能は格段とアップしてきています。それにともない、パソコン利用の方法に二つの新しい流れがあります。ひとつはマルチメディア化、そしてもうひとつはネットワーク化です。さらに、このふたつの流れは、マルチメディアネットワークとして、ひとつの大きな流れへ統合されつつあります。マルチメディアに関しては、今年WINDOWS3.1が発売となり、MS−DOSだけでは扱いにくかったビデオやサウンドを比較的容易に利用できる環境が、整いつつあります。マルチメディア対応の教材ソフトも増え、授業での利用も可能になってきました。一方、ネットワークについては、相変わらず教室環境の中のLANにとどまっている場合が多く、しかもネットワークの教育への利用となると、まだこれからというところがほとんどではないでしょうか。そこで今回は、ネットワークの例としてパソコン通信をとりあげ、その教育的利用について考えてみたいと思います。

2.パソコン通信とは何か
 パソコンのRS−232C端子にモデムを接続し、電話回線などを通じてホスト局のコンピュータに接続して情報の交換をおこなうことを、通常パソコン通信と呼んでいます。現在では商用のネットであるNIFTY、PCVANといった大規模なネットワークから、草の根BBSと呼ばれる個人運営の小規模局までたくさんのネットワークがあり、そこで交換される情報もあらゆる分野に及んでいます。具体的にパソコン通信をはじめるには、次の準備が必要です。
[ハードウェアとソフトウェア]
 1.パソコンまたはワープロ  2.モデム  3.電話回線  4.通信ソフト
また、通常はどこかのネットワークへ加入して利用することになりますので、入会手続きをして、IDを取得する必要があります。これには、有料のネットと無料のネットがあります。利用できるサービスには多少の違いがありますが、基本的なサービスとしては次のようなものがあります。
[パソコン通信で利用できるサービス]
 1.電子メール  2.電子掲示板(BBS)  3.ソフトウェアライブラリ  4.チャット
 5.その他 ・データベース ・ショッピング ・FAX配信 ・各種情報サービス

3.教育的利用という側面で考えたパソコン通信
 パソコン通信の教育的利用を考えるとき、次のようなケースが考えられます。
[情報交換]  パソコン通信を利用して、生徒同士の国際的な電子メールの交換を通じ、異文化理解の教育と国際交流をめざした活動がおこなわれています。これは、主にパソコン通信の電子メールやBBSの機能を利用したものです。国内の学校間でも、大手の商用ネットなどを利用して同様な交流をおこなっているところもあります。互いに情報を交換する中で文化や自然の違いを理解することができ、空間的な距離を越える情報交換の手段として、パソコン通信は強力な方法のひとつです。もちろん教師間での情報交換の手段としても有効であるばかりでなく、生徒と教師、生徒と不特定多数との交流も可能です。
[情報収集]  パソコン通信で利用できるデータベースには、様々なものがあります。これを利用して学習に必要な情報を収集し、そこから問題を見いだして解決するということが可能です。これがいわゆる情報処理の能力ということで、いろいろな教科で利用することが可能です。パソコン通信の大手ネットには、質の高い膨大なデータベースがあり、テーマにより選択利用することができます。
[ソフトウェアの利用]  パソコン通信ではだいたい次の5種類のタイプのソフトウェアが、ライブラリなどに登録されています。
 1.PDS 2.フリーウェア 3.シェアウェア 4.商品デモサンプル 5.商品ソフト
このうち1.2.は通常コピー配布の許されるもので、クラス分のソフトを購入する予算がない場合など、PDSやフリーウェアを利用すると便利です。教材ソフトやドリルソフトなどから成績処理など、様々な優れたソフトやデータが入手可能です。

4.パソコン通信によるネットワークづくり
 ネットワークを作るためには次のような方法があります。
  1.大手ネットを利用する 2.独自でホスト局を開設する
通常、ネットワークは個人で加入する形のものが多く、使用料等も個人が負担することになります。したがって授業ではなかなか利用しにくい面がありますが、大規模で会員数の多いネットではそれだけ広範囲の情報交換が可能です。一方独自のホスト局をたち上げてネットワークを構築すれば、自由に使えるネットワークづくりが可能となります。目的と内容を考えて、両者をうまく利用できる環境を作るのがベストだと思います。
 愛知県私学教育工学研究会(愛私ETS)では、8月よりETS−NETという名称で独自のネットワークづくりを始めました。初心者が気軽に、練習目的や研修などで利用でき、また情報交換などにも使えるネットを作ってしまおうということで、現在1回線の夜間のみで試験運用中です。いずれは24時間運用にしたいと思いますが、電子メール、BBS、ファイルライブラリとひと通りの機能はそろっています。このネットを基礎に、ネットワークづくりのノウハウや教育的利用について、これから研究をすすめていきたいと考えています。





K.KAWABE <kawabe@doho.ac.jp>
Created: Jan.1,1996, Updated: Jan.1,1996