インターネットWWWを使う授業の試み
WINDOWSからのPPP接続を使って

私立同朋高等学校 河邊 憲二

1995.08.10-11 第27回学習工学セミナー 高校部会発表

今年度より通産省の100校プロジェクトがスターとして、すでに積極的に
インターネットへ情報発信をはじめている学校もある。また、電子メールを
使った外国の学校とのコミュニケーションを授業に取り入れている学校もあ
る。このようにインターネットを積極的に教育現場に導入し活用していこう
という動きは、最近とくに活発になってきている。その様子がニュースなど
で報道されたり、テレビ番組の中でインターネットを実際に利用した実験放
送などもおこなわれるようになってきている。東海地区では東海schoolnet
研究会が発足し、インターネットの教育利用について、東海インターネット
ワーク協議会(TIC)
の支援のもと、研究会開催などの交流をおこなって
いる。今回はこのTICが運営するtcp−ipのダイヤルアップIP接続
のPPP接続を利用して、学校の電話回線からインターネットにパソコンを
接続し、Windows上のMosaicを使って、WWWで修学旅行先の
沖縄について調べた授業実践を報告する。               
目次
  1. インターネットへの接続環境
  2. 授業のねらいと実際の展開
  3. 今後の課題
  4. 生徒アンケートの結果
  5. 参考資料
1 インターネットへの接続環境
 本校は計算実習室に生徒用パソコンが設置されているが、LANは整備されておらず、したがってインターネットへの接続は、パソコン1台をモデムを通じて電話回線で接続、その画面出力を液晶プロジェクタでスクリーンに投影して見せるという接続環境である。 なお、生徒用のパソコンではWindowsが利用できるようになっていないので、今回はハード、ソフトとも個人のものを持ち込んで授業をおこなった。
・ハード環境
 NEC PC−9801NS/A(メモリ16MB、i486DX4-75Mz)
 MELCOマルチメディアBOX NMB-S
 SUNTAC MS288AF
 NEC PC−PR101/J110
 NEC 液晶プロジェクタ
・ソフト環境
 MS−DOS6.2+Windows3.1
 InternetOffice3.0aJ
 NEC MosaicView1.0
・その他
 アナログ公衆回線のPPP接続 tcp−ipダイヤルアップ接続サービス
2 授業のねらいと実際の展開
(1)授業のねらい
  インターネットのネットワーク機能で最近注目されている情報検索システムのひとつにWWWがある。WWWを利用させることで、インターネットについての体験的な理解を促すとともに、その利用方法を習得させるのが主なねらいである。その際、情報検索の実例として、本校で実施している沖縄修学旅行を題材として、インターネットから沖縄に関する情報を引き出して事前の学習資料を得る。このテーマを選択した理由は、授業を実施したクラスが2年生普 通科で、2学期に修学旅行をひかえて事前学習がスタートする時期であったことと、沖縄に関する国内のサーバが日本語による閲覧が可能なためである。
(2)授業展開
  授業をおこなう前に、ソフトの設定をおこなっておく。とくにダイヤルアップは自動でできるようにし、また、あらかじめ琉球大学のサーバが日本語で閲覧できるように、Mosaicのホットリストへ登録をしておく。こうしておけば、生徒はマウスをクリックするだけで、ダイヤルアップ接続からサーバへたどり着ける。以上の準備をした上で、次のような手順で授業をおこなった。
  1.Windowsを起動しスクリーンに画面を出力
  2.インターネットについて簡単に説明
  3.沖縄修学旅行の事前学習としての本時の目的を説明
  4.パソコン経験のない生徒をアシスタントに選び以後のマウス操作をさせる
  5.ダイヤルアップを実行させる
  6.Mosaicを起動させホットリストで琉球大学サーバへ接続させる
  7.画面を見せながら操作方法を説明
  8.沖縄に関しての質問、知りたい情報など生徒の反応に応じて関連する情報の検索をさせていく
   沖縄の自然や歴史だけでなく基地の問題や沖縄戦などの平和教育にもふれる
  9.表示された情報をもとに実際の修学旅行がどのように実施されるかなどの補足説明を加える
  10.資料性の高いものはプリント出力させ事後の利用をはかる
  11.最後に修学旅行に向けての今後の準備とWWWに関する簡単な解説をして終了
     インターネットに関する簡単なアンケートを実施し回線を切断
(3)授業を進める上での留意点
  まず、電話回線でインターネットが簡単に利用できるということを経験させることが大切である。ひとつの情報メディアとして、生徒がより身近に利用を考えるようになれば、そこからさまざまなインターネットを利用した教育活動が生まれてくる。今回のように一斉授業ではなく、生徒が何かを調べたいと思ったときの、ひとつの情報検索手段として、インターネットが利用されるようになるとよい。したがって、教師はガイド役に徹して、補足やアドバイスを加える程度とし、その場面での生徒の関心に応じたサーバへ移動できるように支援することが、自発的な学習活動につながる。今回取り上げたようなツアーガイド的な利用では、あくまでも実際の修学旅行体験を通じた現場での実体験が大切なので、情報を操作するだけの非現実的なシミュレーションに終わらないよう注意すべきである。また、操作を生徒自身にさせることで、参加意識をもたせることが必要である。できればグループごとにインターネットに接続できる環境が欲しいところである。また、さらに進んで、電子メールで質問を送ったりするといった双方向の利用ができるので、その点についてもふれ利用を促すとよい。そうした活動を通じて、情報の受け手から、生徒自身が情報の発信者としての活動をはじめることができるようになる。

3 今後の課題
 やはり、LANでインターネットへ専用線接続することが、環境としてはベストである。この点はシステム管理と経費の問題で現在のところ本校では実現が難しいのが現状である。また、海外のサーバの利用では英語情報が中心になるので、この点がどうしてもネックとなるが、国際化に向けては避けられない。

4 生徒アンケートの結果
 この授業の後簡単なアンケートを実施した。以下に紹介する。対象クラスは2年生普通科2クラスの生徒67名である。

(1)インターネットということばを聞いたことがあるか?
  ・ある 16.4%       ・ない 83.6%

(2)今日のインターネットを使った授業はどうだったか?
  ・おもしろかった 88.1%  ・つまらなかった 9.0%  ・その他 2.9%

(3)授業でどんなところに興味を持ったか
・外国の情報でもすぐにわかってしまうからやはり科学の進歩はすごい
・どんなに離れた場所でもあれだけの情報をすぐに見ることができる
・いろいろな情報が得られるところ
・世界中と通信できることがすごいと思った
・世界の情報が入ってくるところ
・いろんなことがわかること
・たくさんの観光地などが見られること
・家にいるだけで世界中の見たいものが見られるなんて感動した
・いろいろなことができること
・いろんな世界があって楽しそう
・世界中のいろんなところに接続できて自分の好きな世界へ行けるから楽しそうだった
・いろいろな情報を見られることがよかった
・各国の様子が部屋にいながらにしてわかるのはすごく便利だ
・世界中のいろんな事がわかること
・世界中に接続できるところ
・いろいろなところにつなぐことができるし情報がたくさんあるから
・なんでもわかる
・海外の物を購入できること
・いろいろな情報が手軽にわかるから
・世界中どこでもつながるからおもしろい
・いろいろな国のことが調べられる
・好きなところに接続して自分が行った気分になれました
・一家に一台欲しい
・映像もきれいで沖縄のきれいな海の色がよくわかりました
・なんでも調べることができるのはすごいと思った
・いろいろなことを調べることができて便利だと思いました
・他の国とインターネットで接続することでその国のいろいろな情報を知ることができるところ
・自分がその国に行っているような気分を味わえるのはいいことだと思う
・行きたい国の情報がすぐにわかるところ
・いろんなことがその場所に行かなくてもわかるところがよかった
・世界のことがわかるところ
・外国に接続可能なんてカルチャーショック
・他の国のことや地域のことがそこへ行かなくてもすぐわかる
・情報がはやい
・こんなことがコンピュータでできるのかと思った
・あのコンピュータが世界の国々とつながっているというのがすごかった
・どんなところでもつながるなんてすごいと思った
・見ていても電話線でつながっているような感じがしなかった
・外国のコンピュータにも接続しているということがすごい
・電話をするだけで世界中の何百万台というコンピュータとつながるところ

(4)インターネットを使って調べてみたいことやってみたいこと

・まだどんなことができるのかよくわからないので何ともいえない
・世界のいろいろなことを知りたい外国までわざわざ行かなくてもいいのは楽でいい
・各国の文化風習海外に伝わっている日本文化間違った日本文化
・外国のニュースやTV番組情報
・自分の趣味に関係する情報を調べたい
・パリに行った気分になりたい
・音楽関係のことを調べたい
・音楽情報や海外アーティストの情報
・アメリカのバスフィッシングのプロトーナメントの情報
・海外へ行くときの情報収集に使いたい
・多くの国に手紙を出して友達になりたい
・もっといろいろな国とつないでみたい
・インターネットを自由に使ってみたい
・外国へインターネットを使って手紙を出してみたい
・スイスへつないでみたい
・自分が聞いたこともないような国のことなどを調べてみたい
・まだどういうことかよくわかんない
・今日やったみたいにいろいろやってみたい
・動物のことを調べたい
・外国で今流行っていることを知りたい
・世界のニュース
・コンピュータで世界中の人と交際したい
・進学希望先の情報を調べたい
・自分でとにかくやってみたい
・テレビ電話のようなことがやってみたい

[参考資料]
東海スクールネット研究会に関しては、http://www.schoolnet.or.jp/schoolnet/
ここへ接続すれば関連の資料へリンクが張られている。
スクールネット研究会のメーリングリストへの登録申し込み用紙もある。
(代表世話人 栗本 直人 滝高校教諭)
ダイヤルアップIP接続については、tcp−ip名古屋事務局。
今回授業で接続した琉球大学は、http://www.ie.u-ryukyu.ac.jp/
ここから、リンクが張られているので、
沖縄県のホームページhttp://www.pref.okinawa.jp/index-j.html
沖縄県庁観光観光振興課http://www.ie.u-ryukyu.ac.jp/Travel/などへ接続できる。
インターネット関連の書籍は多数出版されている。雑誌では例えば次のものがある。
INTERNET magazin インプレスinternet user ソフトバンク
私、河邊宛の電子メールは次まで。kawabe@doho.ac.jp




K.KAWABE <kawabe@doho.ac.jp>
Created: Jan.1,1996, Updated: Jan.1,1996