教育とインターネット
同朋学園本部事務局経理課 河邊 憲二
1996.11.12-13 第28回愛知県私学教育研修会教育工学部会
このレポートは、上記研修会の指導講師として当日即席で話し、
あとで配布したレジュメの内容に加筆訂正を加えたものである。
教育工学視聴覚の担当者に求められること
一般に教育の現場でパソコンや情報教育の専門の担当者を置かない学校では、視聴覚や教育工学関係の担当者がパソコンや情報教育の担当を任されることが多い。
そこで、インターネットを教育で利用する際にこうした担当者に求められる技術について、私の考えを簡単に紹介する。
一般のパソコンユーザーと異なり、これからの未来を担う子供たちを育てる教師は、何よりも新しいマルチメディアやネットワークをできるだけ速やかに教育に取り込み、将来の情報社会に適応していける人材を育てる努力をする責任がある。
その中にあって、その中心的な役割を果たさなければならないのが教育工学や視聴覚の担当者、あるいは情報教育の担当となる教師である。
- 教育工学的な技術として
- パソコンソフトの利用技術
これまでパソコン利用技術というとワープロ表計算データベースが三種の神器といわれてきた。実際商業科などでは一太郎やロータス123などを授業で教えているところが多い。
しかし、マルチメディアが普及しネットワーク利用が進む中で、新たにマルチメディアデータの作製編集加工技術や、それらを活用したプレゼンテーション技術が求められるようになった。
いずれはこれらの技術を利用した授業が一般的になるが、今のところは設備の整った教室でしかマルチメディアネットワークの授業はできない。
それだけに今のうちから担当者としてHTMLによるページ作成技術や画像データ処理ソフトについてある程度習熟しておくことが望ましい。
教材作成だけでなく、生徒がネットワークを通じて学習成果や自分の考えを発表する能力を高めるために、マルチメディアとネットワーク上で利用されるツールは活用して欲しい。
最近はハードの進歩のスピードにあわせて、ソフトも頻繁に改良がなされており、JAVAやActiveXなどのネットワーク上で利用するための新しい開発環境も提供されるようになってきた。
こうした新しい技術については情報をつかんでおきたい。どんな優れた技術もやがて古くなる。特に教育現場ではOSも含めてできるだけ最新の技術を利用できるようにしておきたい。
学校で学んだことが社会に出る頃には古くなるのがパソコンの世界である。
- ネットワーク関連技術
WWW,E-mail,FTP,Telnetソフトの利用技術はインターネットの教育利用のベースとなるものである。インターネット上で利用できるアプリケーションも登場し、これまでスタンドアロンでしか利用されていなかったワープロでさえネットワーク対応になってきた。
このことはアプリケーションのネットワーク上での利用についてある程度の知識と技術が必要になるということである。
これまでに教室内のネットワークをすでに導入しLAN環境で利用しているところもあるが、多くの場合メーカー独自のプロトコルを利用しもので、そのままインターネットに接続して利用できないものが多い。
インターネットを利用することになれば、TCP/IPなどのネットワーク技術とその上で動くアプリケーションの設定などの知識が要求される。
しかもインターネットの場合世界と直接つながることで、教室のLAN環境が世界のインターネット環境の一部に取り込まれることになるということを理解しておく必要がある。
その上で、ネットワークを利用するのに必要なソフトの設定やインターネットに関する知識を持っておくことは大切である。
- ネットワーク管理者の技術として
学校にサーバーを置く場合には、さらにサーバーの管理技術が必要になる。この点は意見の分かれるところである。学校にサーバーを置くか外部のサーバーを利用するかにより、管理技術に関する負担も変わってくる。
ユーザー管理、メール管理、ホームページ管理等には管理者が必要だが、必ずしも自前のサーバーが学校に必要なわけではない。
- 教師として求められる技術として
情報の取り扱い技術や利用技術、ネットワークの活用技術は、教師が教材研究のための情報収集をしたり、ニュースグループやメーリングリストによる教師間の情報交換などで必要な技術である。
さらに、生徒が授業でインターネットを活用した情報検索や情報発信をおこなったり、電子メールによる交流をおこなう場合、こうした活動を指導する教師は特にプライバシーや著作権、マナーについての指導が不可欠である。
ネットの先には人がいる、ネットは公開された社会であるということを十分に認識し、その利用に関して適切な指導助言ができるように準備をしておくべきである。
ネットワークエチケットのホームページ
学校でのインターネット利用ルールの例
学校のホームページ
愛知県の高等学校のホームページ
文部省のめざす21世紀の教育
文部省「情報化と教育」
最近の動き
- インフラの進歩
○NTTが2005年までに10Mbpsのネットワークを月額1万円程度で実現する構想を発表
●IIJが、定額制月4,900円の個人向けダイアルアップIPサービスを12月より開始
- ダイヤルアップ接続料金の低価格化と定額制への移行
- ISDNの整備と専用線接続料金の低価格化
- バックボーンの高速大容量化
- ネットワーク技術の進歩
- ケーブルテレビ、デジタル衛星通信によるネットワーク
- テレビラジオ新聞等マスコミのインターネットサービス
- ネットワーク上での認証技術
- PCやNCの普及
●10月28日にはMicrosoft社とIntel社が「NetPC」の概要を発表
○10月29日にはSunMicrosystems社がJava端末「JavaStation」を発表
●11月5日にはOracle社の提唱するNetworkComputer(NC)規格に沿った製品の発表
○米国RCA社は家庭用のセットトップボックスを97年春に300ドルで発売
●船井電機は企業および家庭向けのNC「JANESA」を今年12月に500ドル以下で発売
- NCの投入
- PCの家庭への普及
- 情報家電の登場
ネットワーク機能をもつワープロ、TV、電話、カラオケ、ゲーム機
こうした最近の動きは近い将来確実に学校教育のなかにインターネットが導入されることを確信させるものである。
そのときいかに効果的なインターネットの活用ができるのかという模索は、すでに先進的なインターネットを利用した教育実践の中に見ることができる。

K.KAWABE <kawabe@doho.ac.jp>
Created: Nov.12,1996,
Updated: Dec.23,1996