画廊にて


 私が訪れたのは、平日の昼ごろだったので、河戸さんからゆっくりと話を聞くことができた。

 縦長の「赤坂の雨乞祭」に、売約済の印があったので、「赤坂の人が所望されたのですか」と尋ねると、「いや、豊川の人なのだけれど、今までと違った作風なのでと言ってくださって」とのこと。
 確かに、バックに大胆にオレンジ色を使った描き方は、これまでの河戸さんの作品にはなかった味だ。
「挑戦してみたんだけどね」と。
 私が座らせていただいたのが、ちょうど河戸さんの向かいだったので、右の4点が視界に入ってきた。
 「私の座っているところから見える作品がいいですねえ」
と言うと、
 「ここから後ろが、自分も気に入っている作品で、個展となると数を揃えなければならず、苦労も多かったのです」
と。.
 前回の作品展以後、事故に遭われたこともあったりして、思うように作品づくりができなかったのだそうだ。
<河戸さんのことばから>
 正月前に何点か描く予定だった。でも、久しぶりに絵筆をとっても、絵の具をこねくっているだけで一向に進まない。でも、それが準備期間になる。一枚描き上げると調子が出てきて、続けて描けるようになる。まとまった時間がとれないので、その都度一からやり直し。
 2年に一度やると宣言してしまったので、弱音を吐くこともできない。「やめた」と、一度放り出したら、もうできなくなる。枷をかけておくということで、何とかがんばっている。
 2年に一度個展を開くという枷をかけ、モチーフをさがし、時間を見つけて作品を仕上げていく。大変だけれども、個展を開くことで人との出会いがあり、再会もある。
 何年も前に教えた子から贈られましたと、入り口の右側にアレンジメントが飾られていた。
 また2年後、今度はどんな作品に出会えるか、今からもう楽しみにしてしまう私です。
 

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