河戸さんのこころ



ちょっと大それたタイトルをつけてしまいました。
河戸さんの思いを、うまく伝えられるか自信はありませんが、
聞いたこと、
観て感じたことをしたためてみました。




 会場に入ると、1枚1枚の絵をじっくり鑑賞している人がいた。
 しばらくすると、また1人、そしてまた1人と。
 偶然にこの展覧会で顔を合わせ、話し込む人もいた。どの人も、河戸さんの作品作りにかける熱い思いに触れて、勇気をもらって帰って行く。

 絵を描くことは、彼の本業ではない。隙間の時間をつなぎ合わせて、2年間に32枚の作品を仕上げるのはたいへんだろう。
 作品を搬入する直前まで、絵筆を動かして、何とか間に合わせたものだとか。
 6人展にすれば、描く絵は6分の1ですみ、客も6倍になる。個展は苦しいけれど、この空間を自分色に染めることができる。
 会場を自分の新しい作品で埋め尽くすことは、自分への枷であり、やりがいでもある。
 見に来てくれる人の中には、今の職場の人もいれば、これまでに関わってきた人も多い。中には、20年以上も前に関わっただけなのに、遠くて訪ねられないからと、花を届けてくれた人もいたとか。
 本業の合間を縫っての作業は、並大抵ではない。実際の風景をスケッチするだけの時間もなくて、デジカメで撮った写真を参考にすることも多い。
 しかし、デジカメで撮った写真は平面的で奥行きがない。その場で見た印象を大切にしているのだとか。
 絵とは不思議なものである。

 近づいて見たときと、離れてみたときでは、全く見え方が異なる。
 近づけば筆のさばきがよくわかる。しかし、下がってみると、それが光になり、風景になる。
 海の絵も多くある。

 海面のうねりが、まるで生きているような風景を作り出す。
 漂う波を表現するために、何度も何度も塗り重ねていくのだという。
 ガード下、裏町。そういったところを好んで描いている。一見くらい絵のように感じられるが、見ていると絵に込められた温かさが伝わってくる。

 写真にはない、陰影と奥行き。

 本物のすばらしさは、写真では伝えられない。まだ本物を眼にしたことのない方も、2010年の8月に、ぜひ札木画廊へ。

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