第14回 河戸紅陽 油絵個展



河戸さんにインタビュー


河戸ワールドの代表的な作品群



Q これだけの作品を描き上げるエネルギーの源は?

A もう止めてしまおうという気持ちが50%近くあって、それを少し凌ぐやろうという気持ちが、何とかやり続ける原動力になっている。

 2年に1回の展覧会を続けることのできるエネルギー源
 1. 教え子たちが楽しみにしていて、遙々来てくれたりする。
 2. 同僚やかつて一緒に勤めた人たちが、「勇気をもらった」とか、「何かをやろうという意欲が沸いた」などと言ってくれる。
 3. 続けてきてくれる人に、絵の変化を指摘してくれる人がいる。絵に、自分の人生の折々のできごとが反映していたりして、自分の年輪ができていくようだ。


Q 本業だけでもたいへんなのに、どのようにして描いているのですか?

A 30点の作品を、2年で描き上がるのは大変なことだ。展覧会が済めば、仕事が忙しい時期になり、正月になってやっと新しい作品に取りかかれるかどうかというところ。時間を決めてノルマをこなしていくようなことはできない。展覧会の翌年の夏は、スケッチ旅行でネタを仕入れる。今回は、昨年の夏に1週間ほど尾道で過ごし、その時仕入れたものがあって、これだけの作品数に達することができた。
 自分が本当に絵にしたいものを探すのは大変。気が乗らないとできるものではない。展覧会の年の正月までに核となる作品を作り上げるようにしている。描けるものから描いていたのでは、本当に描きたいものが描けないままになってしまう。そこが乗り切れたら、後は勢いで作品を仕上げていくことができている。


Q 描きたいものを見つけるのは大変でしょうね。
A 自分が絵にしたいと思うものを見つけるのは大変。だんだん、自分が本当に描きたいと思える風景が少なくなってきた。
 ネタ探しのためにひとりでバイクに乗り、カメラを持って出かけるが、自分一人で行くと、まだこの先にさらによいところがあるのではないかと、際限なく探してしまい、その土地の美味しいものを食べるという時間的な余裕もなく、コンビニの弁当で過ごすことがほとんど。
  自分の見た印象と、撮ってきた写真を使ってイメージ作りをしていく。構図を決めるときには、プリントした写真を切り抜いてみて、ベストのものを探しているとのこと。画面の中の無駄をなくし迫力のあるものにするために、とてもよい方法だと思っている。構図が決まったら、写真の色とは関係なしに、自分の思い描く世界に染めていく。



  そんなに大変なら、グループ展にしたらと言われることがある。作品の数は何分の一かで済むし、来場者は、メンバー数倍になる。費用だって少なくて済む。でも、そうすると、そこは寄せ集めの世界になってしまい、河戸ワールドではなくなる。それで、結局がんばっているんだな。


河戸さんによる構図の決め方のレクチャー

 

 わたしが訪れた日にも、何組かの教え子のグループが来ていた。いろいろなことがあっても、立派にがんばってくれている姿を見るとうれしいとのこと。そんな子たちとの再会も、展覧会を通して可能になるというもの。
 前の回の時に、「結婚しました。」と言っていた人が、次の回の時に「子どもと一緒に来て、『次の子ができたから、今度は二人の子と一緒に来ます。』どと言っていた2年サイクルの展覧会というのは、いろいろな意味でよいところがある。