ゴマの効能

ゴマは私たちの食生活にとって身近な存在です。ゴマの原産地は
アフリカのサバンナ地帯で、高温で紫外線にさらされる過酷な環
境でも負けない生命力を持ち、世界中に広がり、食用されるよう
になりました。

古代エジプトではクレオパトラが健康飲料としてゴマ油とハチミツ
をミックスして愛用し、古代インド医術アーユルヴェーダでもゴマ
油が利用され、中国でも不老長寿の薬として最古の医学書であ
る「神農本草書」に紹介されており、ゴマの薬効は古くから認めら
れ、愛用されています。

ゴマが食品として優れている第一の理由は、さまざまな有効成分
が小さな粒の中にたっぷりと含まれていることにあります。主な
成分として、リノレン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸、ビタミ
ンE、セサミノールに代表されるゴマリグナン、その他鉄成分、カ
ルシウム、マグネシウム、食物繊維、トリプトファンやメチオニン
といった必須アミノ酸などが含まれており、有効成分のかたまり
だといえます。

【ゴマの効能】

1)抗酸化作用

有効成分のうちで、最も注目されるのは、ゴマリグナンと総称され
れる抗酸化物質です。ゴマ油が他の食用油に比べて酸化しにくい
のは、この抗酸化物質の働きによるものです。
地球上の生物にとって酸素は必要不可欠な物質ですが、人間の
体内に取り込まれた酸素の一部は、細胞に対して攻撃的に働く
「活性酸素」と呼ばれる物質に変化します。老化やガンの原因の
一つと考えられている過酸化脂質も、体内の多価布飽和脂肪酸
が活性酸素に酸化されることによって生じます。
抗酸化物質を多く含むゴマは、活性酸素の攻撃を退けて過酸化
脂質の生成を防ぎ、細胞の老化やガン化を抑制する効果をもっ
ているのです。ちなみに、ゴマに豊富に含まれるビタミンEもまた
強力な抗酸化物質なので、ゴマの抗酸化パワーはかなり強力な
ものといえます。なお、、ゴマリグナンには、セサミンやセサモリン
など多種類あります。これらもセサミノールと同様、配糖体があり、
例えば、セサモリンは化学変化によってセサミノールに変化し、そ
れぞれが体内で抗酸化作用を果たします。

2)悪玉コレステロール退治

ゴマには、動脈硬化が心配な人にも有効であることが、さまざま
な実験により確認されています。動脈硬化の発症にはコレステロ
ールが関与していることはよく知られていますが、なかでも悪玉
コレステロールは血管壁にとりつきやすく、動脈硬化を促進しま
す。また悪玉コレステロールが体内で活性酸素によって参加さ
れるとドロドロになって血管壁に付着し、ついには血管をつまら
せてしまいます。ゴマは血管に付着する悪玉コレステロールの過
酸化を防ぐだけでなく、血中のコレステロールを減らす不飽和脂
肪酸もたっぷり含まれているので、動脈硬化を抑えるのに、より
大きな効果が期待できます。

3)二日酔い予防

ゴマに含まれているセサミンには、肝臓の働きを助けて、アルコ
ールの分解を促進する作用があります。アルコールの分解が早
くなれば、血液中に出るアルコールも減るので、酔いも少なくてす
むわけです。
アルコールの分解過程で、二日酔いの原因になるアセトアルデヒ
ドが生じますが、ゴマにはこの有害物質を無毒化する働きがあり
ます。また、アルコールを飲むと、副交感神経の活動が低下して、
呼吸や心拍が乱れやすくなりますが、ゴマにはこれを抑制する作
用もあることが明らかになりました。お酒を飲むときには、事前に
少量のゴマを食べておくことをお勧めします。また、お酒のつまみ
にも、ゴマ和え、ゴマ豆腐などゴマを使った料理を一品注文する
と良いでしょう。

4)美容に

ゴマは昔から美容のためにも使われてきました。ゴマを食べるこ
とで、抗酸化物質の働きによって老化を防ぎ、美肌や豊かな黒
髪を保つことができると信じていたと思われます。
美容効果意外にも、ゴマには不溶性の食物繊維が含まれている
ので、便秘の解消にも役立ちます。また豊富な鉄分は貧血改善
に効果があります。さらにカルシウムも多く含まれているので、骨
粗鬆症の予防にもなります。

5)ストレス防止

ゴマにはトリプトファンやビタミンB6も多く含まれており、これらは
セロトニンなどの精神安定に不可欠な神経伝達物質の原料にな
ります。これを補うことによってストレスを和らげて、イライラを鎮
める安定作用があるからです。
また、ゴマに含まれるセサミンもストレスに対抗するためのホルモ
ンの分泌を促して、精神を安定させる作用があります。

6)ガン予防

私たちの体内では絶えず活性酸素が発生しています。そのため、
βカロテンやビタミンC・Eなどが細胞膜に存在して、絶え間ない
活性酸素の攻撃から細胞を守り、ガンを防いでいます。さらに細
胞内では数種類の酵素がせっせと活性酸素の掃除に働いていま
す。この酵素の一種であるグルタチオンペルオキシダーゼの主
成分は、セレンです。セレンはゴマに豊富に含まれている微量ミ
ネラルですが、ガン予防にとって重要な役割を果たしています。
ゴマにはβカロテンやビタミンEも含まれているので、抗酸化作
用も同時に期待でき、特にセレンはビタミンEとの組み合わせで、
さらにその効果はアップすることがわかっています。そのほか、ゴ
マには食物繊維も豊富に含まれていますので、便通を促し、発ガ
ン物質をすみやかに体外へ排出します。また、ステロール、フィ
チン酸という成分も含まれており、これらもガンを抑制する効果
があることが知られています。ゴマには白、黒、茶、金などの種
類がありますが、黒ゴマにはアントシアニンというポリフェノール
の一種が含まれており、ガンの抑制効果がいっそう期待できま
す。

【効果的利用法】

少量でも毎日続けてとるのが、ゴマの効用を得るうえで最良の方
法です。摂取量の目安は1日約10g(大さじ1)です。ゴマは炒る
ことで外皮が破れ、消化吸収が良くなります。また、加熱すると
ゴマリグナンの一種セサモリンがより抗酸化作用の強いセサモ
ールに変化する利点があります。食べる直前に炒り、必ずすって
使うのが効果的な利用法です。
            (参考:日本薬剤師会雑誌 第53巻第1号)