いたずら 2

蚊取り線香の時限爆弾もすごい発明であったが、 隊長のナイスなアイデアは止まらなかった。

その日はお盆だった。 お線香とろうそくを立て、仏壇に手を合わせていた隊長はハッと気がついた。

もし、この瞬間にろうそくが爆発したらどんなにすばらしいのだろうか。

頭の中には、すでにどのようにしたらろうそくの中に、 中デン(爆竹の中くらいのやつ)を 入れるのかが渦巻いていた。

早速一本のろうそくで試作品を作ってみた。 元々ろうそくの裏には穴があいていたので、少し広げてやるだけで簡単に入った。

これはうまくいくぞ。 隊長は確信した。

いよいよ火をつけてみた。 少しずつ蝋を垂らしながら短くなるろうそく。

半分ほどきた時であろうか、シュッという音がしたかと思う間に パンッとろうそくが吹き飛んだ。

中デンなので、音は大したことないが ろうそくを吹き飛ばすには十分な破壊力だった。

バラバラになったろうそくを見ながら隊長は 「ナイス!」と自分の才能に満足していた。

次の日は忙しかった。 家中のろうそくを百本以上集めて、すべてに中デンを仕掛けた。

だいたい隊長がおとなしく何かをしているときは、 あまりいいことをしていることは少ないものだが、

家族は鶏の世話や農業が忙しく、 そこまで見ている余裕はなかったのだろう。

誰にも邪魔させることもなく、黙々と任務を遂行していった。

夕方になり、すべてのろうそくを持って、 隣のお寺にきた隊長は、 「南無阿弥陀仏」と手を合わせてはろうそくを立てていった

すでにお参りにきている人もいたが、隊長のことは ご先祖を思う良い子がいる程度にしか見えなかっただろう。

うちのお墓には、サービスで2本ろうそくを立てておくことも忘れなかった。

だんだんと薄暗くなっていく中に、たくさんの炎が揺れていた。

きれいだった。 唯一の心配であった、風もほとんど吹いていなかった。

天も隊長の見方をしているようだった。

お墓が一望できるお気に入りの電柱によじ登り、そのときを待った。

たまに吹くそよ風は、心地よく、揺れる木々がこの瞬間を祝福しているようだった。

すでに、2,30人の人がお参りにきていた。 道にも次々と人が歩いてくるのが見えた。

パンッ、ひとつのろうそくが爆発した。 しかし、近くには誰もいなく、みんなもまだ気づいていないようだった。

パンッ、パンッ。続けて爆発した。

少し、近くの人たちがざわついたが、 子どもがどこかで花火をしているようにしか思っていないようだ。

隊長の近くでおばあさんがお墓に手を合わせていた。 そのろうそくがパンッと吹っ飛んだ。

「ヒャッー」おばあさんは言葉にならない声を出して後ろにひっくり返った。

パンッ。家族で拝んでいる右横のろうそくが吹き飛んだ。 みんなそっちを見た。

パンッ。今度は左側で音がした。

みんながそちらを向いたとき、目の前のろうそくが爆発した。

「ワー」と言って散り散りに逃げ出した。

パンッ、パンッ、パンッ。 「ヒャー」「ヒー」あちこちで悲鳴が聞こえていた。

お墓中がパニックになっていた。 蜘蛛の子を散らすように、みんながお墓から逃げ出すのが見えた。

隊長は震えていた。

あまりの自分の才能に打ち震えていた。 「俺は天才だ!」

逃げまどう人々を見ながら、隊長はお墓に手を合わせゆっくりと家路についた。