極道オジー(4)

隊長の家には、パールというドデカイ秋田犬がいた。

極道オジーが、近所の婆さんからもらってきたものだが、

あまりにでかくて凶暴なため(その婆さんも噛まれたそうだ)

誰の引き取り手もなく、うちのオジーがもらってきたという話だった。

うちに来てもその性格は変わらず、オバーを始め、オトーやオカーも噛みつかれるという、

オジーそのもののような犬だったのだ。

(しまいにはオジ−も噛まれていた)

隊長も初めは、パールに噛みつかれて血だらけになっているオトーの手などを見ていたので

とても怖くて近づけなかったのだが、いつしか引きずられながらも散歩に連れて行くようになった。

オジーといいパールといい、どうも隊長には「猛獣使い」の血が流れているようだった。

当時の隊長は、朝は6時頃からオジーとリヤカーを引いて豚のエサをもらいに近所の小学校や団地の残飯を集めに行き、

夕方は、これまた極道オジーと頭のいかれたパールの散歩をしていた“おしん”のような少年だったのだ。

でも、残飯をもらいに行くとモルモットが捨ててあったり、使えそうな傘を拾ったりと

それはそれで結構楽しい思い出だったりするから不思議なものだ。

きっと子どもって回りの大人の関わり方如何でどんなことでも遊びにしてしまうものなんだと思う。

小学校6年の時、ついに天敵の極道オジーが死んだ。75だった。

酒の飲み過ぎで肝臓ガンになってしまったのだ。

病院のベッドで痩せこけているオジーは、とてもあの極道ジジイには、見えなかった。

そして、その後を追うようにパールも一週間後に死んだ。

13年も生きた犬だったのでもう結構な年寄りだったと思うが

(当時は犬の寿命なんて10年がいいとこだった)

最後は体中にウジがわいて可哀相だった。

いかれた犬だったが、オジーにもらわれて幸せだったのかと思った。

オジーは、この孫をどう思っていたのだろう。

家族の中で、いや親戚一族を含んでも、唯一思い通りにならないお茶目な孫をどう感じていたのだろう。

もし、隊長に孫が出来たら(そのぐらいまでは生きていたいものだ)

その時にこそ分かるのかなぁ〜。