障害児保育の思いで

当園は障害児保育を行っていることもあり、 毎年数人の障害を持った子たちをお預かりしています。 (今年は、いませんが)

その子たちは、ふだんの生活や行事なども、 出来る限りみんなと同じ事をしています。

少し時間が掛かったり、うまくできなかったりするだけで、

そんな時はまわりの子どもたちが 手助けをしてくれたり、先生がいろいろな方法で援助をしています。

この子たちとの出会いは、いろんな子の意外な一面も見せてくれました。

普段は先生の目を盗んでは悪さばかりしていたり、 友達とも争いごとが多い子が、

障害を持った子が本当に困っているときなど、 どこからともなく現れて助けてあげる姿を見ることもありました。

よく見ていると決して近くにいるわけではないのですが、 あの先生の目を盗んでは悪さをする才能を生かして、 いつも気にかけているようでした。

(出来ることでも、ついつい手を出してしまう、 お節介お姉さんもいますが・・。)

しかし、上手くいった例ばかりではありません。

一言に障害児と言ってもいろんな障害を持っている子がいます。

すべての障害を持っている子が、 健常児と一緒にいることが良いとは言えない場合もありました。

突発的に暴れ出す子がいたときには、 子どもたちもどうやってつきあっていけばいいのか迷ってしまいました。

その子がいた2年間は全職員で一生懸命に保育しました。 お母さんとも、どうすることがその子のためになるか何度も話し合いました。

その甲斐あって、卒園までには少しづつでも良くなっているように見えました。

その子がいなくなると何となく気が抜けたような ホッとしたような気持ちになったのを覚えています。

卒園して一月ぐらいたった頃、 急にその子が入った小学校の先生がお見えになりました。

「この子は本当は、もっと良かったのですが、 園で毎日ひどいことをされたのでこんなになってしまった。

普通の学校にいればきっと良くなるはずで、特殊なところには行きたくない。」 とお母さんが言っているので様子を見に来たそうです。

先生には、今までのことや 現在の園の様子を見てもらい納得してもらいました。

後日、職員会でそのことを話し合いました。

お母さんに対する反発が出るかと思いましたが、 「お母さん、かわいそうだね」と一人の先生が言いました。

何人かの先生も頷いていました。 この気持ちがみんなの思いだったようです。

その子が産まれてから夫婦仲が悪くなり離婚したことも、 毎日のお向かいでも人目ににつかぬようにしていたことも、

晩御飯を食べさせてから、 おばあちゃんに預けて夜の仕事に出ていたことも みんなは知っていました。

きっと、このお母さんが味わった苦労は 僕たちには分からないなと思いました。

このことを書くに当たって、当時の担任に聞いてみました。

「あの時はとても大変だったけど、 私にとっても子どもたちにとっても まりちゃんがいてくれて良かったと思っています。」

と しっかりとした口調で答えてくれました。

実は、まりちゃんの件は今までの障害児を受け入れた中での 失敗例だと考えていました。

ですから、担任の言葉には僕自身驚かされました。

先生って、本当にすごいなと思いました。