3年保育?4年保育?(2004/1)

保育の掲示板で、3年保育が良いか?4年保育が良いか?と尋ねられました。

その時のレスをまとめてみました。


何年保育にするかは、各家庭での経済的理由や家庭環境、保護者の考え方、

そして何より子ども自身が違うので一概にどちらが良いとは言えません。

やはり、最後は親御さん自身が、いろいろな事情を考えながら判断するべきだと思います。

ご参考になるかどうかは分かりませんが、当園の実情を書かせて下さい。


この頃の保育園では、(僕が知ってる限りですが)3年保育より4年保育を選ぶ親が増えてきました。

当園の場合ですと、2歳児さんが50人(継続児20人、新入児30人)ですので

来年度の3歳児さんの新入児は15人ほどです。

もう、4,5年こんな感じです。

2歳児さんで入ってくる親も、初めは3年保育を希望する方たちが多いようですが、

実際の入園時には、4年保育を選ぶようです。

当園では、園を決められる前に必ず見学をしてもらっています。

また、他の園を見ることも勧めています。

まず親御さん自身が納得することが“初めの一歩”と思うからです。

何回かの見学や当園の保護者の方と接しているうちに多くの方が3年保育より4年保育を選んでいるようです。

一時期、3歳育児神話が信じられていましたが、当時の厚生省も否定したとおり根拠のないものでした。

子どもたちの育ちを見ていても、6年保育(0歳さんから保育園にいる子)と3年保育の子の違いよりも

その子の個性や家庭環境の違いの方が大きいような気がします。

ただ、4年保育を選ぶようになったのには、はやりそれなりの理由があると思います。

子どもは、“親でなければ育てられない部分”も多いのですが、“親では育てられない部分”も多いからです。

この“親では育てられない部分”をどうするべきかということなんです。


少し前までは、親が別に意識をしなくてもこの部分がちゃんと育っていました。

家庭には親以外の人(おじいちゃんやおばあちゃんを初めとした地域の人)が多く入り込んでいました。

兄弟の数も多く、友達と遊んでいてもその子の妹や弟付きなんてことも!

(子どもの成長にとって大切な異年齢の関わりが自然と出来ていた)

地域には、“子どもの群れ”が存在し、地域全体としても子どもを育てていこうという意識がありました。

また、子ども同士でも安全に遊べる場所も多かったんですよね。

でも残念ながら、社会が変わってしまいました。

2歳くらいになると、多くの子どもは友達に興味を持ちます。

子ども自身が友達(子ども)を求めるようになるからです。

実は、まだ歩けないような赤ちゃんでも自分の回りで子どもの声がすると目で追います。

もちろん、お母さんが一番なんですが、すでに興味があるんですね。

「子どもの最高のおもちゃは子どもである」

うちの嫁さんがよく言っていたことです。

子ども同士の関わりは、どんなおもちゃもかないません。

小さな石ころでもお友達と遊べば立派なおもちゃに変身することだってあります。

親が「お友達と仲良くしなさい、ルールを守りなさい」と口で言うより

実際に友達同士で喧嘩したり、遊んだりしながら学んでいくことも多いです。

トイレトレーニング等もお友達のやっているのを見ることが刺激になります。

お母さんは、立派なお母さんにはなれても友達にはなれないんですよ。

また、子どもにとっては、

小さい時からの規則正しい生活が必要なのが分かってきました。

早寝早起きが、子どもの体だけではなく脳の成長にも必要という事です。

これも家庭だけでやろうとすると意外と難しいんですよね。

旦那は、ゴミ袋を持って会社に行ってお母さんは子どもとブランチなんてことありませんか?

そして、なんと言っても大きいのが運動量の違いです。

聖徳大学の鈴木みゆき先生が、保育園にいる2歳児と

家庭にいる2歳児の運動量を計ったのですが、平均で3倍ほどの違いがあったそうです。

その結果を聞いた時には、僕たち自身がビックリしたのですが、考えてみれば思い当たる節もあります。

まず、家庭と保育園のお部屋の広さの違い。

そして、何より大きいのが何でもやってくれるお母さんと自分の思うとおりには動いてくれないお友達との違い。

また、お友達といればついつい遊び回ってしまうんですよね。

昼間動き回るから、夜も早く寝られるんですよ。(もちろん、個人差アリ)

そして、親以外の目がその子自身の意外な発見にも繋がります。

親は、身近にいる分、見えないこともあるんですよ。(良い面も悪い面も・・)

「なんでこんなに良い面があるのに気付いてあげないの?」と思う時もある反面

親が当たり前と思っている子どもの姿に実は多くの問題を秘めていることもあります。

「もう一年早く預けてくれれば、もっと楽に直ったのに!」と保育士が嘆いていることもあります。

親だけの価値観で育てると、社会から乖離してしまうこともあります。

また、毎日保育園に通えば自ずとお母さん同士の繋がりも出来ます。

子育ての悩みを打ち明けられる仲間がいることは、とっても必要なことです。

お母さんの精神的安定が子どもの安定に繋がります。

と、思いつくままに書き出してみましたが

別に保育園の宣伝をしているわけではありません。

保育園以外でも、このようなことが出来る環境があればいいのです。

(実際、そのような環境にいる方も多いと思いますよ)

また、保育園に預ければすべての問題が解決されるわけではありません。

うちの3人の子どもたちは、みんな0歳から預けて良かったと思いますが、

正直な話、中には、「預けたくないな」と思う園もあります。

また、保育園以外でも子育てサークルを始め近所の付き合い等で出来る事もあります。

そして、僕たちが保育園に子どもを預けている親に願うことは、

今度は“親でなければ育てられない部分”を大切にして欲しいということです。

(子どもと離れたら寂しいと思うのは当たり前の感覚です)

お母さんにはお母さんの役割、友達や地域の人、先生たちには、それぞれの役割があると思うのです。

それらを全部親に押しつけるのは間違いです。

子育ての責任を親が全部背負い込む必要もありません。

僕は常々「子育てを楽しむことこそが最高の子育て」と言っています。

子育てを楽しむためには、自分には何が必要か?を考えながらやっていけばいいと思います。

それが人によっては、「子どもとの時間」だったり「自分の時間」だったり「ケーキ!」(笑)だったりするわけなんですから。

子育ては、親だけで出来るものではありませんし、やるものでもありません。

家庭だけに引きこもっている密室保育は、親子共々に多くの問題があります。

人間(親も子どもも)は、常に社会と繋がっていなければなりません。

“親でなければ育てられない部分”そして、“親では育てられない部分”。

みなさんはどう思いますか?