伴奏はピアノ?(1)

保育の掲示板で、幼稚園教諭のピアノの能力が問題になりました。

ピアノが出来ることは、幼稚園教諭においては、 出来て当たり前というレベルだそうです。

それでは、幼児期においてピアノ伴奏は絶対に必要なものなのでしょうか?

幼稚園だけでなく、保育園もピアノの実技が採用試験にあります。

他の科目や面接が良くても、このピアノで落ちる子が毎年多いもの事実です。

実は、うちは他園のピアノで落ちた子が2人いるのです。

知り合いの大学の先生から、 「ピアノで落ちちゃったけど、とっても良い子がいるから」 と紹介された子たちです。

そして、この子たちを採用して良かったと今でも思っています。

ピアノは出来るに越したことはありません。

しかし、ピアノが出来る子がいい保育者ではありませんし、 ピアノが出来ないと悪い保育者でもありません。

絶対に必要なものだから、本当に保育士なり、幼稚園教諭になりたいなら、 そのくらいの努力をすべきだとお考えの方もいると思います。

ただ、実際に通常の保育においてピアノが弾けることが どのくらい必要なのか? ピアノでなければいけないのか?

今一度、問いかけてみたいと思います。

今の保育業界には、 「ピアノ神話」のようなものがあるような気がしてならないからです。

多くの保育室には、ピアノなりオルガンなりが設置されています。

これは、子どもたちがお部屋で歌うときの伴奏には 絶対に必要だと思いますよね。

では、伴奏はピアノやオルガンでなければいけないのでしょうか?

子どもには、「本物の音」で接してあげたいと考えている保育者も多いでしょう。

ここに、こだわるとピアノということになりますよね。 (子どもにとっての「本物の音」って本当にピアノだけでしょうか?)

当園の場合ですと、3歳児のお部屋にはオルガン、 4,5歳児には、クラビノーバです。

何故ピアノではないかというと、一つは弾く向きの問題です。

お部屋に余裕がないので、ピアノなら側面の壁に設置するしかありません。

この場合、子どもたちの顔を見ながら弾くことには無理が生じます。

やはり、伴奏をするのなら、子どもたちの顔を見ながらやりたいものです。

オルガンやクラビノーバなら、その都度50cmほど出して、 子どもと向き合いながら弾くことが出来ます。

それに、ピアノは大変重たいものなので、 よほどしっかりと耐震対策をしないと、 子どもにとって命に関わる危険物に変身します。

もちろん、オルガンやクラビノーバも、軽いとは言っても危険物になるので、 その対策を考えなければいけませんが・・。

(当園では、壁に付けてあるときに、 太めのチェーンで固定するようにしていますが、

阪神大震災級の地震の場合を考えるなら、まだ考慮の余地があると思います)

ずっと、疑問に思っていました。 なぜ、伴奏は、ピアノでなければいけないのでしょうか?

ギターではいけないのか? (映画の「サウンド・オブ・ミュージック」みたいに) 笛が得意な先生がいたら?

MDで、伴奏を録音しておき、流してみたら? (頭出しも簡単ですし)

たとえば、子どもたちの方を向かずに弾くピアノ伴奏と、 動きながら出来るギター伴奏。

伴奏は、MDに任せて、子どもたちの輪に入って唄う先生。 ピアノではなく、クラビノーバなどの電子オルガンなら。

子どもたちにとって、どれが良いのでしょうか? どれが唄いやすいのでしょうか?

どれが、より唄うことや音楽が好きになってくれる形なのでしょうか? この辺の検証をした研究発表を僕は見たことがありません。

もちろん、どんなやり方にしろ人的環境である 先生の影響が一番大きいですが・・。

ある園の音楽発表会に行ったときです。 そこの先生が弾くオペレッタのピアノ伴奏は有名です。

譜面も見ずに、すごい勢いで弾いていきます。 確かに、始めてみればビックリします。

親御さんたちのも評判がいいようです。

しかし、僕には踊っている子どもの表情、 出番を待っている子たちの顔、 異年齢の子たちの反応、

そして先生たちの「目の表情」の方に 興味がいってしまいます。 だって、先生の発表会ではないのですから。

年齢に比べて難しいことをやっていたり、待っている子どもや異年齢の子が、 一緒になって唄うことがないことの方が気になります。

「ここの園の先生は、みんな凄くピアノが上手いんですね」と 園長先生に言ったら

「うちは、上手い子しか取りませんから、 だって、親御さんに見ていただくのは、こういう時なのですから」 と胸を張って言われていました。

普段の保育の中で、どのくらいピアノを弾くときがあるでしょうか?

確かに、毎日弾く機会はあると思います。 しかし、時間にすればたいしたことはないように思います。

それ以外の保育時間が大半ですよね。

その能力をどのくらい採用試験の時に判断しているでしょうか? 面接で判断しているのでしょうか?

壁画製作が凄く上手い子がいたら? 子どもと遊ぶのが上手い子は? 絵本を読むのが上手い子は?

力仕事が得意な子は?(園では意外と多いのです)

もちろん、ピアノ自体をそんなに重視していない、 子どもたちの伴奏が出来るレベルで良いと考えている園も多いと思います。

その一方で、「ピアノ命」の園も多いでしょう。

当園に来年度入る男の子は、あまりピアノが上手くありません。

でも、凄く子どもに優しくて、一生懸命に遊んでいる実習態度を評価しました。

当園でも、早くピアノ以外で伴奏する先生が出ればと思います。

だって、各お部屋でいろいろな楽器で伴奏しているなんて考えただけで、 楽しいじゃないですか!

でも、保育士を目指す子はピアノも一生懸命に練習するので、 まだ出る気配はありません。

そういえば、バンドを組んでいた先生(ゆき先生)がいるので、 今度「ギターでやってみたら?」といってみようかな。

子どもたちの反応が見てみたいです。

音楽には詳しくないので、頓珍漢なことを言っているかもしれません。

みなさん、「幼児期におけるピアノ伴奏」どのように感じていますか?

音楽的能力の成長を考えれば、ピアノは欠かせないものでしょうか?

(一番大切なのは、「音楽」=音を楽しむ事なんですけど)

僕には、絶対に必要なものだとは思えません。 もちろんあっても良いものですが、遊戯室くらいで十分な気もします。

ですから、保育士や幼稚園教諭が 絶対に出来なければいけないものとも思えません。

「子どもたちの伴奏」 今一度、考えてみても良いのでは?

伴奏はピアノ?(2)

今回の「伴奏はピアノ?」は、はっきり言って軽い気持ちで書きました。

だいたい、音楽自体に詳しくないので、「こうではなければならない!」 って気持ちはありませんでした。

何故実技はピアノなのか? 子どもの伴奏はピアノでなければいけないのか? という疑問からでした。

僕は、もともとがこの業界とは無関係な人間でしたので、 このような素朴な疑問がいつもありました。

今、思うと独りよがりだったり、 表面しか見ていなかっただけというのもありましたが、

そんな「素朴な疑問」にやっている人(プロ)は、 ちゃんと答えられなければいけないとも思っていました。

「昔からやっているから」とか「そういうもんだから」 「上の人が言っているから」「あの学者が本に書いているから」

なんて答えは聞きたくないのです。 上手く説明できなくても良いので「自分の言葉」で言ってほしいのです。

このことは、子どもたちと接していく上でも、 とっても大切なことだと思っています。

自分も、この業界で飯を食うようになったので、

親御さんを始め、いろいろな方から質問されたときは、 出来る限り「自分の言葉」で答えていきたいと考えています。

僕が入っている、MLや保育者の掲示板にも同じものを投稿しましたところ 各先生方からもご意見をいただきました。

了解が得られましたので、一部紹介させていただきます。

○○先生

中島先生がお書きになられるように、他の楽器(ギターなど)でも 歌は一緒にうたえるでしょう。

でも教えるってなると結構難しいのでは とも思います。 ピアノは音程がはっきり出ます。

子どもたちが初めて聞く歌とかを教えるときは 一音ずつとまではいかないまでも

きっちりとメロディーを教えてあげないとうまくは覚えてくれないのではないでしょうか?

しっかり覚えてからなら伴奏と言う形での演奏になりギターなどの楽器と違いが出ないかもしれないですが。

それと、生でない伴奏(録音)などは 現場的にはとっても難しいのではと思います。

その日の気分で子どもたちは早口で歌いたい気分だったり ゆっくりと言葉を確かめながら歌いたい気分のときもあるでしょう。

そんなときに録音ものでは対応が出来ないと思うのですが?


また、演奏するときの保育者の思惑で演奏スピードを調節するということも多々あるのでは、と思います。

自分も保育所に勤め初めて 「なんでこんなにピアノを(鍵盤楽器ですね)使わなくちゃいけないのか」と 最初の頃は正直思いました。

でも、子どもたちを前にすると 「せめてメロディーラインぐらいはちゃんと弾いてあげないと」という 気持ちが大きくなって来るんです。

子どもたちの好きな歌をうたってるときの子どもたちってホントに うれしそうなんです。

それを、「ピアノがうまくないから」って言う こちら側の都合で?奪ってしまうのはいけないと しばらくすると思いました。

で、ピアノなどは練習すればそれなりにうまくはなるものだと 僕の経験から得たことでもあります。

(そりゃ〜出だしのレベルが違うので、昔からうまい人には > どんなに努力しても追いつけませんが)(笑)

ちょっとでもうまく弾けるようになると人間は欲張りですから次々とレパートリーが増えていくものです。

またそれからバリエーションも増えていきます。

まあ、ピアノが弾けるかどうかは 「日本語を話せるかどうか」のレベルなのかと 言うことは全くナンセンスだとは思いますが

(日本語だってちゃんとしゃべれる人ってどれくらいいるのだろ)

逆に言えばそれくらい自分の一部になりうるほど ピアノに親しめれば保育を展開するに当たっては

ものすごい武器になりうるって所じゃないでしょうか?

だから、その部分でその人の保育者としての存在を 否定する物にはならないとは思います。

中島先生がお書きになられてるように、他の部分で秀でたものがあればそれを武器にすればいいのですから。

ただ、間違えてはいけないと思うのは、不得意だからそこは目を瞑って避けて通ってしまっては いけないということだと思うのです。

自分のできるレベルを最低でも維持しなければならないし 秀でた部分は今以上のところを目指さなければならないと思うのです。

不得意な分野であっても、知らん振りはいけないと思うのです。

子どもたちは日々成長していますから。

○○先生

ピアノのよさ、と言いますか鍵盤楽器のよさです。左手で伴奏をしながら、右手で主旋律を弾くことができる。

最大で10個の音を同時に鳴らせる。これがギターであれば、伴奏と主旋律を同時に行うことは 神業に近いものがあります。

もともと、ギターは、伴奏の楽器です。この点が、一番の保育に採用された理由だと思います。まあ、カラオケといっしょです。

それから、弦楽器に比べて、手間がかからないことですね、弦楽器は弾くたびにチューニング(調律)が必要です。間違いなく。

広い意味でピアノも弦楽器なので、一度ピアノそのものを移動したりすると狂ってしまいます。まあでも、年に一度くらいで充分です。

手間がかからないことは、実際の保育にはとても大事なことだと思います。

開けばすぐに音が出る、おわれば、ふたを閉めるだけ。です。でも、ピアノでなければならない理由にはならないと思います。

しかしながら、うちの園は採用試験の時にあまりピアノを重視していませんが、残念ながら、ピアノで挫折してしまう子もいます。

ピアノができないが為に、日々の保育が暗くなってしまった子がいてその先は、ご想像にお任せですが、、、

17日の水曜日にバイオリンコンサートが園内で行われます。

全盲の方がバイオリンを弾いて、バックでピアノという形で 今年で7年目くらいになります。

もともと、全盲の子が園に通園していた時に、その子を励ます意味もあって全盲でありながら、

プロになってがんばっているバイオリニストに来てもらおう!と言ったところが始まりなのですが、毎年の恒例行事なっています。

毎年、弾き手の○○さんと言いますが、○○さんが毎回いろいろと考えていただいて、

クラシックだけでなく、流行の曲や、子どもたちが歌える曲など用意してきてくれます。

そんな曲が始まると、全員で大合唱です。

また、バイオリンで救急車の音を出してみたり、(もちろんドップラー効果つき)いろいろ楽器で遊んでくれるので、とても楽しめます。

そんな中で、言葉では表現が難しいのですが、音で会話をする、、、

というか駆け引きをする場面(分かってね、、、)の時の子どもたちの反応はすばらしいものがあります。

子どもたちの音に対する反応のよさです。

もちろんプロですから表現力があるのは当たり前なのですが、 言葉や説明が一切ないところで、

子どもたちが感じたまま反応できるところに毎年、驚かされます。

こんな点において、生の演奏がいかにすばらしいかを感じています。

ですから、お遊戯の練習や歌の練習でカラオケを使っても、悪くはないと思いますが、音は語るんです!

弾き手があってその人の気持ちが音になっていることは、忘れないでいたいと思っています。

子どもたちにとって音は、言葉よりわかりやすいかも、、、

そんなこと考えていると、我が家は音があふれすぎだなぁと感じます。

一番の悪者は、テレビです。 皆さん知ってますよね、コマーシャルになると、音が大きくなること!

番組の中でさえ、音があふれかえってます。

この他にも、いろいろなご意見を ありがとうございました。