「なかよし保育」の見直しについて (2000/9)

今年度から「*なかよし保育」に親御さんや地域の方が参加するようになりました。

しかし、結果的に見直しをせざる得ない状況になりました。

5月の「なかよし保育」が終わった数日後、 園庭でふらふらしている僕のところにあるお母さんが寄ってきました。

「なかよし保育をやめてくれませんか、うちの子が来て来てと泣くんです」

6月にはお父さんから電話がありました。

「先生の熱意はわかりますが、私には空回りしているとしか思えません」

その場では園の思い・子どもたちの様子などを説明して納得してもらいましたが、 やはり一度全員にアンケートを採ることに決めました。


7月にアンケートを採り、その結果と今後の「なかよし保育」を手紙で先日知らせました。

*「なかよし保育」とは、子どもたちは園内の好きなところで、好きなあそびをします。 屋上だったり、乳児さんのお部屋だったり、園庭だったり・・。

そして、今年度から、月に一度は親御さん・祖父母を始め地域の方にも 参加していただくようになりました。

第1回目は4月15日、新入児さんたちはまだ園に1週間もいない時期から始まりました。

しかし、何回かやってきた中で問題点も見えてきました。

一番多く言われたことが「親が来ていない子がかわいそうだ」という点でした。

(園が思っていた以上に参加される親御さんが多かったということもあります)

これについては、「なかよし保育」を始めるときから心配していたことでした。

ですから、親御さんたちには、趣旨をよく説明し、 自分の子だけと遊ぶ日ではないので、 いろいろなお友達と関わってくれるように頼み、

そうすることによって、親が来てくれない子たちも寂しい思いをせずにすむのではないかと考えました。

先生たちも、親が来ていない子へのフォローは職員会などで確認してきたことでした。

でも、結果的に多くの賛成意見もありましたが、この問題がクリヤー出来ませんでした。


第1回目(4月)のお手紙には次のように書かれていました。

「なかよし保育」 おうちのみなさん、いっしょに保育をしてみませんか? 

今どきの子どもったら・・・なんてため息まじりの言葉を、雑誌やテレビなどから聞きますが、

保育園の中の子どもの生活を見ている限りでは、昔の子どもと比べて、 声を大にしていうほどの大きな違いは見られないように思います。

友だちや保育者とのかかわりの中で、よろこんだり悔しがったり、 夢中になって汗をかいたり、

ほめられて自信を持ったり、友だちの様子を見ていろいろ工夫したり・・・。

子どもの根っこにある純粋で素直な心は変わらないと思います。

表面的に変わったように見えるのは、 まわりの環境や大人のかかわりが変わったからかな、とも感じます。

子どもが心も体もよりよい成長をしていくためには、まわりの人や環境はどうあればいいのか、

今、子どもを取りまく私たち保育者、家族、地域ぐるみで考える必要があります。

その第一歩として、保育園を保護者におじいちゃんおばあちゃんに(ゆくゆくは地域に)開放し、

みんなで保育をしようという日を設けたいと思います。 ・・・。


常設のアンケート箱(4,5月)には次のような意見が入っていました。

「楽しかった」

「この企画をもっと早くしてほしかった」

「いろいろな子がいた」

「子どもの元気さがよくわかった」

「子育ての視野が広がりそう」

「不安そうな子が気になる」

「子どもがせがむからどうしても参加しなくてはならなくなる」

「親子とも休んではいけないか」

等々の声や手紙を頂き、 家庭の事情によりいろいろな思いがあることも伺うことができました。


そして、次が全世帯に出したアンケート結果を基に今回出した手紙です。

実物はB4の裏表に刷ってあります。 (縦書きの段組でしたのでレイアウトはだいぶ変わってしまいました)

「なかよし保育の見直しについて」

(1ページ目)

日頃より、園へのご協力感謝しております。 さて、4月より始めたなかよし保育ですが、

子どもたちの反応から保護者の方の戸惑いが聞かれ、 7月は子どもたちだけでのなかよし保育を行いました。

そして7月の『なかよし保育通信』でアンケートをお願いし、 メールを含め八十九通という様々な本音の感想やご意見をいただきました。

ありがとうございました。

子どもたちの様子、保護者の方々の思い、 園の思いを重ね合わせ、今後のあり方を提案したいと思います。

『アンケートより』

【子どもの気持ち】

「親が来る子はとても楽しそうでいいと思うが、来ない子は元気がないようでかわいそう。」

「なかよし保育以外の日も来て欲しいと泣く。」

「子どもだけでやった方がよい。」

【下の子を連れてきて・・・】

「園になれて楽しんでいた。」

「下の子に振り回された。」

「ごはんを食べるのは大変だった。」

「下の子がいるため、参加できない。」

【保護者の気持ち】

「親も子も交流できて良かった。」

「なかよし保育をきっかけに子どもとのつきあいを見直すことができた。」

「疲れた。」

「他の子とどのように接したらよいか分からない。」

「他の子の名前が分からない。」

「親と子が離れられない。」

「毎月は負担だ。」

「子どもが園から外へ出たら誰が責任をとるのか。」

「親が参加できない時は、子も休ませるしかない。」

「親以外の人と親とでは、接し方に差がでて子どもに良くない。」等々。

 次ページも含め、たくさんの思いをいただきました。   

【なかよし保育を始めた思い(主旨)】

◎ いろいろな子どもの様子を知ることで、子育てへの不安や悩みを解消の方向へ向けたり、

   子育て意識の向上を図りたいため ◎親子または家族のみでの子育てに対する負担から、親も子も脱却し、

   もう一度、近隣地域の人と関わりながら、 親子共に育ち合える場のあり方を保育者・保護者・地域で考え合いたいため

【実施状況】

第1回なかよし保育(4/15) 参加保護者84名

◯遊んだ後は、昼食を持って親子で帰る

第2回なかよし保育(5/20) 参加保護者72名

◯遊んだ後は、保護者のみ帰る

第3回なかよし保育(6/3) 参加保護者76名

◯遊んだ後は、子どもたちと一緒に食べる。

第4回なかよし保育(7/15)

◯子どものみで行う

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【Tくんママ】

園でだれと遊んでいるのかが、なんとなくわかり、 仲間意識の芽生えを肌で感じとることができました。

(家での話題で登場するお友達の顔を改めて親がわかる良い機会だと思います。)

共働きで、日常の送迎をできない母親にとっては、 お母さまとの情報交換の場としても活用でき、これからもできるだけ参加したいと思います。

【Mちゃんママ】

未入園の子が「保育園ってどんな所かな?」っていう体験みたいに 行かせてもらえるところがとても良く思えます。

いろいろ問題点や反対の意見もあるようですが あれこれ試してみながら「なかよし保育」は続けていってほしいです

【Nちゃんママ】

園の思いはお話しやお手紙などでよく分かります。 が、それを負担に思っている親が多いのが現状ではないでしょうか。

参加は自由といっても子供がかわいそう・・・と思うと無理しても参加するか、 都合がつかなければ親子そろって欠席するか。

親の気持ちはいいとして、子ごもにはいくら言い聞かせても理解は難しいのではないでしょうか。

親が参加しない子にがまんさせるのはかわいそうです。 子どもにがまんさせちゃいけないと思います。

それなら「なかよし保育」はどんな風になれば良いのか、 私自身もこれという答えはでませんが・・・

【Yちゃんママ】

今まであった行事ではなく新しい行事として取り入れていくので、 まだまだ発展途上で形もあやふやなのは当たり前だと思います。

どんな形で定着させていくのかどう定着させたらいいのか、 みんながそれぞれの立場で考えている。

でも、たくさんの人が文句ばっかり言ってそれを意見だと思いこんでるふしがある。

文句は意見ではなくて解決すべき問題であるのに。

文句を言うだけじゃなくて、だったらどうしたらいいのかを親が考えるべき。

【Aちゃんママ】

やはり親が来ている子どもはとても楽しそうだが、 来ていない子供にとっては最悪の一日になってしまうと思う。

前日から「明日嫌だな」とか思うのではないか。

結局自分の子供と遊ぶのなら普段でもできるのではないかと思うし、 他の子供とも遊ぶ機会はあるので無理にやらなくてもいいと思う。

また土曜日に半日とはいえ、 仕事も子供とも完全に離れた自由な時間が持てることで、

心のバランスが保て、イライラせずに優しく子供と接しられると思うので、 あまり行事をつめすぎられると少しつらい。

でもみんなでワイワイやるのはいいと思うので、 本当にやりたい方だけ、なかよしクラブとして、交流会を開いてみたらと思う。


園としても、4〜6月となかよし保育を続けたものの、 親子で遊ぶ事がどうしても主体となってしまい、

普段忙しい保護者の方とあそぶ機会がなかなかない子どもたちにとって それも無理もないことだと理解できました。

保護者の方にとっても、特に新入児の保護者の方は、

園で自分の子がどんな風に過ごしているのかという思いの方が強かったと思います。

『なかよし保育』は例年の親子で活動する『保育参観』とは意味を違えて実施しました。

でも、今現在の地域の状況や子育て事情から、時期尚早であり、 何より子どもたちに不安を与えてしまったと思っています。

保護者の方にもそれぞれの家庭事情の中、 ご協力をいただきながらも無理をさせてしまったと思います。

今後のなかよし保育のあそびは、とりあえず7月同様子どもだけで行う予定です。

しかしながら、この貴重な機会を元に今後保護者の方と 園とがより手をとりあって子育てを考えていける手応えも感じられました。

アンケートやメール以外にも、 送り迎えの時や行事の時などに、お話しさせていただくこともありました。

どの方も、とても熱心に自分たちの問題として共通のテーマで考えることで、

あちこちで保護者の方同士の輪ができていたのではないでしょうか。

(とても前向きに考えて、)なかよし保育の効果がここにもあったと思います。

『子どものために、園と家庭と地域がワイワイやりとりしていける』ような、 明照ならではの子育てのあり方をここから提案したいと思います。

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【お母さんの育児力は低下したか?】

ここ数年、テレビや雑誌、育児書などでいわれまくっているのが、

「お母さんがお母さんになっていない」「育児能力が乏しい」などなど。

小学校での学級崩壊や、話を聞いたり生活習慣などのしつけができていないのは、 幼児期の育児に問題がある、なんて騒がれています。

さて、これを聞いてどう思いますか。

このことについては、別の所でまたみんなであれこれしたいと思いますが、

私自身がみだしの答えを求められたら、やっぱり「ノー」です。

そもそも「育児力」って何でしょうか。

ひと言でいえば、子どもをしっかり育てる能力・技術。

でもその基盤にあるのは、子どもをかけがえのない大切なものと思える愛情。

それは昔と変わってないはずです。

そこから技術や能力は育まれるものだと思います。

ただ、もう一つの基盤である、お母さん自身の、周りの人とのかかわりは、

便利な世の中になり、お母さんだけでなく誰もができにくくなっている、 深刻な問題になっています。

周りの人とかかわることが苦手なお母さんが子どもを育て、 母子が過剰に密着したまま生活することで、

母も子も社会性が育たなくなるというケースもみられます。

そんな中、先日、お迎えのあと、 園庭で遊んでいたはずのAちゃんがお母さんの手を離れいなくなってしまうという ショックなことがありました。

膝がガクガク震えるお母さんの周りにいた他のお母さんたちが職員と共にあちこちに走り回りました。

そして、間もなくあるお母さんから「◯◯ちゃんの家に行ったってー」 「そこから△△くんの家へ連れてってもらったみたい」・・・

どうやらAちゃんはお母さんに言ったつもりが運悪くお母さんの耳に届かなかったようで、

◯◯ちゃんのお母さんも、確認しなかったことをとても恐縮されていました。

泣きながらAちゃんをただただ抱きしめるお母さんでしたが、 周りのお母さんたちの連係プレーを見て、

お母さん同士の輪“ネットワーク”の大切さを改めて感じました。

【愛情と人との輪が育児力を高める】

200世帯近くのお母さん方が、 ご縁あって○○保育園で共に子育てをする中で、

家庭や仕事の関係でいろいろな事情があると思いますが、

ひとりでも多くの方が、園を通じてより積極的に周りの人とかかわることで、 育児力が高まり、

子育てが子どもさんにとっても自分にとっても楽しいひとときになればと願います。

なかよし保育のアンケートには、要望やアイデアを出してくださった方もありました。

「あそびの講習をしてほしい(手あそび、あやとり、折紙など)」

「6月のなかよし保育の時に保護者の方が演奏して、子どもが歌っていたのが良かった。

他にも絵本の読み聞かせやお手玉など、 希望する保護者や地域の人がいたら、やる機会をつくったら」

「育児相談コーナーがほしい」 「お母さんや先生ともっと話がしたい」等々。

そこで、周りのお母さんや園と積極的にかかわりを持ちたいと思う方に向けて、

なかよし保育や普段の保育において、次のページのような企画を検討しました。

(4ページ目)

【なかよし保育 大人のコーナーの提案】

日にちは、年間予定表の「なかよし保育」の午前中です。

@「育児相談コーナー」

A「育児井戸端会議」 育児にまつわる話を、お母さんや保育者と語り合う。

B「お母さん同士の趣味の講座」

C「子どものあそびのコーナー(音楽・絵本読みきかせ等)」   

 おじいちゃんやおばあちゃん、地域の方にもお願いします。

設定でき次第なかよし保育の日の午前中に始めたいと思います

【その他の保育で】 (保育に行かせるアイデア、どしどしどうぞ!)

「子育て通信誌『みんな〜ネット』の定期発行」  

 おうちの方同士の育児を中心にした交流・情報通信 気軽に悩みを出し合ったり、それに関して答え合ったり。  

 うちの育児アイデアを紹介したり・・・

D「ボランマ・ボランパ大募集!」  

 決して魚のボラではありません。ボランティアママ&パパの略。  

 『できる時にできる人ができることをできるところで』をモットーに、 園のサポートをしてくださる方を募ります。

※まず会員登録をしていただきます。 サポートを頼みたい内容や日時を前もってお知らせします。

都合がついたら申し出てもらう方式。

例)運動会や遊戯会等の自分の子どもさんに支障のない範囲でのお手伝い着物の着付け、

髪結い、衣装等の仕立て、いも畑の草取り、いもほり等々 ご自分の特技、趣味を生かしてお申し出ください。

お母さん同士誘い合っても○

・・・・・・・・・・・・き・・・・・り・・・・・・と・・・・・・り・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上の@〜Dについて、質問のある方、興味のある方、参加したい、 やってみたいという方は、状況把握をしたいので、下記に記入して教えてください。

(花組横のアンケート箱に入れてください。)きちんとした申込書等は、後日配布します。

氏名                 園児名             

◯を記入してください。

(@ A B C D)について (興味がある  参加したい  質問したい)

質問したいことや他に良いアイデア、園で生かせそうな自分の特技など、余白にどうぞ。


お手紙を出したらさっそく、何人かのお母さんからお返事がありました。

メールできたお返事を紹介します。

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こんにちは。**です。またもやメールで失礼します。

みなこ先生が一生懸命力を込めて書いたという、仲良し保育のプリント、 とても読みやすくて、ためになる文章で、

しかも見出しまでかっこよくて最高でした。

今度私にも、エクセル&ワードの極意を教えて下さい、、、って、 私はマックだから、教えてもらっても使えないかな、、。

丁度、プリントをもらった日が月曜日で、ピアノのレッスンに、**ちゃん が来ていたので、

仲良し保育の事を、お母さんに、かいつまんで説明しました。

**ちゃんが卒園した後のことなので、 参加できなくて残念だわ〜〜とお母さんは言っていました。

私も**(自分の子ども)の時にあったらな〜っと思うわ〜! と二人で盛り上がっていました。

そして、本題です。

最後のページのボランティアですが、 とりあえず、なんでも、手伝える事なら何でもやりますので、 いつでも呼んでください。

特技は双子の子育てと、バンド活動取り仕切りです。

それでは、メールで失礼します。

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これからも、試行錯誤をするとは思いますが、

親御さんや地域の方々と手を取り合いながら、子どもたちのことを考えていきたいと思います。