心ってどうやって育つの?

保育者は、幼児期における直接体験の大切さや 五感(視・聴・臭・味・触)の重要性はイヤというほど分かっています。

「子どもはお日様と風と水と土があればいい」という先生さえいます。

「小動物飼育イコール『情操教育』というのもよく聞くことです。

これらは一見もっともなことで、きっとみなさんも納得のいくことではないでしょうか。

自分のお子さんをよりよい環境で育てたいと思っている親御さんも多いと思います。

では、本当に自然の中で育ち、五感を鍛え、小動物を飼えば、 子どもは人や動物、そして自然に優しい心豊かな人間に育つのでしょうか。

実は育たないのです。 これは、断言してもいいくらいです。

どうしてか? それは、僕が直接体験・小動物飼いまくりの見本のような男だからです。

毎日、朝から夕方まで野山を駆け回り川で遊び、 犬猫からザリガニ・亀・鳩まで飼っていました。

お宮さんの木の上からお寺の縁の下まで、秘密基地があり、 いつも友達と悪さをしては喜んでいました。

しかし、犬猫などはかわいがっていましたが、 カエルやクモ・セミ・カマキリは殺しまくっていました。

カマキリを憎んでいたのは理由がはっきりしています。

当時テレビでやっていた「みつばちハッチ」で、 いつもハッチたちを殺そうとしていたからです。

カマキリにしてみればとんだ災難でした。

クワガタは捕るのが難しかったので大事にしていましたが、 カブトムシはどこにでもいたので、

いつもノコギリクワガタに頭を挟ませて殺していました。 神戸の事件の子も犬は大切にしていたのに猫は殺していたでしょう。

子どもの心にはこういう事って、矛盾ではないんですよね。

生き物と接すれば、生き物への愛情が育つと考えている人は、 実際に育てたことがない人か、よほど単純な人のような気がします。

自然の中で育つと自然を大切にするようになるというのもウソです。

僕の周りの大人は、それこそ自然の中で育ったような人ばかりでしたが、 ゴミやタバコの投げ捨ては日常茶飯事でした。

それを見ていた僕たちも似たようなことをしていました。

自然がたくさんあったので、少しばかり人間が汚しても気にはなりませんでしたが。

確かに、自然と親しむことや五感は大切です。

しかし、自然にふれあえば自然を大切にし、 生き物にふれあえば生き物への愛情が育つわけではありません。

心ってどのようにして育つのでしょうか?

僕は今では、もうクモもカエルもセミもカマキリもカブトムシも殺しません。

当たり前の話ですが、心を育てるものは心しかありません。

先生がザリガニを大切に育てている心にふれる。

テレビでクモの一生懸命に生きている姿を見て、その姿に感動している友達に共感する。

じいちゃんが物を大切にしている姿を見て自然への敬意を思う。 蛇を殺そうとしていたら止めに入った兄ちゃんの怒りを思う。

(これ、僕です)

人は育つ過程でいろいろな人のいろいろな心に出会います。

それは、プラスになることも多いかわりに出会いたくない心(悪意)にも出会います。

そして、心と心が出会ったときに初めて人の心は育ちます。

いくらザリガニを飼っても先生が「与えておけばいいでしょ」と思っていれば、 その心を子どもたちは見逃しません。

小動物飼育は、ひとつのきっかけにすぎません。

自然は体と心の成長に必要なものですが、 それが直接、心の成長に結びつくわけではありません。

心を育てるには心しかないのです。

いくら良い環境を整えても、そこに「心」が存在しなければ意味のないことです。

大人が、これだけのことを子どもにしてやっているという安心感を得るだけです。

それが分からない人は、きっと子どもの心が見えていないか、 分かっていると思い込んでいるのではないのでしょうか。


ここで、「ゆかいなな仲間たち」の報告をさせていただきます。

10年度の「ゆかいなな仲間たち」が、ついに解散となりました。

最後のゆーくんがもう一月ぐらい生き生きと友達と関わることが出来ています。

お部屋の隅で泣いていることもほとんど見かけません。

最初の頃、ビデオを撮りにいくと先生が、「見て!見て!」という感じで、 友達と遊んでいるところを目配せしてくれましたが、

今ではもう当たり前の光景です。 集団生活のルールみたいなものが分かってきたようです。

どんなことをすれば友達が嫌がり、 どんなときには我慢しなければいけないかが分かってきたようです。

一人でいるよりみんなでいることの楽しさに気がついたようです。

他の子どもたちもそうですが、4歳児は、自分を表現する楽しさを満喫する時期です。

3歳児に比べると明らかにいろいろなことが出来るようになります。

いろんな事に挑戦してみようと思うようになります。 この時期に思いっきり暴れてほしいと思います。

そうすると不思議に年長さんになると落ち着いてきます。 先生と話している内容を聞くと、もう大人の会話をしていることもあります。

きっと、自分に自信がもてるようになるのですね。