【仕事が休み?】 (2001/9)

ある保育士さんから質問を受けました。

>仕事が休みの日に、園に子どもを預けにくる親御さんについて

>どう感じますか?


本来、保育園は「保育にかける子ども」を預かる施設です。

ですから、親が仕事がない日は、子どもを預からない園もあります。

(当園では預かっていますが・・)

土曜日などは、出勤証明書を事業主に書いてもらい、

提出しなければ子どもを預からない園もあります。

その一方で、この頃は地域の子育てセンター的な役割も増えてきました。


そして、保育園も淘汰される時代になりました。

「選ばれる保育園」になるためには、

親の要望をどんどん受け入れていかなければいけないと

考える園長先生もいる一方で

「親の要望どおりにする事」が「子どものしあわせ」につながるのか?

「保育園は誰のためにあるのか?」等、考えている園長先生もいます。


そんな中で「親の子どもとの関わり方」にも悩んでいます。

園が多種多様なサービスをすればするほど、

「本来あるべき親子の関わりを奪ってはいないか?」

「手抜きの子育てを手伝いしているのでは?」と。


私たちはすぐに「子どものため」って簡単に言いますが

「子どものため」って何でしょうか?


「子どものため」って言いながら子どもを思い通りに

動かしている先生もいるし、

「子どものため」って自分の思いばかり押しつけている親もいるし、

「子どものため」って言いながら

実は「自分のため」だったりする先生や親もいるしなー。


仕事と家事に追われて疲れている親に、

「もっと子どもと遊んであげて下さい」って言うのと

「良いですよ、今日はゆっくり休んで下さい、

でも、お迎えに来たら子どもをしっかり抱きしめてやって下さいね」

って言うのとでは、どちらが「子どものため」になるのかな?


子どもと関わらずに、自分本位で生きている親に、

「もっと、子どもと遊んであげて下さい」って言うのと

「子どもはいつでも預かりますから、

お母さんの時間を大切にしてください」って言うのでは

どちらが「子どものため」になるのかな?


園側の都合や常識をただ親に押し付ける事が

「子どものため」になるのか?


子どものことを真剣に考えている人の言葉って

心にも伝わってきますよね。

反対に、どんなに良い事を言っていても

違うところに本心がある人の言葉は、素直に聞けません。


やはり、最終的には、園(先生)と親御さんとの

信頼関係が大きいと思いますよ。

しかし、信頼関係は努力せずに出来るものではありません。

園側も親側もそれに見合う努力が必要です。


保育園って誰のためにあるのでしょうか?

そんな事も考えさせられた質問でした。


「誰のための保育園?」


保育園は、親のためにあるのではありません。

(もちろん、制度的には、働く親御さんのためです)

やはり、第一には 子どものためにあると考えています。


保育園は、子どもの成長にとって必要な場所です。

親が働いているとかいないとか、

こどもの面倒が見られないとかではなく、

子どもが成長していく上で必要な体験が出来る場だと思います。

(それに値しない園は、確かにありますが・・)

もちろん制度的には「保育に欠ける子」を預かる施設ですが

僕はそのように考えています。


保育者は、子どものことを第一に考えています。

親の都合のことばかりを考えているようでしたら

保育者ではありません。

それと同時に、子どもという存在が、単独で存在するのではなく、

それぞれが違う家庭環境の中で育っていることも

理解していなければいけません。

残念ながら子育ての楽しさに気づいていない親もいます。

(近年、特に増えてきました)

そのような親には、

どうしたら、子育てをもっと楽しんでもらえるか、

素晴らしさに気づいてもらえるかを

あらゆる方法で提案し続けなくてはいけません。


良い保育者は、子どもの気持ちをいつも考えています。

この子はどうしてこんなことをするのだろう?

自分を表現できているのかな?

何が嬉しいの?何が悲しいの?


良い保育者は、親御さんの気持ちも理解しようとします。

どうしてこんな事を言うのかな?

何を不安に思っているのかな?

今、自分に出来ることは何かな?


親に文句を言うことは簡単です。

先生に不満を感じることも簡単です。

しかし、お互いが自分の立場しか考えられないなら、

出会った意味がありません。

せっかく子どもという「素晴らしい架け橋」で

出会った意味がありません。


親は、子どもを産めば「親」になれるわけではありません。

子どもと共に喜び、泣き、振り回されながらも、

しっかり向かい合って生きていく、

お互いに成長しあいながら一緒に生きていく、

そんな積み重ねがあってこそ、親になれるのです。


保育者も、資格を取ったから「保育者」になれるわけではありません。

子どもたちに、そして親御さんから「せんせい!」て

呼ばれるためには、それに見合った努力が必要です。

それに見合った、子どもと親御さんを「思いやる心」が必要なのです。


保育園は、親のためにあるのではありません。

しかし、保育園は、子どもの成長に必要な場所であると共に、

子育ての楽しさ、素晴らしさを再確認する場でもあるのです。

勇気づけられ、励まされ、

子どもを産んで良かったと再確認できる場でなければならないのです。


子どもが成長していく上で必要な体験が出来る場だけでなく、

親御さんにとっても、

子育てがより楽しくなるような

素敵な体験が出来る場でなくてはならないのです。