5月28日に中部モトクロス選手権第5戦がヤマハスポーツランドダイイチであった。
第3・4戦と出場することが出来なかったショウゴは燃えていた。
というよりIBになれるか焦っていた。
後半戦は、保育園の行事やPTAの資源回収があるので、よく出られてあと3戦だ。
IB自動昇格は、噂では200ポイントと言うではないか。(実際よく分からない?)
今までの2戦で獲得したポイントは、65。
あれだけ転ければ4レース走ってもこんなもんだろう。
相変わらず勉強もダメで彼女の親には、「あんなおバカさんとは付き合ってはいけない」と言われているそうではないか!
悲しい話だ。
ショウゴよ、もうお前に残されているのは、モトクロスしかないんだぞ!
父ちゃんも今回は気合いが入っていた。(来年は、親子でIBを走るつもりでいるのだ)
しかし、天気予報は雨。
ショウゴは、二週間前の全日本(広島)で、ドロドロの弘楽園をNAオープンで3周しかできなかったような男だ。(1周目は、ショートカットするので実質2周半だ)
ヨッシーは、全員ラップの9周だぞ。(ちなみに父ちゃんは、IBの予選で二周しかできなかった)
土曜の夜から日曜日の朝まで雨という予報を聞いてさすがの父ちゃんも焦った。
今のショウゴなら転びまくって終わるのは、目に見えている。
その横でタカは、雨乞いをしている。
晴天だと全然かなわないちびっ子たちが、雨には転びまくってくれるからだ。(足が着かない!)
タカの真剣な雨乞いを横目に見ながら父ちゃんは急いで’06CRFのタイヤをレインに替えた。
それも前後共だ。自慢じゃないが、新品前後のレインタイヤなんて父ちゃんの長いレース人生の中でもないことだ。
父ちゃんのタレパイ号には、何回か使ったレインタイヤを組んだ。
隣で変な踊りを踊っているタカの姿を見ると哀れになって、CR85にも前後新品のレインタイヤを組んでやった。
(もうブロックもあまりないようなタイヤだったので、どちらにせよ変える必要はあったのだが・・)
雨対策だけは万全な状態で父ちゃん一家は、三重県の員弁に向かったのだった。
夜中に何回か目が覚めればやはり雨音が聞こえていた。
朝、恐る恐るコースを見ればグチャグチャ、でも雨だけは止んでいた。
まずは、タカのジュニアクラスだ。こういう時のタカは強い。
転んでいる子を次々に抜き去り、いつもは相手にもならない速いちびっ子たちをラップしそうな勢いだ。
結局、最終コーナーで抜かれて6位でフィニッシュだ。いつも13.4位をウロウロしているタカにしては上出来だ。
今年のジュニアクラスは層がべらぼうに厚い。
もし、父ちゃんがタレパイ号でジュニアクラスを走っても晴れなら10位くらいを走るのが精一杯だろう。
トップファイブは、IBクラスで走っても結構良いところを走るほどだと思うぞ。
確かにタカは速くなっている。
そして、いよいよショウゴの番が来た。
NB時代は、このコースでは、ホールショットを連発し「スタートなら誰にも負けん!」と豪語していたが
NAになったとたんに、出遅れては第1コーナーでぶつけられて転倒!を繰り返し「もうスタートは嫌いだ」と落ち込む始末だ。
こういう時の長男は弱い。レース前の、気でもう負けている。
「練習走行を見ていたが、お前はみんなより速かったぞ、ヨッシーとだってそんなに離れていなかったぞ」と
スタートに並んだショウゴにつぶやいてやった。
単純なショウゴは「そうか、そういえばヨッシーとはそんなに離れなかたったな!」とやる気満々になっていく。
(実際、ドロドロの練習走行を見ていたが、ショウゴは結構良い走りだった)
そして、スタート。あれほどアクセル操作に気をつけろと言ったのに、リアが流れたあげくに隣の米田さんにぶつかる始末だ。
(米田さんは、父ちゃんよりは若いがもう年寄りなんだ、年寄りには優しくしなければならんぞ)
「あ〜!」父ちゃんのあきらめに似た声が漏れた時、ショウゴは、第1コーナーをなんとか14番手で回った。
ここからショウゴは、がんばった。
次々と抜き去り、10分過ぎぐらいには4位につけていた。
いつもならここまでの追い上げで疲れ切ってしまうのだが、この日は違った。
すぐに3位の子に近づきラインをあちこちで変えながら攻めている。
そして、ついに3位!凄いぞショウゴ!!このスピードならラスト一周で2位のロウタにも絡めそうだと思った矢先、下のコーナーで転倒。
結局5位でフィニッシュだった。
帰ってくるショウゴに「転倒しても5位なんて上出来じゃないか!」と慰めようとしたら
「チクショー、ワザとぶつけられた」と怒っている。
どうやら一度抜いた相手に、無理に突っ込まれて両者とも転倒、相手の方が早くエンジンが掛かったそうだ。
「最初の1周とラストは、何が起こってもしょうがないんだ」と言う頃には、大分落ち着きを取り戻していた。
昼食を食べていると「オレ、次はいけるわ!ロウタにもついていけた」と話してきた。
ロウタは、NB時代のライバルだったが、NAになってからは、ショウゴの遙か前を走り、いつも2位を走っている子だ。
天才ヨッシーがいなければ、間違いなくNAチャンピョンだ。
そんなロウタにやっと挑戦する時が来たようだった。
二人の息子の頑張りを見て、父ちゃんも燃えていた。
IB2では、スタート15位ながらも次々と転倒者を抜きまくり、結局15位でフィニッシュだ!あれ?
ジュニアクラスの第2ヒートが始まる頃には、コースはベストコンディションに戻っていた。
すっかり気落ちしたタカは、10位だった。でもこのクラスで10位は立派だぞ。
ショウゴは、NAオープンのスタートでは、4位で第1コーナーを回った。
自信というものは恐ろしいものだ。
すっかり自信に満ちた走りになっている。
土曜日にタカの雨乞いの横で捨てられた子犬のような表情で空を見上げていたのが嘘のようだ。
あっという間に3位になり下のコースに消えていった。
この分なら2位で帰ってくるか?と最終コーナーで待っていたが、なかなか帰ってこない。
「転倒?」と思い始めた時、やっと13位で目の前を凄い勢いで去っていった。
「いけるいける!」と手をグルグル回した時、ゴーグルの奥にショウゴの目が見えた。
「あきらめていない!」その目はあきらかにやる気がみなぎっていた。
いつもなら焦ってしまいドタドタと走り自滅していくが、冷静に1台、また1台と抜いていく。
ラスト3周くらいで第1ヒートでぶつけられた子に追いついた。
父ちゃんならヘタなテクニックでやり返すところだが、ショウゴは違った。
ラインを変えて綺麗に抜くと2位を単独走行しているロウタを追い掛けた。
キター・キターー・キターーーー、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
そして、ラスト2周でロウタを抜くとラスト1周では、差を広げてフィニッシュした。
「やったな!」父ちゃんは、帰ってくるショウゴに言った。
赤い顔で汗だくのショウゴは、少し照れくさそうに笑うと「やっと自分の走りが出来た気がする」と言った。
舞台は出来上がった。最後のIBオープンでフィナーレだ!どでかい花火を上げて父ちゃん一家の一日を祝おう!!
さぁ、スタートだ。「グゥオオオオオオ・・・・!」父ちゃんの気合いと共に一斉にスタートだ。
第1コーナーには、6位ぐらいで入ったが回っている間に11位だ!
しかし、ここからが凄かった。
転倒している子を次々と抜き去り、11位でフィニッシュだ!あれ?あれれ・・・??