ナホがバイクを止めると言い出した。
そういえば、‘06年は、中部戦と全日本に参加することさえままならなかった年だった。
65のナホは、もちろん中部戦に出ることもなく、多度チャンピョンシップにたまに出る時しかバイクに乗っていなかった。
「レースは好きだから出る!」と言っていたが、練習してないものだから結果もついてこない。
ナホの練習にももっと付き合ってやれば良かったのだが、ポイントが掛かった中部戦で戦っている兄ちゃんたちと自分の練習だけで精一杯だった。
中部戦や全日本を行うコースでは、クラス分けでもしてくれないと65のナホでは危なくてとても一緒に練習も出来ない。
名阪スポーツランドで練習する時など、近くの駅にナホと母ちゃんを置いていき、二人はそのまま奈良の散策に行っていることも多くなった。
そして、父ちゃんの髄膜炎がとどめを刺した・・。気づけば数ヶ月間、ナホがバイクに乗らない期間が出来ていた。
この頃から、どこに行くのも家族一緒だった父ちゃん一家のスタイルにも変化が現れだしたのだった。
ナホにとっては、バイクを練習することよりも母ちゃんと一緒に買い物に行ったり、散策する方が楽しくなってしまったようだ。
「一人くらいは女の子が欲しい!」と願っていた母ちゃんだからナホとの時間は、大切にしたいようだった。
男の子が二人続いた後だったので、父ちゃんの渾身の一発で狙って創ったナホだ。
ちなみに、長男の誕生日は、5月8日(予定日は、5月9日)で次男は、5月9日。
長男だって、ホントは予定日通りに生まれそうだったのに、予定日が日曜日だったので陣痛促進剤を打たれて早めに出されてしまった。
(日本は、他の国と比べても日曜生まれが少ないそうだ。一説には、お医者さんが日曜日にはゴルフがしたいようで・・)
これは単なる偶然ではない。
もちろん狙ったのだ。
「アキちゃん(父ちゃん)、今日!男の子が欲しい!!」と母ちゃんが言うので「ウリャ〜!」と一発狙って長男が生まれた。
次男も、同じように「今よ!ショウゴには、2才離れた弟が必要!」と言われ「ウリャリャリャ〜〜〜!!」とまた頑張ったのだった。
(通称“一発狙いのアキ”と呼ばれている)
何故、5月生まれかというと、この頃が保育園の行事も少なく、新入児さんたちも慣れてくる頃だからだ。
生まれる直前まで、働いている母ちゃん(主任先生)なので、5月しかないのだ。
父ちゃんだってもっとナホとバイクで遊びたいが、段々と女になってきたのだからしょうがないとあきらめている。
中学生に近づいてくれば、自分の時間も欲しいだろう。
ひょっとすると、フルサイズのモトクロッサー3台とナホの65を積むだけで精一杯だった車を前に思い悩む父ちゃんの姿に同情したのかもしれない?
(バイクがジグソーパズルのようになっていて、毎回が職人芸のようだったぞ)
「ナホが85に乗りだしたら、誰かのバイクを降ろさなければならない!」と兄ちゃんたちとみにくい言い争いをしている父ちゃんを哀れに思ったのか?
しかし、ナホよ、もしまたバイクに乗りたくなったら言ってくれ。
とっても良いバイクがあるんだ。
赤くて可愛くてな、とっても乗りやすい150ccの4サイクルなんだ。きっと、お前も気に入ってくれると思うぞ。
とうちゃんも是非乗りたいと考えているバイクなんだ。
もちろん、母ちゃんに頼んで買ってもらいなさい。(もう父ちゃんには、お金がないから!)そうしたら一緒に乗ろうな!
そして、こっそりナホの枕元にCRF150のカタログを置いておく可愛い父ちゃんだったのだ。