ある日テレビを家族で見たら*「灯台もと暗し」という言葉を言っていた。
*(灯台 の真下が暗いように、身近なことがかえって気づきにくいことのたとえ)
すかさず父ちゃんがいつものようにうんちくを語り始めた。
「灯台もと暗しの“灯台”って何のことか分かるか?」
すかさずショウゴとタカが言った。
「そんなの島や岬にある灯台に決まっとるだ」
「ウヒャヒョヒョヒョ・・・・」父ちゃんは、勝ち誇った笑みをこぼしながら言った。
「実は、この場合の“灯台”は、昔の室内照明器具で上に油皿をのせ、灯心を立て火をともす木製の台のことなのだよ、ウヒャヒョヒョヒョ・・・・」
父ちゃんの勝ち誇った笑いに母ちゃんが突っ込んだ。
「でも、岬の灯台だって、下は暗いから意味は同じじゃない?」
「そうだ、そうだ」「意味は同じだからいいじゃないか!」ショウゴとタカも納得出来ないとばかりに騒いだ。
その時だった。ナホがポツリと言った
「え〜、ホント?私ずっとモトクロス場の事だと思っていた!」
一同「???」
「だってトウダイモトクロス場でしょ?」とナホ。
一同「“灯台もと暗し”と“トウダイモトクロス”・・・お〜」
そうか、ナホよ、お前は、いつもモトクロスのことを考えているんだな。
さすがは、渾身の一発で創った俺の娘だ。
また、バイクに乗りたくなったら言いなさい。
赤くてちっちゃくて可愛いバイク(CRF150)が欲しいと母ちゃんに頼むんだよ。
ハンドルとサスは、お前が大きくなっても良いように大人用に代えてあげるからね。
父ちゃん使用になってしまうが、気にするなよ。
そして、そっとナホの学生鞄にCRF150のカタログを入れておく、お茶目な父ちゃんだった。
PS
そう言えば、父ちゃんと母ちゃんが結婚前に鈴鹿サーキットにロードレースを見に行った時のことだ。
「ニール・マッケンジーもなかなか速いな!」と父ちゃんが言ったら
まだ、若々しくて初々しかった母ちゃんが言った。「え、新沼謙治って歌だけじゃなくってバイクにも乗るの?」
父ちゃんは優しく演歌歌手の新沼謙治とライダーのニール・マッケンジーの違いを説明した。
「え〜ウッソ〜」母ちゃんは可愛く微笑んで父ちゃんを見つめた。
見つめ合う父ちゃんと母ちゃん。その横をニール・マッケンジーのバイクがすごい勢いで走り去っていった。
きっと、当時は、日本中のサーキットでこんな会話が初々しいカップルの間でされていたのであろう。
ナホの一言で「あ〜、こんな時代もあったんだな〜」と思い出したのだった。
この話題が分かる人はかなりの年寄りだと思う。
でも、今では考えられないぐらいバイクも公道を走っていたし、人気もあったのだ。
平 忠彦なんて天下の資生堂のCMにも出ていたんだぞ。
8耐、スーパークロス、エンデューロ・・それぞれのブームがあったのだが、日本では、今ひとつバイク文化が根付かない。
それぞれのブームの中で峠を攻めに行ったり、神宮でスーパークロスを見たり(日本で初めてウェーブをやったのは、この時だと言われている)
一クラスが200台近くもあったエンデューロに出たりと経験してきた父ちゃんにとっては、少し寂しい。
世界選手権をやるあるコースでは「あのコーナーは、代々○○家が旗振りをしている」なんて事もあるようだ。
エバーツなんて国民的な英雄だしな。
タカが、中学校に来ている外人英語教員に「エバーツって知っている?」って聞いたらモトクロスの話題で盛り上がったって言っていたぞ。
全日本モトクロスなんてあんなに面白いのだからどうしてもっと人気が出ないか不思議なくらいだ。
仮面ライダーだって、バイクに乗っているしな。
もう少し、バイクが市民権を得ても良いと常々思っている父ちゃんであった。