[受験だ〜]('07/9)

平成19年2月11日(日)中部戦第1戦(天竜川)。ついに‘07シーズンが始まった。
しかし、そこにはジュニアから年齢でNBに上がった(ポイントではもちろんダメ)次男のタカの姿はなかった。
まだ、中学三年生なので受験が残っていたからだ。
タカだけではなく、ルーキーゼッケンの01番のサカチャーも02番のユウヤも来ていなかった。
(ちなみにタカは、88番)

みんなも受験勉強しているんだろうな。
でも、03番のアレジは、しっかり出場して優勝していた。アレジ大丈夫か?

3月には、いよいよ希望校の高校受験が始まった。
長男より遙かに要領が良いタカは、内申もそこそこあり、試験もそこそこ出来、後は、面接だけとなった。

しかし、タカには、部活の成績だってたいしたものはなく、生徒会活動等のウリもない。
学校では、そこそこ頑張っているようだが、家ではいつもゴロゴロしているのがタカだ。

そんなタカにとって、最後の試練が面接だったのだ。
だが、タカには度胸と要領の良さという武器がある。
これは、長男のショウゴにはないものだ。

タカに聞いた話では、やはり初めは質問に対してたいしたことも言えなかったようだ。
面接官:「部活で一番大変だったことは何ですか?」
最後は、部活の話になった。卓球部だったタカには、もちろんウリはない。

タカは、ここで最後の勝負に出た。
タカ:「部活は楽しかったのですが、一番大変だったのは、部活とバイクとの両立でした
面接官:「バイク? 君、バイクのレースをやってるの?」
タカ:「はい、モトクロスを3才からやっています、今は、父や兄と一緒に中部選手権というレースに出ています」

この時、タカは「キターーー、引っかかった!」と思ったそうだ。
何の成績も残せなかった部活からバイクの話に移った瞬間だった。
面接官:「今までで一番良い成績は?」
タカ:「はい、中部選手権で2位になったことです、中部選手権は、愛知、静岡、三重、岐阜、石川、
長野県くらいが入っています。」と聞いてもいないことまでスラスラと答えたそうだ。


この話を聞いた時「あれ?」と思ったぞ。
だって、タカのジュニア時代(85ccクラス)の成績は、無惨なものだったからだ。
とても2位なんて取ったことはないはずだ。
そう言うとすかさずタカは、「65の時に一回2位を取ったから嘘じゃない!」と胸を張った。
「2位?」
そう言えば確かにそんなことがあった気が・・。


あれは大雨のヤマハダイイチスポーツランド(員弁)。
このコースは、粘土質で雨が降ると大変!1週も出来ずにレースを終えてしまうヤツが続出するというコースだ。

この時のレースでは、父ちゃんだって半周でリタイヤしたくらいだった。
いくらショートカットしたといっても65なんかで回れる状態ではなかった。
あまりに酷い状態だったので、バイクがスタックした時には、
保護者が手助けしても良いという特別ルールになったくらいだ。
こうなるとはっきり言ってオヤジの体力勝負

オヤジ達は、あちこちで転びまくり、スタックする我が子を追い掛けては
バイクを押しまくるという凄いレースになったのだ。


幸い、この時の父ちゃんには、まだ元気があった。
他のオヤジ達が、泥に足を取られて、自分がスタックしている中で
ひとり水を得た魚のように泥んこになりながらバイクを押しまくった。


しかし、さすがの父ちゃんも大きなテーブルトップでは、足が滑ってとても上がれない。
空転するタイヤ。滑りまくる父ちゃんの足。このままではエンジンも父ちゃんも焼き付くぞ!!!!


精根尽きて「タカ、もう良いだろう、リタイヤしよう」と言うと「イヤだ、絶対に登る!」と言い張る。
「どんなに滑っても絶対にアクセルをゆるめるな」父ちゃんはそういうと最後の力を出して押した。
タカのバイクは、リヤタイヤをクネクネと振りながら巨大なテーブルトップを登っていった。
その後も転倒しながらもタカは、あきらめずにアクセルを開け続けた。


やっと2周を回ったところでチェッカーが振られた。
コースには、何台もの埋まっているバイクと天を仰ぎながら途方に暮れている泥だらけのオヤジ達が、
雨に打たれながらゾンビのように立ちすくんでいた。壮絶な風景だった。
パドックにもすでにリタイヤしている泥だらけのバイクが転がっていた。
結局、3周した子が1位でタカは2位だった。


65でもいつも後ろの方ばかりを走っていたタカは、大きなプラモデルの賞品を貰ってとっても嬉しそうだった。
その笑顔を見ていたら泥との戦いも忘れてしまった。


しかし、自信というものは恐ろしいものだ。
ジュニア(85)に上がったタカは、晴れの日は相変わらずの成績だったが、
雨になると生き生きとして転んでいる他の子たちを安全運転で抜いていくのが得意となった。


「そうだな、確かに嘘ではないな」
高校受験の面接の話から、嬉しそうに賞品を抱いている小さなタカの笑顔を思いがけずに思い出したのだった。
でも、ホント良い笑顔だったな〜

PS

タカは、何とか希望校に入ることが出来た。
しかし、ショウゴ同様、授業についていくのがやっとのようだ。
いや、ショウゴは、進級さえ危ぶまれたので、それよりはマシか?こいつは、要領だけはあるからな。


あ、ここまで書いて気づいたことがあるぞ。
65ccは、中部戦の正式種目ではなく、併催クラスじゃなかったか?