[風呂のオヤジ]('08/1)

もう’08年の1月末というのに、’07の5月の話というのも間が抜けているがご勘弁を・・。

今回の弘楽園は、一泊二日の予定だ。
せっかく広島まで来たのだから二日間はみっちり走ろうという計画だった。
そのくせ、堅い路面に手こずり、あっという間に疲れ果ててしまった三人のトンチンカン親子。
自分で書いていても情けなくなってきたぞ!

しかし、トンチンカン親子達は、結構浮かれていた。
もちろん、仕事で来られなかった母ちゃんとナホがいないからではない。(笑)
弘楽園に来ると家族でゆっくりとお風呂に入って、レストランでいろいろと話をしながら食事をするのが結構楽しいからだ。

他のヤツらが目をつり上げて練習している時にサッサと後片付けをしてしまい、やって来たお風呂はまだ空いていた。
そして、湯船にゆったりとつかり、今日の成果を話し合った。
といってもラムソンも飛べず、コーナーも攻めきれず、堅い路面とデコボコに手こずっただけの三人であるが
わざわざ広島まで来たというだけで少し速くなった気がしてしまうお気楽な親子だったのだ。

毎日せかせかと生きていて、「死に急いでいる!」と言われている父ちゃんにとって
こんなにのんびりと湯船につかることはない。
家では、烏の行水!といつも言われているくらいだ。
「ホントに洗っているの?」と母ちゃんに疑われ、「絶対に洗っていない!」とナホにけなされても
風呂から出た後にもいろいろとやりたいことがあるのでゆっくりと風呂なんか入っていたらもったいない気がしてしまう。
ちなみに父ちゃん一家は、「マグロ一家」と親戚には呼ばれている。
マグロは、ずっと泳いでいなければ死んでしまうそうなので、いつもせかせかと生きている父ちゃん一家を例えているそうだ。

しかし、ここは、遙か彼方の広島のお風呂。
もう風呂に入ることしかない!
他には何にもやることがないのだ。
その上に色気づいてきた息子達は、「どこをそんなに洗うの?」と思うくらいにあちこちを洗っている。
そのあげくに鑑に向かって「モヒカン!」とか言って喜んでいる。

いくら「たまにはのんびりしたい!」と思っている父ちゃんでも、これ以上は付き合いきれん。
先に出てコッカールームで着替えていると見たことのあるオヤジ達二人が入ってきた。

一人は、息子二人がワークスライダーのオヤジでもう一人は、息子がIAのオヤジだった。
一緒の中部勢なのでこのオヤジの子どもたちも80の頃から知っている。
(その頃、うちの子達は65や50だった)
でも、当時から輝いていた子どもとオヤジだったので、恐れ多くて父ちゃんのようなトンチンカンマグロ親子は近づけなかった。

端の方でコソコソと着替えている父ちゃんに気づかぬままオヤジ達は話し始めた。
「お宅の息子達は凄いね〜、将来楽しみだね〜」と息子がIAのオヤジが言うと
「あいつらは、もう他人と一緒や!」とワークスライダーのオヤジが答えた。
「うちの子も来年は、モトクロスを止めて外国へ行くという話やわ

いつも羨望の眼差しで見ていたオヤジたちだったのでちょっと意外な感じがした。
考えてみれば、IAになればチームで行動することも多い。
ましてやワークスならなおさらだ。
いつまでも親子でモトクロスなんて出来るはずもない。

このオヤジ達が、子どもたちと一緒にモトクロスをやっていた頃を思い出した。
トップを走る息子にサインボードを見せるオヤジ。
そのサインにコクリと頷く息子。
子どもがジャンプで吹っ飛んだ時には、泥に足を取られながらも必死に駆けつけていた。
あちこちのコースで練習して、全国を転戦して・・。
きっと密度の濃い時間を親子で過ごしてきたのだと思う。

ひょっとして父ちゃんにとっては、今が一番幸せな時かも知れない?とその時に思った。
どうしたって子どもたちは自立していく。
普通の親子なら、息子が高校生にでもなればそんなに話もしないだろう。
でも、モトクロスをやっているおかげで、高校生3年になっても一緒に夢を追い掛けている。
うちの息子達は、才能もないのでもう暫く親子でやっていくしかないだろう。

その時、ショウゴとタカがやっと出てきた。
「アキ、ショウゴが風呂で屁をこいた!」
「あれは洩れただけだ!」
「あ〜うるさい、さぁご飯を食べに行くぞ」と父ちゃん。

父ちゃんに気づいたオヤジ達は「まだ乗っているの、若いね〜」と言って風呂場に消えていった。
しかし、その後ろ姿は、子どもを一人前の男に育て上げたという父親の誇りが漂っていた。

そんなオーラを放っている後ろ姿を眺めながら
父ちゃんが、こんな後ろ姿になることはないだろうな〜」と思ったぞ。