|                 [イヤな予感?]('08/5)
 ショウゴが11歳で鎖骨を折ったときには、一ヶ月でバイクに乗れた。 いくら年を取っている父ちゃんでも二ヶ月もあれば十分だと思っていた。 しかし、世の中は甘くなかった。
 
 実は、最初に医者が肩をグッと広げてくれたときからイヤな予感がした。
 
 「いてててっってえ〜」と父ちゃんが呻くとすぐにやめてしまったからだ。
 ショウゴの時は、もっと勢いよく肩を広げて鎖骨をまっすぐにしていた。 確かに、父ちゃんの鎖骨も動くのが分かったが、どう考えてもショウゴの時のような感じではない。
 
 案の定、一週間後に撮ったレントゲンでは、折れた鎖骨間が1cmほど離れていた。
 これでホントに骨がくっつくのか?
 父ちゃんは、レントゲン写真を見ながら不安に思った。
 
 どう見たって3cmくらい骨が重なっている上に、間が1cm以上も離れている。
 
 若い女医さんは、(ホント市民病院は、若い医師が多い!)もうちょっと鎖骨バンドをきつくすれば大丈夫だという。
 
 骨が重なっている部分が多いので、左肩が右肩に比べてもあきらかに短い。
 
 本当に大丈夫か?
 
 
 一月後にレントゲンを撮ってもやっぱり1cmくらい離れたままだった。
 
 「レントゲンには写らない軟骨がきっと出来ているはずだ!」父ちゃんは、一人そう思い込むしかなかった。
 
 二ヶ月後にレントゲンを撮ってもやっぱり1cmくらい離れたままだった。
 
 もうきっと軟骨でひっついているはずだ。
 
 日常生活を鎖骨バンドさえしていれば、何とか出来るようになっていた父ちゃんは
 
 ついに我慢出来なくて恐る恐るバイクに乗ってみた。
 
 もちろん、ジャンプはなしだ。
 
 
 ゆっくりといつもの河川敷のコースを回ってみる。
 
 いけるじゃん!
 
 ちょっとスピードを上げてみる。
 
 いいじゃん!
 
 ちょっとジャンプも飛んでみた。
 
 俺は大丈夫だ!
 
 
 ジャンプを飛び出したから、自ずと直線スピードも上がりだした。
 
 骨を折る前と同じ感じで走れるような気がした。
 
 俺ってひょっとして天才?
 
 
 前に小さなギャップが見えた。
 
 父ちゃんは、いつもの通りに何も考えないで通過した。
 
 その時、瞬間的にハンドルに小さな衝撃が走った。
 
 グキッ!
 
 折れた鎖骨が動くのが分かった。
 
 「いててってっって〜〜」
 
 
 やっぱり鎖骨は、ひっついてなかったんだ。
 
 
 そしてついに三ヶ月が経とうとしていた。
 
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