[5%!]('08/5)

もし、20台中、予選落ちが1台だとしたらどうだろう。

きっと、ほとんどの人が予選落ちはしないと考えるだろう。

「この1台に入るかも?」と考えるようなやつは、モトクロスなんてスポーツはやっていないと思う。

だいたい、モトクロスをやるやつに、まともなやつはいない。

あの第1コーナーや大きな二連ジャンプを危険と思わないような奴らが多いしな。


全日本のIBクラスの予選落ちが100台中5台だとしたらどうだろう。

もう、父ちゃんは「絶対に予選を通れる!」と考えるぞ。

こんな予選だったら北海道だろうが九州だろうが行ってやる。

そして、「俺は全日本の予選に通ったぞ〜〜〜〜〜〜!!!!!」って道行く人にまで自慢しまくるだろう。


もし、40台スタートラインについて、2台だけ第1コーナーで転倒するとしたらどうだろう。

きっと、誰も自分の事とは思わないだろう。


何の話か分からない?

今回は「5%」の話なのだ。


鎖骨骨折から3ヶ月経ったとき、ついに父ちゃんは医者を変えた。

そこそこ評判が良い、スポーツリハビリが出来る医者だ。

レントゲンを撮れば、やっぱり1cmほどまだ骨が離れている。

プレートかピンで留めた方が良かったんでしょうか?」と聞く父ちゃんに

医者は、「今は、手術はほとんどしないんですよ」と平然と説明した。

「95%は、ちゃんとひっつくからですよ」

そして笑いながら「ということは、まぁ5%は、ひっつかないって事ですけどね」と言った。

ちょー前向きな父ちゃんにとっては、5%なんてものは、無きに等しい。

父ちゃんの人生において、5%に入る事なんて考えられない事だった。


しかし、なんかこのときはこの“5%”という数字が身にしみた。

そういえば、中部ではほとんど予選落ちなんかした事が無いのに、

近畿戦の生駒では、17台中2台予選落ちというときに、そのうちの1台に入った事を思い出した。

このときは、1台がジャンプで吹っ飛んだので、完走者の中ではベリだった。

パーセントで言えば、5、8%。

決勝レース30台中、第1コーナーで1台だけ転倒したことも何回かある。

こうなると3.4%だ。

自慢じゃないが、高校の時の中間試験では、404人中、403番を取った事もある。

父ちゃんの後ろは、絶対に裏口入学してきたという評判の“鬼瓦 権蔵”と呼ばれていた女の子だけだった。

こいつは、PTA会長の娘だった。

ここまできたら0、05%だ。


な〜んだ、結構俺の人生5%の中に入るっているじゃん!

新たな発見だった。

ってことは、「鎖骨がひっつかない5%にも入る可能性があるって事?

恐る恐る聞いてみたら医者はこれまた平然と

「もちろんありますが、半年経ってひっつく人もいますし、1年掛かる人もいますからね」と言う。

「特に、年を取ると直るのに時間が掛かるんですよ」と笑いながら言う。

暗に父ちゃんを年寄りと言っているのか?


そして、恐ろしい事にこの状態のまま、あっという間に半年が過ぎていったのだった。

俺は、この鎖骨バンドから一生離れられないのか???