[スコップじじぃ!]('08/5)

自分は、バイクに乗れなくてもショウゴもタカも一人ではレースどころか練習も出来ない。(免許がないからだ)

結局、朝早くから「バイクを整備して、夜通し走ってレースに行って」という生活は変わらなかった。


だが、ただひとつ違う事があった。

子どもたちが練習やレースをしている間、待っている時間を持て余してしまうことだ。

それじゃ、他の親のように子どもの走りをちゃんと見てやればいいのだが、

いままでずっと子どもと一緒に走ってきたので、

いくら自分が走らないといっても、ただ子どもの走りをじっと見ているなんて耐えられない。


新聞や本でも読んでいようと思うのだが、

やれ「エンジンのツキが悪い」だの「あそこのコーナーの走りが分からない」だのとうるさくてしょうがない。

やっと静かになったと思えば、何周も帰ってこずに「転倒でもしたのか?」と心配でたまらない。


そういえば、いつも一緒に走っていたので、子どもが転倒した時は、たいていすぐに駆けつける事が出来た。

ただ、コース脇で待っている事がこんなに落ち着かない事だと初めて知った。

他の父ちゃんたちは偉いな〜」って本当に思ったぞ。


子どもたちの走りをじっくり見てやろうとは思うのだが、今までそんな事をやった事がないので急には出来ない。

そこで父ちゃんが始めた事は、コース整備だった。

特にいつも練習する河川敷は、コースが痛んでいる。

至る所、デコボコだし、ジャンプだってえぐれているか、ほとんど削れているかだ。


いつしか、スコップを持って、いろいろな場所を直しながらコース中をフラフラするようになった。

コースの中にいれば、ショウゴやタカがどこを走っていて、どこで転んでいるかもだいたい分かる。

父ちゃんにも少しはダイエットになるだろう。(と、出てきたお腹をさすった)


ということで、あの頃は、左手をかばいながらもひたすらコース整備に明け暮れた。

ショウゴが簡単に飛べる3連をタカが怖がって飛べなければ、助走を平らにして、ジャンプをきれいに整えてやる。

「飛べた!」と喜んでいるタカの顔を見るのも良いものだ。(こんな事で良いのか?)


削れたプープスも土を盛ってやれば良い練習になる。

ショウゴもちょっと一個目を高くしてやれば、いろいろな飛び方が出来るようになった。

角度を変えてやれば、リズムセクションのような飛び方もする。


いつしか父ちゃんは、りっぱなスコップじじぃになっていた。

デコボコのストレートが綺麗になると気持ちが良いものだ。

ジャンプだって大きく綺麗になるとステキだ。

子どもが砂場が大好きなのも分かるぞ。


あ〜スコップってなんて楽しいのだ!

父ちゃんは、コース整備に新たな人生を見つけたのであった。