[素人は怖い!]('08/8)
’08中部戦も近づいてきた2月、すっかり、メカニックとスコップじじぃが板についてきた父ちゃんは、
その日も嬉々としてスコップとストップウォッチを持って河川敷のコースを走り回っていた。
父ちゃんたちは、この河川敷に来るときには、込む時間を外している。
やはり、いろいろなレベルのライダー(それもよく知らない人)と一緒に走るのが怖いからだ。
その日も来るべき中部戦に向けて練習をしていた。
えぐれているジャンプやストレートのデコボコをスコップで直しながら子どもたちの走りを見ていた。
今まで子どもたちの走りをこんなによく見たことはなかったので、ここ数ヶ月間の成長もよく分かった。
う〜ん、今年の中部戦が楽しみだぞ〜。父ちゃん一家の新たなる伝説だ〜。
一練習して、休んでいると大学生らしき7,8人の集団がモトクロッサーを3台ほどトラックに積んでやってきた。
あまり見たことのない顔ぶれだった。
長年レースをやっていると、顔を見ただけで速いかどうかが分かる。
バイクやウェアーを見れば一目瞭然だ。あきらかに素人さんたちだった。
誰でも走れるこの河川敷のコースでは、速い子たち(NA以上くらいの技量)と遅い子たちが
「出来るだけ混走しないようにする」という暗黙のルールがある。
この日も父ちゃんたちは、この大学生たちの準備を見ながら、一緒にならないように練習していた。
しかし、大学生たちも段々とこのコースに慣れてきたのか、バラバラに乗り始めた。
中部のNAでは、遅いタカだって、このコースでは、結構ジャンプもするし、そこそこ速い。
ましてやショウゴは、3才からこのコースで走っているだけあって、
全日本を予選落ちするくらいのIAなら追いかけ回すくらいの速さはある。
ホントに、"ここだけなら”という条件がつくのが悲しいのだが・・。
父ちゃんだって、この河川敷で中部戦をやってもらえれば、そこそこいけそうな気がする。(気だけだが・・)
今まで一緒に走りながら見ていたので気づかなかったが、
20m以上はあるテーブルトップや2連だってバンバン飛んでいく子どもたちをコース脇で間近に見ると、その迫力に圧倒される。
いつの間にかこんな速度で走っていたんだ!
(やはりモトクロスは、コース脇で見るもんだな!)
レース形式の練習をしていると、急に大学生の子たちが入ってきた。
フルサイズのモトクロッサーに乗ってはいるもののその走りは、やはりおぼつかない。
こんなレベルだったら、キッズコースも造ってあるし、河川敷の奥には、エンデューロコースもあるのだから
「わざわざ、こっちで走らなくたっていいだろ?」と考えているうちにあちこちでスタックし始めた。
最終ジャンプの奥でエンストして仲間に笑われているヤツもいる。
ジャンプからは、10mほどの距離があって隅に寄っているので、エンストした本人は、安全な気でいるかもしれないが、
その場所は、ショウゴがちょうど着地する場所だった。
急いで、ショウゴを止めようとしたがもう間に合わない!
幸い、ショウゴもあちこちで止まっているのを見て、スピードダウンしていたから助かったものの、ホント、心臓が破裂しそうだったぞ。
みんなが使う河川敷なので、今日は、部分練習だけにしようと思い、この子たちに注意するのも止めた。
どうせたまたま遊びに来た連中だ。もう会うこともないだろうと思った。
下手に注意して「自由に使える河川敷で文句を言われた」なんて市や県の管理事務所に電話でもされたら
このコースを守ってきたみんなにも済まない。
「よし、まずは、フープスの練習をしよう!」ということになった。
このコースには、3連の横やスープスの横に迂回路が造ってある。
ただし、フープスに関しては、迂回路というより待避所的なもので、そこで人の走りが見られるようにと作ってあるのだ。
このフープスは、見晴らしも良いし、ゆっくりいけば50の子だって走っていける所だからだ。
NBぐらいなら「2・2・2・1」と飛ぶが、ショウゴなら「3・1・3」、タカでも「2・2・3」って飛ぶ。
1個目のジャンプをちょっと整地してやれば、ショウゴが「4・3」、タカが「3・1・3」に挑戦し始めた。
ショウゴがビビって飛べないときなど「ヒュ〜ヒュ〜」とタカと大はしゃぎ。
タカが飛べないと「俺なら絶対飛べるのに!あ〜この鎖骨が恨めしい〜」と大笑いしていた。
そんな時、先ほどのモトクロッサーがフープスにやってきて、コテンと転けた。
たいした転倒でもなかったが、何やらこちらを睨んでいる。
「変なヤツだな?」とは、思ったが相手は素人さんだ。
誰だって初めは、素人で、誰だって初めは、失敗はするものだ。
帰り支度をしているときだった。
大学生の一人が、父ちゃんたちの所にやってきた。
やってくるなり「コースの中で止まらないで下さい!」といきなり言ってきた。
初めは何を言っているのかさえ分からなかった。
キョトンとしている父ちゃんたちに苛立つように「あなたたちが止まっているから友達がケガをしたんです!」と言う。
「ケガ?ひょっとしてあのフープスでコテンと転けたヤツ??」
「別にあそこは、走行の邪魔にはならんだろ」と言うと「とにかくコースの中では止まらないで下さい」と睨んでいった。
その目は、あきらかに自分に正義がある!という目だった。
仲間を代表して正しいことを言っているという信念が顔に滲み出ていた。
その目を見たら保育園でも数年に一度現れるモンスターペアレントを思い出した。
うちの保育園の保護者は、ホントに良い人たちが多くてホント助かっているのだが、
常時、園児が250人以上、学童も45人以上もいると何年かに一回、困った親に出会う。
砂場で一緒に遊んでいた子のスコップがたまたま目に当たったら「わざと目を狙ってやった!」と怒鳴り込んできた父親もいた。
ブロックで遊んでいるときに、ケンカになれば「うちの子は絶対に悪くない、相手の親を謝りに来させろ!」と要求してきた親もいた。
このような困った親に共通していることは、あまりに狭い視野しか持ち得ないので考え方も非常に偏っていると言うことだ。
自分の子どものことしか見えない親もいる。
だから、世間一般的に見て理不尽な要求も「絶対に自分が正しい!!!」という目で平気でしてくる。
父ちゃんたちに文句を言ってきたこの大学生にも同じものを感じた。
このコースには、暗黙のルールがあること。そもそもこのコースを維持していくために、みんなで努力していること。
だいたい、27年前に草ぼうぼうの中をハスラー50で父ちゃんたちが走ってコースを造ったこと。
いろいろと言いたいことはあったが、こういう目をしたヤツを納得させるには時間も掛かる。
園児の保護者なら、子どものことも考えて、いろいろな手立てや機会を捕まえては、話し合うのだが
こんな一見(いちげん)さんたちの相手をしている暇もない。
ケンカになって河川管理者に文句の電話でも掛けられたら目も当てられない。
父ちゃんは、グッと言葉を飲み込んだ。
大学生は、「自分は仲間達のために正しい行いをしたぞ〜!」って感じで意気揚々と帰って行った。
「アキ、よく怒らなかったな」とショウゴが言った。
「どう考えてもあいつらの方が悪いだろ」とタカもいう。
「まぁ、いい、どうせあんな遊びで乗っている奴らは、すぐに止めてしまうだろう、もう、会うこともないぜ」
そう答えるとタカが「あいつら、このコースが気に入ったからまた来たいって言ってたよ」と言う。
「あちゃ〜〜〜〜」
PS
今回は、モンスターペアレントについても少し触れたが、ホントは、この言葉が一人歩きしないか心配している。
「文句を言う親=モンスターペアレント」と安易に考えて欲しくないからだ。
保育園をやっているといろいろなご意見を保護者からもらう。文句や抗議だってある。
だけど、その中には、自分たちが気づかない大切なことが隠れていることもあるからだ。
日々流されていく日常に紛れている小さな発見を見つける機会になることだってある。
視野が狭い親のことを書いたが、反対に視野が狭い先生や園だってあるのだ。
保護者と園が、お互いの立場から子どもたちの健やかな成長を願い、手を取り合いながら見守っていきたいものだ。
|