[帰ったきた!]('08/9)
父ちゃんは急遽、全日本第1戦近畿大会にエントリーした。
鎖骨が折れてから半年。たまにバイクに乗っていたが、まだ鎖骨がグヨグヨと動くことがある。
そして、もう一つの現実が・・!
子どもたちが着替えている父ちゃんの体を見て言った。「なんだ、この肉は?まるでじぃさまの体だな!」
悲しいかな、引き締まっていた腹筋もなくなり、腿はプヨプヨ、腹はタプタプ、背中にもだいぶ肉が付いてしまった。
まだ、鎖骨もひっついていないので、いつも鎖骨バンドを着けている。(もう付けていないと日常生活でも不安になってしまったぞ)
このまま一生、鎖骨バンドのお世話にならなくてはならないのか?
「こんな形で鎖骨が引っ付いたとしても、簡単な衝撃でまた折れますよ」と言う人もいた。
え〜い、こうなりゃヤケクソだ。もうどうなってもいい!
とにかく父ちゃんは、全日本に出ることにしたのだ。
それも全日本の予選は、たったの4周。(予選落ちを前提にしているのが悲しい・・)
4周ならこの鎖骨でも持つだろう。
そして、もし折れたとしてもこの鎖骨バンドさえ着けていれば、
その場でこのバンドをギュッと締めてもらえれば痛みも押さえられる事は実証済みだ。
鎖骨を折ってみて分かったのだが、折った直後よりも時間が経った方が痛い。
折れて重なった鎖骨をいかに速く元の場所に戻すかに勝負が掛かっているのだ。
折れて重なっているから痛いのであって、それを元の状態に直してやれば良いだけなのだ。
それに自慢じゃないが、鎖骨が折れても仕事を休んだのは、病院の検査に行った半日だけだった。
もう怖いものなどなくなっていた。
さぁ、どこからでも掛かってきなさい、全日本よ!
待っていろよ、全日本!
みなさん、お待ちかね!(誰からもそんな声は聞かれなかったのが寂しいが・・)
ついに父ちゃんは、またまたモトクロスに帰ってきましたよ〜。
復帰を決意したからには、まずは練習だ。
実は、今までも月に一度くらいは、我慢が出来なくてタカやショウゴのバイクで恐る恐る乗っていた。
この恐る恐る乗るという事がいけなかった。
みんなもバイクや体に不安を持ったままレースに臨むという経験はないだろうか?
はっきり言って、まず良い成績は無理だろう。
モトクロスってやつは、イケイケドンドンが基本にある。
このイケイケドンドンの気持ちにさせるためには、それなりの練習とともにバイクや体の調子も必要なのだ。
恐る恐る乗っていては、変な乗り方が身に付くだけだ。
ましてや父ちゃんの鎖骨は、まだちゃんと引っ付いていない。
いくら父ちゃんが、全日本に出る決意をしたと言っても体は怖がっている。
河川敷ではないちゃんとしたモトクロスコースで練習をして初めて自分の状態が分かってきた。
IBの子たちと走ると「こんな奴らとレースをするのか?」「よく今までこんな奴らと一緒にレースに出ていたものだ」と感じた。
しかし、俺は男だ!(昔にこんな番組があったぞ!)
男に二言はない!
そして、全日本第一戦近畿大会がやってきた。
相変わらずバカでかい二連は作るは、コースの奥の方でも飛ばなければタイムがた落ちの2連やステップアップジャンプとやりたい放題。
このジャンプが父ちゃんにとって大きな障害となってしまった。
口では、「こんなジャンプは簡単簡単、アクセル戻さなければそのまま飛べる」って言っていても
体は正直で目の前にジャンプが近づくと無意識のうちにアクセルを閉じてしまう。
もう、体が怖がってしまっているのだ。
ショウゴやタカには、あんなにでかい口をたたいたのだが、いざ目の前にジャンプが来るとビビってしまう。
この気持ちは、ライダーにしか分からないだろう。
オヤジ達よ、子どもがビビっていても責めないでくれ。ジャンプってホントに怖いんですよ。
ついに練習走行が始まった。
固定ゼッケンの奴らは、凄い速度で父ちゃんを抜いていく。
固定ゼッケン以外でも、信じられない速さのヤツがいるのも全日本だ。
もう、練習走行からあちこちで当たりまくっている。
これこそが全日本だ!と父ちゃんも自ずと気合いが入ってきた。
いよいよ予選が始まった。(なんと今回は、5周と言うことだった、1周が2分ちょっと掛かる父ちゃんだったら10分以上掛かる)
父ちゃんが所属しているTeam R&Dの人たちも応援してくれる。
子どもたちよ、どんな逆境にも負けない、このオヤジの背中を見るがいい!
そして、スタート。
第1コーナーに凄い勢いでモトクロッサーが突っ込んでいく。
あっという間に遅れる父ちゃん。それでもなんとか20位くらいで第1コーナーを回ることが出来た。
第3コーナーを回ると長い下りになる。モトクロッサーの一団が、ガチガチ当たりながら凄い速度で下っていく。
トップ集団が、ユニテックジャンプを華麗に飛んでいくのが見える。
父ちゃんは、頑張った。
いつしか鎖骨のことも気にならなくなっていた。
あ〜、やっぱりレースって良いな!
いつものように、あちこちで転倒している子達をグイグイと抜きながら、父ちゃんぐらいのオヤジとバトルが始まった。
もちろん、二人とも飛べるジャンプは少ない。
しかし、それなりに抜きつ抜かれつで楽しいバトルが出来た。
後で聞いた話では、チーム員のみんなもこのバトルを
「年寄りが二人で楽しそうに走っていて、のどかなですな〜」と楽しんで?くれたようだった。
4周目のフープスでやっと前に出たところで後ろからヤケに早いライダーが迫ってくるのが分かった。
エ!転倒していた子?いや違う、トップの子だ!!エエッ!予選でラップ???
なんとかラップだけは免れようとしたが、最終ジャンプ手前で追いつかれてしまい、ラインを譲った。
トップの73番が、チェッカーフラッグを受けるのが見えた。天高くフィニッシュジャンプをクリアーする松下君は格好良かった!
その後に父ちゃんが意気消沈しながら続いた。格好悪かった!
チーム員が「完走できただけでも良いじゃないですか!」と声を掛けてくれた。
完走と言ってもみんなより1周少ない・・。
予選クラスが二つ後のショウゴがヘルメットを付けたまま寄ってきた。
「アキ、あんなジャンプも飛ばないと見ていて怖かったぞ。あれじゃ、みんなの迷惑だ!」と真剣な顔で言う。
ショウゴよ、そう言うことを真顔で言うな、真顔で・・。本人が一番分かっているんだから・・
後でラップタイムを見てみたら、やはり去年よりも10秒遅かった。
あ〜、これが現実。
父ちゃんは、すっかり落ち込んでしまい、全日本第2戦関東大会へのエントリーを取りやめたのだった。
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