[お〜神様!]('09/1)
 

あ〜、ついに年を越してしまった!父ちゃんも今年はついに48才になってしまう。あ〜恐ろしい〜。
昨年はホントに忙しかった。今年は、もう少し落ち着いて過ごしたいものだな。
そう言えば、忙しいという字は、「立心偏に亡くす」と書くように「心をなくしてしまうさまを忙しい」という説もあるとか。
今年は、いくら忙しくても心までなくしてしまわぬようにしたいものだな。

’09年も始まったというのに、「父ちゃんのひとりごと」は、まだ昨年9月の全日本近畿ラウンド(名阪スポーツランド)の話しだ。

全日本第2戦の関東大会でのオヤジ達の走りに勇気をもらった父ちゃんだったが、
その後も鎖骨の状態は良くないわ、CRFのフレームにクラックが見つかるわで中部戦にも出ていなかった。
たまに子どもたちのバイクを貸してもらっては、ちょこっと乗るくらいだったので、
「ついにあのイカレタ中島さんも引退か?」とオヤジ達の間で噂される有様だった。

そうこうしているうちに全日本近畿ラウンドのエントリー締め切り日が近づいてきた。
父ちゃんは迷っていた。
本来なら全日本でも真っ先にエントリーする大会だ。でも、練習もしていないし、だいたい乗るバイクもない。
「どうしよ、どうしよ〜」と思い悩んでいると(父ちゃんが悩むことはホントに珍しいのだが・・)次男のタカが言ってきた。
「じいさま、(父ちゃん→アキ→じいさまと呼び方も変わってきた)俺のCRFに乗ればいいじゃん。
どうせ俺は、全日本に出られないし・・」と言うではないか。
いつも生意気な口ばかり言うカタだが、父ちゃんの悩みが分かっていたのか?

この一言で急に元気が出てきた父ちゃんは、意気揚々とエントリー用紙を書いた。
名阪までの一ヶ月間、タカのバイクを乗り込んだ。
俺のバイクよりずっと乗りやすいではないか!
真剣に乗ってみるとタカの’06CRFは、パワー感こそないが、とっても乗りやすい。
このヨボヨボ・ヨレヨレの老体には、とってもあっていたのだ。

そして、いよいよ全日本(名阪)当日。
ショウゴは、燃えていた。しかし、その横には、それ以上に燃えていた父ちゃんの姿があった。
IB2クラスの予選が始まった。
父ちゃんは、A組。ショウゴは、C組だった。
前日の雨でコースのあちこちは、まだぬかるんでいた。
予選が始まる直前にブルが入ったので、余計にどこが荒れていて、どこがぬかるんでいるのかも分からない。

予選A組って独特の緊張感があるものだな。他のライダーの緊張も手に取るように分かった。
そこにいくと父ちゃんは気楽なもの。
目標は、この5周の予選でトップにラップされないこと。
だって、一ヶ月前に練習を始めたばかりだもの!というちゃんとした言い訳だってある。

いよいよ、スタート。
いつもより良いスタートが切れたぞ。
第1コーナーは、10位くらいか?下りながらコーナーを曲がるとすぐに二連だ。
前もクリーンだったので、迷わず飛べた。あとでビデオで確認すればなんと8位。
いつもは、目の前にモトクロッサーがアリの大群のようにいるのだが、やけにすっきりしていて視界が広い。

しかし、父ちゃんは、いい大人だ。この後に起こることも予想できているぞ。
すぐに出遅れた固定ゼッケン組や速い子達が矢のように追い抜いていくだろう。
それまでは、いい夢を見させてもらおうではないか!

ぬかるんでいる第2コーナーを曲がってステップアップジャンプ。ヨタヨタしながらも何とか飛べたぞ。
すぐに3台がスゴイ勢いでインを刺してくる。ついにきたか!
ありがとう、いい夢を見させてもらったよ、第3コーナーまでこの順位でいられれば、ショウゴにも自慢できるだろう」
ここからが長い下りだ。名阪でも一番スピードが乗るとっても怖いところだ。
3台は、練習走行時のべストラインであるイン側をスゴイ勢いで下っていった。
すっかり力が抜けていた父ちゃんは、その時気づいた。
あれ?グチャグチャだったアウト側が結構きれいじゃん!
ダメもとで父ちゃんは、アウトにハンドルを切った。おーいい感じ!
いつもはこわごわ降りていく下りがやけに気持ちが良い!
あっという間に抜いていった3台に追いついた。すげ〜、俺って天才じゃん!
その瞬間、振られた2台が絡んで転ぶのが見えた。すぐ後に付いていた1台が突っ込む。わお〜

第4コーナーを曲がれば、またまたでかいステップアップジャンプ。
わだちは、何とか上手く通り越せたが、飛ぶ技量はない。
なめる父ちゃんの横を黄色いバイクが飛び越えていく。すげ〜
しかし、止まれきれずにそのままアウトの壁に突っ込む。おひょ〜

登りのS字を超えれば、2台がいっきに襲いかかってきた。
あっという間に抜かれ見えなくなっていく2台。
そうだよな、よくここまで持ったものだ。いい夢を見させてもらったよ。
コーナーを曲がれば、さっき抜いていった2台が轍で転んでいる。あれ?

もうすぐ観客が一番多い道路沿いのでかい2連だ。
こんなもん作りやがって!と怒りながらなめて走っていると遙か頭上をバイクが飛んでいく。
そのバイクが、次のプ〜プスで吹っ飛ぶのが見える。あれれれ??

ついに2周目。
その後も抜いていくバイクがいたが、ことごとく転ぶ。
父ちゃんは、段々と不安になってきた。みんなどうしたの?
なぜいつものように父ちゃんを追い抜いていってくれないの?
なぜ、みんな転んで待っていてくれるの?なぜなぜ??

どう考えても抜かれた数より転んでいる子を抜いた数の方が多い気がする。
ひょっとして夢を見ている?転倒して頭を打ったかもしれない?
そう言えば、美杉の中部戦でラップされる時にぶつけられて記憶が吹っ飛んだこともある。
気がついたらガソリン缶を持って次のショウゴのレースを見ていた。
きっとそうだ、俺はどこかで転倒して頭を打ったんだ!
ますます不安になる父ちゃん。

2周目の最終ジャンプを飛んだ時、前の子のピットクルーがサインボードを出しているのが見えた。
そこには、はっきりと6位と書いてあった!
え、あれ、ええええ????
夢か現実か分からなくなった父ちゃんはパニックになってしまった。
着地してすぐに登りのコーナー。
ストン!エンジンが止まるのが分かった。
しまった!エンストだ〜〜〜〜〜。
必死になってキックする父ちゃん。いつものタカのバイクなら1,2回でエンジンが掛かるはずだ。
しかし、運を使い切った父ちゃんには、もう何も残っていなかった。

必死にキックしていると頭の中で平原綾香(ひらはらあやか)の「Jupiter(ジュピター)」が流れた。
♪夢を失うよりも 悲しいことは、自分を信じてあげられないこと〜♪

キックをする父ちゃんの横を20台近いバイクが通っていく。
夢じゃなかったんだ〜〜〜。

そのままリタイヤになった父ちゃんは、トボトボとバイクを押して帰って行った。
気がつくと目の前にC組のショウゴがいた。
「あ〜あ、神様がくれた人生最後のチャンスを自分から捨ててしまったな〜、もったいない、もったいない
そう言ってスタートラインに入っていったショウゴは、いつものようにスタートで出遅れた。

ホント今回は、落ち込みましたわ。