[’08中部最終戦]('09/2)

ついに、’08シーズン最後の中部戦がやってきた。
いろいろなことがあった!
というよりほとんどレースに出てないじゃん!(出たレースは、全日本名阪の2戦だけだ)
全日本なんて、予選を5周走っただけじゃん!それもエンジン掛からなくて2周しか走れなかった時もあるし・・。
あまりに悲しい現実に打ちのめされる父ちゃん。

相変わらず乗るバイクもない。ブーツやモトクロスパンツも穴が空いたままだ。
そんな哀れな父ちゃんを見るに見かねたのか?チーム監督の中村さんが自分のCRF450を貸してくれるという。
父ちゃん一家のボロボロCRFたちとは違い、綺麗にデカールが張ってあって、いかにも大切に乗ってきたCRFを前に
「転んだらどうしようか?とか前車の飛び石で傷ついたらどうしよう?」とウジウジと迷っている父ちゃん。
そんなウジウジ父ちゃんに「転んだってかまいませんよ!」と笑顔で言ってくれる中村さんには、後光が差していたぞ。
(あ〜、ありがたや〜、と思わず手を合わせてしまった)

こうなったらやるしかない!
みんなが父ちゃんの復活を待っていてくれる。(すぐにこう考えられるのが父ちゃんの凄いところ?)
その期待に応えねばならないのが男だ!と早速、最終戦の美杉にエントリーした。

「こんなに綺麗なバイクで出るのなら、いつものじぃさまウエアーでは恥ずかしい!」とタカが自分の新品モトクロスウエアー上下を貸してくれた。
次男のタカは、なんでも無頓着な長男ショウゴとは違って結構おしゃれだ。
ちょっと見ただけで「○○くん、ジャージ変えたんだ」とか「今度の○○くんのヘルメットは格好いい!」とか言っている。
色違いだろうが、穴が空いてあろうが全然気にしない父ちゃんやショウゴとは違う人種だ。
バイクもウエアーもずっと兄ちゃんのお古で過ごしてきたせいだろうか・・?物への執着心が強いのだ。
2,3回は、平気で着ている父ちゃん達と違い、ウエアを始めブーツやヘルメットもいつも綺麗に洗っている。
“あらいぐまラスカル”のように洗うその後ろ姿から我が家では、「ラスカル タカ!」と呼ばれているくらいだ。

レース当日、美杉のパドックを綺麗なモトクロスウエアーでうろうろしていると「あれ、中島さん出るの?」とオヤジ達が声をかけてくれる。
「うちの子もラップできる人がいなくて寂しかったですよ」と言ってくれるオヤジもいる。
あ〜中部のみんなは待っていてくれたんだな。なんていい人達なんだろ〜。

事務所に行くと管理人の芝山三兄弟がいた。
この三兄弟、ハチャメチャ三男は、IAでも活躍したが、長男と次男だってその昔の現役時代は速かった。
特に、今では筋肉オタクのムキムキ次男とは、20年以上前のジュニア(今のNA)時代には、一緒に走ったこともある。
(もちろん、次男の方がダントツに速かった!)

「あ、中島さん、おはようございます!」
爽やかに三兄弟が挨拶をしてくれた。
「やあ、みなさんお待たせ、ついに中部戦に復帰しました!」と意気揚々に応える父ちゃん。
一瞬の気まずい沈黙があった。

その沈黙に耐えきれず「待っていましたよ!」と次男が筋肉をヒクヒクさせながら作り笑顔で応えてくれた。
「もう鎖骨は大丈夫なんですか?」と長男もいたわってくれた。
「がんばりましょう!」と三男も目を泳がせながら元気づけてくれた。
お前達、いい奴らだな〜、みんな気を遣ってくれてありがとう!

ぎこちない会話を後に、コースの下見に行った。
綺麗に整備されたコースは、まるで父ちゃんの復活を待ってくれていたようだった。
ひとつ気になったのは、タカのモトクロスパンツが少しゆるいことだった。
どうも歩いていると少しずつ下がってくる。

そして、レースが始まった。
IB昇格が掛かっているタカは、NA2で6位、ショウゴもIB2で4位だった。
あのメンバーの中では、よく頑張ったものだ!偉いぞ!!
子どもたちも父ちゃんの復活に花を添えてくれようとしている。もう頑張るしかない!

いよいよ午後のIBオープン。
スタートでは、イン側のグリッドを選ぶ父ちゃん。
父ちゃんには、秘策があった。
この美杉のスタートは、コンクリートだ。
みんな、ついつい気合いが入りすぎてアクセルを開けてしまう。
その結果、ホイールスピンをしてしまうヤツが結構いる。
そこで考えた。
この中村さん仕様の450には、有り余るパワーがある。
その昔、’02CRF450に乗っていた頃には、3速スタートでみごとなホールショットをこの美杉で取ったこともある。
いつもの250なら絶対に2速スタートだが、この450なら3速が正解でしょう〜。

幸い、隣のグリッドは開いていた。
これなら多少スタートの瞬間に出遅れても、みんなが3速に上げているうちに450は、ズズズイット伸びてホールショット!ってな具合だな。
父ちゃんぐらいのベテランになるとレースが始まる前からイメージが出来上がる。

そんなホールショットへのイメージを作っているとタカが寄ってきて囁く。
「じぃさま、疲れたら無理せず帰ってこいよ!」
バカ野郎!俺を誰だと思っている!」と応えたいところだが、はっきり言ってIBクラスの20分+1周は長〜い。
ついつい「10分くらい走ったら帰ってくるから」と言ってしまう父ちゃん。あ〜情けない

そしてスタート!
ホイールスピンに気をつけてアクセル半分でスタート。
スルスルって具合にスタートするはずが、いっきにエンジンの回転数が落ちてしまいエンスト寸前。
なに〜、やっちまったな〜〜。(クールポコ風にどうぞ)

固定ゼッケンが何人もいる中部勢は、父ちゃんを置いてあっという間に第1コーナーになだれ込んでいく。
父ちゃんも3速のスゴイ伸びでその後に続く。
見ればショウゴが目の前にいる。(お前、また出遅れたな!)

第2コーナーではインに無理矢理突っ込んで2台抜いた。(お〜いい感じ!これがレースだぜ!
アウトから回ったショウゴが、その後に続くフープスでドンドン抜いていくのが見える。(お〜ショウゴも頑張っている!)
そして、みんなに置いていかれないように2周目までは頑張った。

しかし、ふと気がつけばベリだった。10分どころか、第2コーナーまでじゃん!
3周目に入る頃には、すっかり負け犬モード。頭に浮かぶのは、「いつリタイヤしようか?」ばかり・・。
その上、タカのモトクロスパンツがずり落ちてきた。
半ケツ出してストレートを450で疾走する父ちゃん。
「あと1周したら、リタイヤしよう!」と思いつつも「もう1周頑張ろう!」と半ケツどころか、ケツ丸出しで疾走する父ちゃん。

10分過ぎのあたりでは、もうトップのリュウジが迫ってきた。
次々とラップされていくケツ出し父ちゃん。
最後には、転倒もしないのに5位のショウゴまでに2ラップもされた。
長いIB生活でも初めてのことだった。(あ〜恥ずかし〜〜)

しかし、父ちゃんは完走したぞ!
慣れないバイク、タカのぶかぶかモトクロスパンツ、ショウゴのお古の穴あきブーツでも完走したぞ!
遅いうえにケツまで出して、みんなに笑われても完走したぞ!

あ〜、レースってやっぱり面白いな〜」と再発見できた中部最終戦だったのだ。