[関東に殴り込みだ〜!]('09/4)
 

 はっきり言って関東は怖い!前2回の全日本を見てもあのジャンプはヤバイぞ!
昨年は、少しは安全に配慮してあったが、それでも怖い!
だから“関東”と聞くだけで救急車の音と突風で吹き飛ぶテントを思い出してビビリまくってしまう父ちゃんだったのだ。

それに父ちゃん達ぐらいの年寄りにとっては、関東と言えば桶川。
地方選の予選だって10組もあった!という伝説さえある。(3位までしか決勝を走れない!)
(自慢じゃないが、中部だって父ちゃんの若い頃は、4〜5組ぐらいあったぞ、そう思うとモトクロスってのは、本当にじり貧だな〜)

IAライダーだって関東出身が多いし(成田・熱田らの東北勢も凄いが・・)
中部の片田舎の河川敷でチマチマとバイクに乗っている父ちゃん一家にとっては敷居が高すぎるのが関東なのだ。

しかし!
いつまでもビビリまくっている訳じゃないのが父ちゃんの凄いところ。
全日本関東大会の一週間前にある関東選手権にエントリーしてしまったのだった。

「いつもまでも関東のヤツらにでかい顔をさせておくわけにはいかん!」
「なんてったって3位になりそこねた男だぞ!」


昨年の全日本では、父ちゃんレベルのオヤジライダーが何人も走っていた。
あのオヤジ達には勝てるだろ〜。
ショウゴだって、昨年度の中部戦ランキング4位だ。(セコセコと全戦でポイントを貯めただけだが・・)
行くぞ、ショウゴよ、この頃の中部の勢いを見せてやろうぞ!
タカも今回は、「あのコースを一度走ってみたかったんだ」とノコノコと着いてきた。
(一応受験生のタカは、土曜日の練習走行だけだが・・)
よ〜し、役者は揃った!父ちゃん一家の討ち入りだ〜〜〜!

土曜日、練習が終わりバイクを洗っているとカタが走ってきた。
「テントが風で吹き飛んだ!」
へ?さっきまで風なんてそんなになかったぞ。
洗車をしていて気づかなかったが、いつの間にか風が強くなっていた。
「おのれ〜関東め、自然の力を使うとは姑息なヤツらよ!」

急いで車のところに行けば、すでにテントが綺麗にたたんであった。
「前の人たちがテントを持ってきて、たたんでくれた」とタカ。
関東にも良い人がいるもんだ。タカを連れてお礼に行ってしまったぞ。ありがとう〜。

前日車検を夕方の6時までやっているというので、急いでタイヤの裏表を入れ替えて(新品タイヤがなかったんだ)
5時半頃にバイクを押して行けば「現在並んでいる44番の方で終わりにしま〜す」というアナウンス。
おのれ、関東め〜。卑怯な手を使いよって!

そして、日曜日。
朝から親のカタキのようにコースに水をまいている。
「また、グチャグチャの第1コーナーだ〜」とショウゴはすでに戦意喪失している。
関東よ、こんな手はこの父ちゃんには効かないぜ。
なんてたってグチャグチャドロドロのイナベで3位になりそこねた男だからな!

まずは、昨日に出鼻をくじかれた車検だ。「ショウゴよ、ビシッと決めてこい!」と送り出せばすぐに戻ってきた。
「みんな、車両仕様書を持っているぞ、じぃさま、封筒に入ってなかったか?」
「そんなものはないぞ、だいたいなんで地方選手権で車両仕様書がいるんだ?」と言えば、
タカが「封筒に車両仕様書が入っているぞ〜〜〜」と騒ぐ。

おのれ〜関東め、ちょこざいな手を使いよって、全日本じゃないんだぞ!中部戦ではこんなものは書いたことはないぞ!!

急いで車両仕様書を書いて車検に行けば、またまたショウゴが帰ってくる。
「前輪のスポークがゆるくてダメだって」
「なに〜、田舎もんだと思ってバカにするなよ〜、スポークは、1週間前の名阪で締めたはずだぞ!」
どうやら関東の連中は、俺たちを警戒しているようだな。

その時タカが言った。「ホントじゃん、スポーク、ユルユルじゃん!」
あれ〜??(スポーク締めたはずが緩めていた?)

「バカ野郎、ショウゴは、前輪なんかなくたってウィリーで走れるわい!」
ここまで来たら父ちゃんも引けない。

「でも、俺、この前、ウィリーの練習していたら転けてバイクの下敷きになった・・」とショウゴ。
すっかり関東の雰囲気に飲まれている。
バカモノ!中部4位という誇りをもたんかい!!
「見つけてくれたんだから感謝しないとな」と空気が読めないタカがやけに冷静に言う。

そして、IB2決勝。(父ちゃんは、今回もIB2のみ)
地方選手権のせいか、あの過激なジャンプが影を潜め、ほとんどがテーブルトップになっていた。
これなら怖くないや!ありがとう〜!!

さぁ、舞台は揃った。
ショウゴよ、大きな打ち上げ花火を一緒に上げようぞ〜〜〜〜!

スターティグマシンの前に行き第1コーナーを見つめる。
よし、イメージは出来た!第1コーナーが俺たちを呼んでいるぜ!!

スタートバーが下がった!得意のロケットスタートだ〜〜!
あっという間にみんなが先に行く。
見れば遅れているライダーがもう一人。ショウゴだ!

どうしてあんなにスタートが速いの?
どうもスターティグマシンが怪しいぞ、あの丸っこいストッパーがくせ者だな?
おのれ〜関東め〜、きたない手を使いよって!


それでもなんとか第1,2コーナーで何台か抜いて小さなフープスとテーブルトップのリズムセクションまで来た。
ここは2.2.1とフープスをクリアーしてテーブルトップを飛ぶ。
フープスの最後の一個からテーブルトップまでフロントをあげて飛べるとずっと速い。
案の定、関東の規格外男:山本君は、毎週フープスをすごい速さで行きながらそのままの勢いでテーブルトップに飛び乗って通過していく。
父ちゃんには、死んでもそんなことは出来ないので、下位グループの中で仲良くプープスを慎重に走っていった。

その時、赤いバイクがすごい勢いでテーブルトップの斜面にフロントをぶつけていく。
この混戦の中、バカじゃないの?
案の定、リアが跳ね上げられて前転しそうになっている。

そのおバカさんの後ろ姿を見ればショウゴだった。
お〜、今日のショウゴは燃えているぞ。前回のイナベのじじいの走りとは大違いだ。
「ショウゴ、いけ〜!」

さぁ、速いヤツらはショウゴに任せて、父ちゃんには、関東のオヤジとの戦いが待っている。さぁ、どこからでもかかってきなさい!
ところが、あっという間に下位グループからも置いていかれる父ちゃん。
あれ?れれれれ?
何でこんなに速いの?

見れば下位グループのオヤジ達が、今度はショウゴに襲いかかっている。
一人、ツーリングのようにコースを走る父ちゃん。
オヤジ達に囲まれて四苦八苦しているショウゴ。
おかしい!おかしいぞ〜
おのれ関東め〜、この走りやすくなったコースに何か秘密でもあるのか?

レースは終わった。
父ちゃんはダントツのベリ。
ショウゴは、20位に入るのがやっとだった。

「去年の全日本を走っていたオヤジ達はどこ行ってしまったんだ?」と父ちゃん。
「なに言ってんの、じぃさまが、あのオヤジなら勝てる!って言ってた人たちもちゃんと走っていたぞ」
へ?

パドックで落ち込んでいると、怪しげな人影がこちらを伺っている。
おのれ〜関東め、中部の田舎モノを笑いに来たのか?
え〜い、笑いたければ笑えばいい!

見慣れないかっこいい兄ちゃんが近づいてきた。
「ひょっとしてホームページを開いている方ですよね?」
「いつも読んでいて笑わせてもらっています」
「へ、ホント?世の中には、なんてありがたい人もいるんだ〜」

聞けばこのナイスガイ、1才と5才の父親で、NBクラスのレースに出ているそうだ。
「いつも楽しそうでいいですね〜」と爽やかな笑顔で言ってくれる。
「いや〜、実は関東のヤツらをやっつけに来たのですが、ボコボコにされちゃったんですよ〜」なんて言えなかった。

その後ちょっと話しをして、お互いに怪我をせぬようにこれからも楽しく走っていきましょう!と別れた。
気持ちの良い青年、イヤお父さんだった。
関東の連中は、なんていいやつなんだ。

IBオープンは、タカとショウゴの応援だ。
さっきよりもだいぶ走りが良くなっているぞ。(ラップタイムで3秒も早くなっている)
でも、順位は20位だったが・・。

家に帰るのが、だいぶ遅くなりそうだったので、近くの健康ランドに寄っていった。
ここのガードマンはいつも気持ちの良い挨拶をしてくれる。
ホント、良い仕事をしているな〜と前々から感心していた。
ショウゴやタカが挨拶をするとニッコリ笑って返してくれる。
う〜ん、なんて関東は気持ちが良いんだ〜〜〜!

湯船に浸かっていると久々にバイクに乗ったタカが「やっぱり、モトクロスって楽しいな〜」としんみりと言う。
「そうだな、楽しいな。」と父ちゃん。
「このコースは面白かったな」とショウゴ。
湯気の中、ほんわかな気持ちになった三人だったのだ。

来週は、いよいよ全日本関東大会だ。
関東のことだから、きっとあのテーブルトップを二連・三連に変えて、父ちゃんをビビらす気だろう。
関東は大好きになったが、まだまだ心底信用はしていないぞ。

今回は、父ちゃんたちの完敗だった。
しかし、来週の全日本を見ていろよ!
このリベンジに中部の速いヤツらをたくさん連れてくるからな〜。
とすっかり他人ばかりをあてにする父ちゃんとショウゴだったのだ。