[追い詰められた?タカ]('10/12.8)
伝説の男になり損ねたタカは、4月から無事に名古屋の大学に通い始めた。 いつでもどこでも寝っぱなし、レース直前でも寝っぱなし・・。 そんな“三年寝太郎”と言われたタカが、朝早くに自分で起きて大学に通っている。 子どもは、「親が心配するよりもちゃんと自分で育っているのだな〜」と改めて思ったぞ。
大学には、何とか行けているタカだが、肝心金目のバイクの練習が出来ていない。 全日本第1戦では、「今年は、知っている子が多く出ているので応援していて面白い!」と単純に喜んでいた。 ビビってエントリーもしなかったくせに「俺も早く全日本デビューがしたい!」とか言っている。 「ショウゴより早く予選を通ったら、ショウゴは落ち込むだろうな〜」とあり得ない心配までしている。 う〜ん、なんてめでたい男だ!誰に似たんだ?(あんたに似たのよ!←母ちゃんの声)
そして、全日本一週間後(4/11)、タカにとって今シーズンの初レース(中部選第3戦)があった。 IBクラスは、予選もなく23,4台のエントリーだった。 ここでタカは、やっと現実を見る事になる。
IB2、IBオープン共にスタートはベリ、IBオープンに至っては、父ちゃんにさえ負ける有様だった。 ちなみにこのIBオープン、ホールショットをリョウスケに奪われたが、
2番目に第1コーナーに突っ込んでいったのはショウゴ、 そのすぐ後ろに父ちゃんという理想の形になった。
しかし、ここでショウゴがスリップダウン、そこに父ちゃんが突っ込んで2台で転倒。 このおバカな2台を上手く避けるライダーたち。 「さすがは、IBクラスのライダーだ!」と感心していれば、一番最後にタカが「ヒュ〜ヒュ〜!」とか言って走り去っていく。 結局、第1コーナーに取り残されているのは、ショウゴと父ちゃんだけだった。
「お前のせいでせっかくのチャンスを不意にしてしまった!」とショウゴに文句を言ってやろうとしたら、 ショウゴは、父ちゃんなんかには目もくれずに、必死になってエンジンを掛けてすっ飛んで行ってしまった。 (第1コーナーで戯れる二人を見て、仲のいい親子ですな〜とオヤジたちに散々笑われてしまったぞ)
この日、IBオープンクラスにしかエントリーしてない父ちゃんのレースは、ここで寂しく終わった。 後は、ただひたすら20分間、一人で走っていただけだった。 (まぁ、転倒した子を何台か抜いたが・・。その中には、タカもいた) 「80の頃は、あんなに出られたスタートがどうして出られないのだっだっだっだ〜?」と悩むタカ。 しかし、どう考えても80の頃だってスタートがそんなに上手かったはずはないのだが、 人間というものは、追い詰められると記憶までも自分の都合の良いように書き換えてしまうものだな。
そんな感じであっという間に6月の天竜川(中部選第8戦)。 ここは、天竜川の河川敷コースで木々の間にコースが作ってある。 フカフカのサンドあり、堅くて石が出ているところもありって感じで、結構なテクニカルコースなのだ。 そんなところをIBトップライダーたちは、ガンガンと攻めていく。
父ちゃんなんかは、すぐにラップされてしまうので、いつも後ろに気をつけて走っている感じだな。 言ってみれば、前方3割、後方7割で走っているので、益々遅くなるという悪循環だ。 その上、木々の間を走っているので、自分の排気音が反射してあちこちから聞こえる。 後ろから速いライダーが来た!と思って振り返っても誰もいない。 そんな不思議な体験が出来るコースなのだ。
4月当初は、減らず口をたたいていたタカだが、この頃になるとやっと自分の置かれている立場が見えてきた。 もちろん、今回もスタートベリで後ろの方を走っているだけだった。 さすがのタカもへこんでいた。 「じぃさま、俺は、レース中に幻聴が聞こえるんだ、後ろから速いライダーが来た!って思っても誰もいないんだ、 何回振り返っても誰もいないんだ、そのうちに、どけー!って声も聞こえてくるんだ、 もう俺は、ヘルメットに白旗をつけようかと思う、ボタンを押したらピコってヘルメットから白旗が出るんだ・・、 もう、最終戦(ダイイチ)はエントリーを止めようかな〜」と自問自答している。
お〜、タカが落ち込んでいる。 面白いからもう少しほっておこう。 獅子は、我が子を谷底に落として這い上がってくるのを待つと言うではないか! エンジン音の反射の事は、もう少し黙っておこう。 「この天竜川のコースでは、速かったライダーが死んだ事がある、その亡霊がたまに出るんだ!」って嘘を言ってやるかな? どういう反応をするのか楽しみだぞ。ワッハッハ〜
PS1 その後、スタートでタカのチェーンが張ってない事を発見した。 スタートでは、半クラッチで駆動力を掛けておいて、 前に出ないためにフロントブレーキを握っているって事も知らなかったのだ! どうりで毎回べりのはずだ。
この事実を教えてやれば、 「みんなはそんなにずるい事をしていたのか!もうこれであの頃のホールショット男が帰ってくるぜ〜〜!」と喜んでいる。 なんて単純なヤツだ。 「最終戦のダイイチが楽しみだぜ!」と大口をたたいていたタカだったが、 スタートでベリにこそにならなかったが結果はいつもと同じだったのだった。ちゃんちゃん。
タカの幻聴の話を母ちゃんにしたら
「でもあの子は絶対にバイクを止めないわよ、だってみんなに笑われても罵られても
しつこくバイクに乗り続けている人を身近に見ているからね」と笑いながら言った。
え、母ちゃん、笑われても罵られてもしつこくバイクに乗り続けている人って誰のこと?
PS2 “三年寝太郎”と言われたタカがだ、みなさんは、この昔話を知っていますか? 実は、昔の人はこのような昔話を上手く子育てに利用していたのだ。 今で言えば、ひきこもりかニートのような話なのだが、日本中には似たような昔話があるということだ。
寝ちゃ食っちゃしているだけの三年寝太郎が、村が危機になった時にむくっと起き上がり、村を助けるという話なのだが、 これは、「どんな子でも良いところはある、今だけで判断してはダメだよ」というメッセージが隠れているのだ。 言うなれば「あなたはあなたでいいんだよ」と自己肯定感を培う子育てを奨励しているのだ。
まぁ、子どもが問題を起こした時にすぐに親や家庭のせいにされる殺伐とした現代から見ると、 何ともおおらかな子育てをしていたものだと感心するな〜。
「わらしべ長者」だって、ワラが、ミカンになり、布になり、馬になり・・、
最後に長者(お金持ち)になるという話なのだが、 これも子どもは一気に成長するものではなく、ひとつひとつの段階を経て成長するもんだよ、 いくらあせってもワラから急に馬にはならないんだよ、というメッセージが隠されているのだ。
秋田の“なまはげ”もそうだが、昔の人は、神様から昔話まで使って上手く子育てをしていたんだな。
PS3 人生のほとんどの運を使って大学に入ったタカ。そこの同級生になんか見た事がある?と思ったら なんと同じ中部選IBクラスに参戦していた“たくみ”だったそうだ。 たくみは、IBに上がった時に怪我をしてしまい、そのまま受験勉強に突入していたので、この頃は中部選にも出ていなかった。 そんな二人で「俺たちが組んでキャンオフ(キャンパスオフロード大会)に出れば、無敵だぜ!」と 盛り上がっているそうだ。 お前ら、そんな学生さん相手に頑張るより、早く中部選で活躍してくれよ。
でも、メンバーが足りないようならこの父ちゃんを大学OBとして呼んでくれ!
ライセンスを持っていない学生さん相手ならまだまだいけるぜ!
(大学にも行っていないボケじぃが出られるわけないじゃん!←タカ)
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