[祝:灼熱のオヤジたち!]('11/5.8)
 

 みなさんは、昨年の8月の暑さをおぼえているだろうか?
観測史上でもっとも暑かった!というまさに異常気象だった。
そういえば、4月中旬の全日本関東大会が雪に見舞われるなど、2010年は、初めからおかしかった。

そんな灼熱の8月、父ちゃん一家は三重県イナベのモトクロスコースにいた。
ここは、'07に観測史上最高気温の40.9℃を観測した多治見市からもそんなに遠くないところだ。
この日も明からに朝から気温がぐんぐんと上がっていた。
熱中症の危険から気温35℃以上では、屋外でスポーツをするべきではない!と言われているのに
そんなこともお構いなしにヘルメットをかぶり、フル装備でバイクに乗るおバカな連中がいる。
ホント、困ったヤツらである・・。

車からバイクを降ろして準備しているとどこかで見たことがある車が止まっていた。
そこからノソノソと降りてきたのは、ユウタの父ちゃんだった。
ということは?ユウタもいるって事??
知っている人もいると思うがユウタは、この年にアメリカに行ってスーパークロスに挑戦していた。
「あれ、ユウタが帰ってきてるの?」と聞けば、「ちょっと帰ってきているので練習に来た!」ということだった。
そうこうしているうちにユウタが来た。
「ユウタ、アメリカはどう?」と聞けば、「めっちゃ、楽しいですよ!」と答える。
「そりゃ、よかった、それで英語はもう大丈夫?」と言えば、ニコッと笑って「日常会話くらいなら・・」。
元気な姿が見られて嬉しかったぞ。

久々の再会を喜んでいるところにヨッシー一家がコースターでやってきた。
こんな灼熱のイナベに次々と集まってくるライダーたち。
しかし、よい子はこんな暑い日に屋外でスポーツをやるモノではない。
よって、よい子の父ちゃんは、今日はお休みだ(笑)

ユウタやヨッシー・タッツー兄弟、イトウくんやタニくんも集まってきて、みんなでレース形式の練習を始めた。
さすがにこのメンバーでは、ショウゴやタカの出る幕はない。
みんなのジャマにならないように細々とバイクに乗る。

気がつけば、ユウタ父とヨッシー・タッツー父と父ちゃんが集う。
「なんか全日本も元気ないね〜」とユウタ父。
「もっとショーアップしないとあかんな」とヨッシー父。
「昔は、あっちこっちでスパークロスをやってテレビでも取り上げられたのに・・」と父ちゃん。
灼熱の夏、ギラギラと照りつける太陽の下、遠い目で見つめ合う黒光りするオヤジたち三人。
母子手帳から“日光浴”という言葉さえなくなっているというのに、
皮膚ガンも恐れずに紫外線を浴び続けているオヤジたち三人。
ライダーの息子たちは、エアコンが効いた管理棟で涼んでいるぞ。

「だいたい、世界の四大バイクメーカーのうち3つもこの中部地方にあるのに
なんで全日本が出来るコースがないんだ?」
「鈴鹿のコースがなくなっていったいどのくらい経つんだ?」
「鈴鹿の新春オールスターモトクロス(1985年)でアメリカ帰りのババちゃんが優勝したのも懐かしい・・」
「だからなんで中部地方に全日本コースがないんだ?」
オヤジが三人寄れば愚痴が始まる・・。
しかし、「三人寄れば文殊の知恵!」という諺もあるとおり、
この三人のオヤジたち、ただただ日焼けして黒いだけではない。ワシに秘策がある!」とユウタ父。
その決意した表情に身を乗り出すオヤジが二人。
「まだ秘密にしているんだが、良い場所を見つけた!」
「良い場所?」
「全日本のコースが出来そうな場所を見つけてある!」
「ホント?」
「東名のインターチェンジが近くにある!」
「それはいい!」
「で、土地代は幾らくらい?」
「わからん!」
「お金は?」
「ない!だから宝くじを買っている!」
「中部のオヤジみんなで買えば誰かあたるかも?」
「お〜、みんなで買えば何とかなるかも?」
「よし、みんなで宝くじ買おうぜ!」
「宝くじ当てて全日本コースだ!」
灼熱のイナベで汗をダラダラと流しながら夢を語り合う黒光りするオヤジが三人。

若者よ、男には夢が必要だ。夢があってこその男だぞ!
特にモトクロスをやっているオヤジたちは、夢を食って生きているようなヤツらだ。

家に帰っても父ちゃんは興奮していた。
早速、母ちゃんにこのことを話した。
「中部のオヤジたちみんなで宝くじを買って全日本コースを作るんだ!」
珍しく黙って聞いていた母ちゃんが最後に口を開いた。
「それで万が一宝くじが当たっても中部のオヤジたちがホントにお金を出すと思っているの?」
「母ちゃん、オレは中部のオヤジたちを信じているぜ!」と強がって見せたものの
中部のオヤジたちの顔を思い出すと「やっぱりダメだ〜」とあきらめてしまう父ちゃんだったのだ。