[独り立ち!]('12/10.11)
 

 今年度の中部選もあっという間に第三戦(4/15)天竜川になった。
そして、この天竜川のコースにショウゴの姿はなかった。
この日は、イナベで行われている「2012 いなべエンデューロ大会」に一人で行ってしまったのだった。

三歳半でバイクに乗り、6歳で多度のレースに出て以来、いつも一緒にレースをしてきた。
(モトクロッサーは、車で運ばなければならないので当たり前の話だが…)
そんなショウゴも大学を卒業して、免許も取った。(死んだじいちゃんの車も貰ったし・・)
ついに独り立ちするする日がきたんだな〜。

しかし、心配だぞ。
一人ではまともにタイヤ交換だって出来ないショウゴ。
(そのくらい出来ると本人は言っているが・・)
今回持って行った'07CRF250Rは、エンジンの掛かりこそ直したが、
あちこちがボロボロのオンボロバイク。
イナベの山奥のコースから無事に帰ってこられるだろうか。

ジュニアの頃から一緒に走っていたユウタやヨッシーにトッチ・タカシ・ヨシキ・リョウスケやヒロシどころか、
下の世代でさえIAになっていて、ユウトやタイチ・イブキ・マサヤを始めとしたヤツらは、今ではIBのトップクラスだ。
小さな頃から一緒にやってきた同世代の子達もだんだんと引退していく。
IBクラスを見渡せば、ショウゴたちの上は、
走る屍(しかばね)と言われている父ちゃんとその下の若年寄たちしかいない。
ショウゴが、レースで競っているのは、たいてい年下の世代だった。

でも、もう少し努力を続けていれば、
きっと全日本の予選だって通れるようになれるはずだぞ。
第一戦の雨のイナベで二位に入ったのは、全日本で初ポイントを取った時のようなマグレではないぞ。
ショウゴよ、どうしてそれが分からないのだ?
お前は、エンデューロに逃げているだけだぞ。

天竜川のコースに着いてクルマの後ろ扉を開ければモトクロッサーがぽつんと二台。
いつもは、三台のバイクがぎゅうぎゅう詰めに入っているのに何か寂しい。
タカと準備をしていてもやけに早く終わってしまう。
「今日は頑張るぞー」とやけに元気なタカは、「いよいよ俺の時代がきた!」と燃えている。

何か手持ち無沙汰でコースの下見をタカとやっていると顔見知りのオヤジが
あれ、兄ちゃんはどうしたの?」と声を掛けてきた。
あいつはエンデューロに逃げて行った!」と父ちゃん。
今頃は、イナベの山奥で泣いているかもしれませんよ」とタカ。
そうか、二人ともスタートさえ決まれば全日本の予選だって通れるくらいになってきたのにな」とオヤジ。

その後も何人ものオヤジたちに同じように聞かれ、
あいつは根性なしや、負け犬じゃ!」と益々ヒートアップする父ちゃん。
しまいには、しゃべったこともないオヤジにまで愚痴を言い出す始末…
エンデューロだっていいんじゃない?
エンデューロの楽しさは、父ちゃんが一番分かっているんじゃない?

バイクに乗っているだけいいじゃん、うちの子はもうバイク自体やめちゃったよ」とオヤジたち。

そうか、ついにショウゴも独り立ちする日がきたのか?
今までいつも家族でレースをしてきたが、仕方がない・・。
子どもがバイクに乗ってレースをやっていなかったらこんなに大きくなるまで
一緒に夢に向かって歩くこともなかっただろう。

こんなに毎週末、一緒に泥だらけ埃まみれになって遊ぶこともなかっただろう。
普通なら高校生ぐらいになれば子どもと話をすることも少なくなるのに、
いつもバイクの話でこんなに盛り上がることもなかっただろう。
いよいよ、ショウゴも自分の道を歩んでいくんだな。

「この道を行けばどうなるものか

     危ぶむなかれ

    危ぶめば道はなし

踏み出せばその一足が道となり

    その一足が道となる

     迷わずゆけよ

    行けばわかるさ」

    (byアントニオ猪木)


ショウゴよ、ありがとうよ、これからは、自分の道を自分の足で行くがいい。

PS1
ショウゴがいない分、張り切っていたタカは、
IB2では、固定ゼッケン組と終盤まで6位争いをしての8位だった。
「やっとIBらしい走りになってきたな!」とどこかのオヤジに言われて喜んでいたタカ。
このメンバーでの8位は立派だ、なかなか良い走りだったぞ。


PS2
タカがあそこまで走れたならば、ショウゴがいたらもっと上位を狙えたのに!
ショウゴのバカタレ!根性なし!!