[コース閉鎖?]('13/4.30)
 

 シーズンオフになり久々に地元の河川敷のコースに向かった父ちゃんたち。
しかし、コースに着くといつもと感じが違う。
「コースが閉鎖にならないためにもホコリが立つ日は走らないでください」
というライダーが立てたと思われる看板と
その横には、国交省の河川管理が立てた
「農家の人の迷惑になるのでホコリと音に気をつけましょう」という看板。

何かあったな?」とっさに父ちゃんは、考えた。
予感はあったのだ。
以前からコースの近くで農業をしている人からの苦情があったことは知っていた。
その度にコースを改修したりして、出来るだけ迷惑をかけないようにしてきた。
以前、コースについて話をしたことがある農家のオヤジがちょうどいたので事情を聞いてみた。

「あんたらが注意しながらバイクに乗っているのは知っている、
ゴミも捨てないどころか河川に落ちているゴミまで拾っていることも知っている、
でも今回は我慢がならなかったので通報してやった」

何があったのですか?
「ホコリが立つ日にバイクに乗っているヤツがいたので、
そんなことしていると走れなくなるぞ!と注意したら
できるもんならやってみろ!と言い返してきた、
こっちも引くに引けなくなったから国交省の河川管理に言ってやった」

あちゃー。
父ちゃんは、ライダーの非礼を詫びて帰ってきた。
常々「バイク好きに悪いヤツはいない!」と言いふらしている父ちゃんには、
辛い出来事だった。
そのことをショウゴやタカに話すと
「人に迷惑かけてまで走りたくないからここで走るのをやめよう!」とショウゴ。
「コースの位置を100mくらい川上に移せばホコリも畑にいかないんじゃないの?」とタカ。

結局、その日は練習するのをやめて、山の方にあるというトライアルの練習場を探すことになった。
1時間ほど山の中を迷っているとそのコースは突然現れた。
1台のトライアルマシンが崖登りをしていた。
父ちゃんはその人に近づくと恐る恐る聞いてみた。
私たちモトクロスをやっているものですが、このコースを管理している人を知っていますか?
「ここは、みんな勝手に走っているだけで、誰も管理なんてしてないよ」
50代と思われるライダーが答えてくれた。
モトクロッサーで走っても大丈夫ですか?
「こんな山の中だから怪我せんように走ってくれたら全然かまわんよ、
そうそう、道路だけには地元の人の迷惑になるから車を駐車させないでね」

急いでバイクを降ろして、準備をするショウゴとタカ。
トライアルマシンが登っていた崖はとても登れそうにないので、迂回路を探す父ちゃん。
何とか登れそうな坂を見つけるがそこだって結構むつかしい。
どのラインを行けばいいのか?と悩んでいると準備が出来たショウゴとタカが
じいさま、ジャマだからどいて!」といってバイクで突っ込んでくる。
「そんな勢いだけでは、この坂は登れないぞ!」と言っている間に
勢いだけで登ってしまう二人。

(崖に挑戦するショウゴ)

「奥にもコースがあるみたいだから行ってくる!」と山奥に消えて行く二人。
父ちゃんも急いで着替えて、その坂に挑戦してみるが、
石がゴロゴロしているところでビビって失速。
何回かトライしてやっと登って二人を追う。

崖の上には、ポニョがいるわけではなく、
迷彩服を着た一団が銃を片手に右往左往している。

聞けば第二日曜日にはここで銃戦をしている同好会とか。
「バイクの人たちはもっと山奥でやっていますよ」というので、
ピカピカのKTMで山奥に分け入って行く。

そこには、またまた岩がむき出しになった崖が現れる。
こんな岩場はJNCCでもないぞ!
そこをショウゴとタカは、モトクロッサーで登ったり下ったりして遊んでいる。

そうこうしているうちにトライアルマシンに乗った一団が現れた。
すいません、モトクロスをやっているものですが、走らせてもらっても構いませんか?
「かまわん、かまわんよ」
「この頃はエンデューロをやっている人もよく来るよ」

この一段、どう見ても父ちゃんと同年代の50歳代から上は60歳代。
「この崖、難しいじゃろ?」とじいさまが言えば
「助走区間があるから何とかいけますよ」と応えるショウゴ。
ほ~。驚くじいさんたち。
「あそこの下りはどうじゃい、難しいじゃろ?」
「あそこは上から飛び降りちゃいますから」とタカ。
ほ~、とまたまた驚くじいさん一同。

しかし、じいさんたちが簡単にいける50cmくらいのステアケースが怖くていけないショウゴとタカ。
もちろん、父ちゃんは、挑戦することすらためらう。
そこをじいさんたちは、スタンディングからのゼロ発進で難なく超えて行く。
トライアルマシンって凄い!
助走をつけてショウゴが突っ込むが、リヤタイヤが引っかかってしまいカメさん状態。
タカは、フロントタイヤが上がりきらずに弾き返される始末。
その度にじいさんたちは大笑い。

「この位置にフロントタイヤを当てれば簡単にいけるんじゃ!」と教えてくれるがそれが難しい。
見かねたリーダー格のじいさんが、そのバイクを貸してくれればワシがやって見せてやる!と言う。
そこで、ショウゴが乗っていた10CRF250を貸すが、跨がったとたんに足が全然つかない。
その格好に一同大笑い。

そして、ローギアにいれた途端にエンスト。
「何じゃこのバイクは?下が全然ないのう!」
これでも4サイクルになったんでずいぶんと乗りやすくなっているんですよ」と父ちゃん。
クラッチが重いとかクラッチレバーの位置が遠いとか散々文句を言っては、
その後も何回かエンストを繰り返すが、
モトクロッサーでもピタッとスタンディングを決めるあたりはすごい。

そこからトライアルマシンよりずいぶんとエンジンをふかしてステアケースにトライ!
見事に登り切ってしまった。
一同拍手喝采!

ショウゴやタカもアドバイスを受けながら何回かトライするうちにステアケースを越えられるようになったぞ。
ツルツル路面の登りで転びまくる父ちゃんたちには
「そんなにアクセル開けちゃグリップせんぞ」
「もっと体重移動しなくちゃ」と教えてくれる。

「モトクロスは、練習しても練習しても速くなる手応えがないけど、
エンデューロは、練習した分、上手くなる気がする、次の爺ヶ岳が楽しみだぜ!」とショウゴ。
「トライアルって面白いな!」とタカ。
(タカは、その後、バイト代をはたいてトライアル自転車を買ってしまった)
崖に挑戦した挙句に滑り落ち、ピカピカのKTMを傷だらけにして落ち込む父ちゃん。

(崖に挑戦するタカ、トライアル自転車で“ダニエル?”を決めるタカ)

山奥に笑顔が弾けていた。

ショウゴやタカも笑いながらバイクに乗っているぞ。
こんな笑顔を見るのはいつの日以来だろう。
バイクに乗ることが嬉しくて嬉しくてしょうがない頃があった。
泣いたり笑ったり悔しがったり感動したり…。
バイクとはずいぶんと長く付き合ってきたな~。

久々にバイクに乗り始めた頃の気持ちを思い出させてくれた一日だった。
あらためて「バイク好きには悪い人はいない!」って心底思えたぞ。

その後、河川敷のコースには、練習に行くことはなくなってしまった。
気軽に行けてショウゴやタカが小さな時から走っていたコースだが、暫く様子をみようと思う。
これからは、シーズンオフも三重県や天竜川のちゃんとしたモトクロスコースで練習しようと思う。
練習回数こそ減ってしまうが、練習になるし、安全だしね。
そうそう、あのトライアルコースもたまには行こっと。

先日、雨の日に河川敷を通ったら、一台のモトクロッサーが泥だらけになりながら練習していた。
そう言えば、農家のオヤジも「ホコリさえ立たない日なら乗ってもらってもいいよ」と言ってくれた。

このコースにはずいぶんとお世話になった。
閉鎖だけはまぬがれたようなので、一安心だ。
ショウゴやタカ、父ちゃんレベルでは、手狭なコースなので
(じいさまなら丁度いいだろ←ショウゴ・タカ)
次は孫ができたらこのコースで熱血じじぃとなって鍛え上げよう!と心に誓う父ちゃんだった。