【02全日本第1戦】

02全日本第一戦は、またまた名阪スポーツランドから始まった。

02年になって父ちゃんは燃えていた。

なんたって、スタートでは絶対有利と言われているCRFだ。

CRFを試乗させてあげたIA250の子にも「ノーマルでIA250でも頭とれますよ」と言われたくらいだ。

もう父ちゃんは、名阪名物登りの第1コーナーを2,3位で通過していくイメージがしっかり出来上がっていた。

本当は「ホールショットをとったらどうしよう」とか「あまり前の方だと1週目から2連もバンバン飛ばなくては危ないかな」などと心配もしていたのだ。

そんな夢見る中年にまたまた失礼なオヤジたちが寄ってきた。

人の顔を見るなり「中島さん、まだ止めれんの?」と人を中毒患者のように言うヤツから

「わ、出た!」と季節はずれのお化けのようにビックリするヤツまでもいる。

しかし、世の中にはこんな父ちゃんを応援してくれている人もいる。

「中島さんを見ると元気出るわ、年寄りの代表としてガンバって下さい!」と遙か昔のエンデューロ時代からの知り合いは言ってくれる。

ありがたいことだ。

CRFですっかり舞い上がっていた父ちゃんであったが練習走行が始まるといつものように冷静に回りを見ながら走った。

やはり、去年より速くなっていると冷静に感じた。

やはり父ちゃんは日々進化していたのだ。(毎年思っているのだが)

そして、いよいよ予選が始まった。父ちゃんはD組だ。

30秒前のボードが出たときには、嬉しさで顔がほころんだ。第1コーナーを悠然と回るイメージが出来上がっていた。

いつも全日本では、第1コーナーを回ると数え切れないバイクが見えて「いったい俺は何位だ?」と戸惑ってしまうのだが、

今回からはどんなに悪くてもきっと数えられるぐらいだろう思っていた。

そしてスタート。

第1コーナーまではあっという間だった。上っていくすごい数のバイクが見えた。

「いったい何位だ?」

夢見る中年のささやかな夢はやはり“夢”で終わったのだった。

やはりモトクロスは、バイクではなく腕だなとあらためて思った父ちゃんだったのだ。