コースだー!

モトクロスに限らず、オートバイの練習場所には、みんな苦労させられていることと思う。

今回は、コースについてだ。

本来は、メーカーがバイクを売るだけでなく、みんなで安心して走れる場所をもっと作ってほしいのだが。


父ちゃんのホームコースは河原だ。

15年ほど前に、父ちゃんたちが、バイクで走って草木をなぎ倒し、スコップでジャンプを作ったコースだ。

気持ちよく走っていたら、すぐに河川管理人がやってきて、文句を言っていった。

違う日に走っていると、今度は名前と住所を聞いていった。父ちゃんは友達の名前を言ってやったぞ。(あっちゃん、ごめんな)

そして結局、走れなくなった。


今度はゴミ埋め立て場にコースを造った。砂地だったが、なかなか面白いコースだった。

いつの間にか、走りに来る子たちも増え、みんなで競争したりして仲良くなった。

3ヶ月ほどした頃、走りに行ってみたら、ブルで真っ平らにされていた。釣り人から文句が出たらしかった。

そして父ちゃんは、結婚を機にモトクロスを止めた。

しばらくしてエンデューロに出るようになったが、もう練習をすることはなくなってしまった。


ある日、10年ぶりに最初にコースを造った河原近くに水遊びに行った。そしたら、聞き覚えのある音が聞こえてくるではないか。

誰かがモトクロッサーで練習していたのだ。父ちゃんは嬉しくなって、見に行った。

このコースは、その後も細々と、続いていたようだった。そして、父ちゃんもそのコースでまた練習するようになった。

いつ、あの河川管理人に怒られるかと、冷や冷やしながら走っていたが、今は、黙認ということになっているらしかった。

(周りには、民家がないということもある)

嬉しかった。堂々?と練習できるのは気持ちよかった。

しかし、釣り人から一件でも文句が出れば、そしてゴミなどを散らかしておけばすぐにでも閉鎖になるだろう。

環境問題のこともある。いくら、オートバイが走ったぐらいでも、自然を破壊しているのには違いない。排気ガスも出している。

父ちゃんはいつも3連を、2個1個と飛びながら(IBは三つとも飛ぶのだが)

「すみません、すみません」って心の中で謝っているのだ。


2年ほど前から、チームの人たちがブルをたまに入れてくれるようになった。

すぐに「許可なく地形を変えたり、工作物を作るのは止めましょう」と立て看板が4カ所に立った。

でも、それ以上は言ってこなかったので、今でも練習させてもらっている。

でも、雨が降れば、水没してしまうし、台風が来ればコースそのものが無くなってしまうこともある。

そのたびに、誰かが、排水をしたり、整備をしたりしている。父ちゃんの車にも、スコップとバケツは常備してある。

みんなの努力で、河原のコースは続いている。


ある日、コースの近くの河原で子どもたちと水遊びをしていると、1台のモトクロッサーが走ってきた。

そこには、たくさんの家族連れや釣り人がいた。

「コースは向こうにあるだろ、こんな所を走るな!」って思わず怒ってしまったが、なんかとっても悲しかったぞ。

文句が出てコースが閉鎖になるってことより、同じスポーツをしているものが、他人の迷惑を考えられないことが悲しかったのだ。


父ちゃんたちの練習時間は早い。

10時頃になるとモトクロッサーが走り始めるので、子どもが走る父ちゃんたちは、たいてい朝早くに練習を始める。

そして、台数が増え始める頃には帰ってくる。

朝一番に来て、まず始めるのはゴミ拾いだ。たばこの吸い殻や空き缶がいつも落ちている。

釣り人のゴミだとも思うが、とにかくコースが汚れていたら、閉鎖の理由になってしまうのだ。

悲しいことだが、明らかに練習に来ている子が捨てたものもある。 (オイルの缶やプラグなどだ)

次に多いのがティッシュだ。飢えた若者たちが夜中に捨てまくっていく。

「父ちゃん、風船拾ったよ」と無邪気な子どもたちはとんでもないものを拾って喜んでいる。

その元気はたいしたものだ。父ちゃんには、もうそんな元気はない。羨ましいぞ。

しかし、若者たちに一言、言わせてもらうぞ。

「いいか、自分で出したゴミは自分で持ち帰りましょう。先生に教えてもらっただろ!」