【速くなるコツは・・】2003/10 

今年も性懲りもなく全日本に参戦する(と言っても2,3戦だが・・)父ちゃんは、
03年第1戦近畿大会に向けて、名阪スポーツランドに練習に行ったのだ。
そこで衝撃的なことが起こってしまった。
ついにショウゴに負けてしまったのだ。
確かに、今まででも小さなコースなどでは、抜かれたこともあった。
手を抜いていたり、調子が悪い時に負けたこともあった。
しかし、今回は、全日本の雄大な上り下りのあるサンドコースだ。
排気量で差が出るコースなんだ。
それも、全日本を前にしてのやる気満々、気合い入りまくりで走っていたんだ。
一緒に走っていて、なかなか離れないショウゴに
「よくこの気合い入りまくりの父についてきているな、偉いぞ、父ちゃんは嬉しいぞ!」
なんて思いながら走っていたんだが、
道路際の直線が終わるコーナーでズバッとインを射されてブロックするまもなく抜かれてしまったのだ。
こんな事では子どもの教育上良くないのですぐに抜き返してやろうと思った。
しかし、この日のショウゴは、神懸かっていた。
あの広いコースでもついて行くのがやっとでとても抜ける状態ではなかった。
何かがのりうつっているようだった。
パドックに帰ってくれば案の定、ショウゴはニコニコしながら「父ちゃん遅いぜ!」なんて言っている。
「ちょっと油断していたんだ」と言い返す父ちゃんの言葉に力はなかった。
「オレはもう一回走ってくるから」とコースインしていくショウゴを見ながらヘロヘロの父ちゃんは
「ついにこの日が来てしまったか」と空を仰いでいたのだった。
どれほど空を仰いでいただろうか。
ショウゴがちっとも帰ってこないのだ。
どこかで転んだか?と思いながらコースの方に歩いていくとヨタヨタとバイクに乗りながら帰ってくるのが見えた。
「転んだんか?」と聞けば「うん」と元気なく応えるショウゴの様子がおかしかった。
「どういうふうに転んだ?」
「下りの後のストレートで吹っ飛んだ」
「どこが痛いか?」

「足が痛い」
ゆっくりとブーツを脱がしてあちこち押さながら診ると、どうやら指の付け根にヒビが入っているようだった。
次の日、医者に行ってレントゲンを撮ってもらったら、骨に一本の筋が入っていた。
ヒビと言うより折れているようだった。

全治一月ってことだった。

神経質で几帳面はショウゴは、走りもまさしくその通りで、
飛べるジャンプなどでも必ず何回か試走してから飛ぶようなヤツだから練習していても転倒が本当に少ないのだ。
でも、不思議なものでこれで2回も骨を折ってしまった。(一回目は、鎖骨)

そういえば、IAのメカニックの人が
「速くなるコツは、怪我をしないことですよ、うちの○○も、IA5年目ですが満足にシーズン走れたのは一回だけです。
もちろん、その年が一番乗れていたし、成績もよたったんですよ」と言ってた。

その言葉通り、怪我が治ったショウゴは、今のところ父ちゃんの前を走ることがない。
ちょっと安心している父ちゃんなのだが、反面、寂しい気持ちもあるのだ。
そして、あのインを差された時の気持ちは、きっといつまでも覚えているだろうな〜。

母ちゃんにこのメカニックの話をしたら驚いて言った。
「へぇ〜、でも不思議なこともあるわね、父ちゃんは、20年近くもやっていてたいした怪我もしないのに
ちっとも速くならなかったわよね」

父ちゃんは、またまた空を仰いでしまったのだった。
PS
そういえば、父ちゃんも神懸かり的に速く走れた時があったのだ。
いつもは全然ついて行けないIAの子の後を2,3周もついて行けたのだ。
初めは「IAの子の調子が悪いのかとか、きっと慣らしだ」などと思っていたのだが、
どう考えても父ちゃんの走りが普通じゃなかった。
やけにコーナーもズムーズだし、やけに直線もアクセル開けていたし
「ついに父ちゃんにも春が来た〜」と叫んで走っていたんだ。
そして、何ともないコーナーで吹っ飛んで胸をしこたま打って動けなくなってしまったことがある。
今考えてみると、あきらかにオーバーペースだったんだが、それが分からなかったんだな。
みんなもあんまり調子が良い時には、気を付けた方が良いぞ。
意外と怪我はそんな時にすることもあるんだと、ショウゴと自分のことを考えて思ったのだった。
そして、そんな神懸かり的なことは、それ以来起こっていないのが、少し寂しい気もする父ちゃんであった。